
謎の画家ヴァロットンとは?

≪お金(アンティミテⅤ)≫
19世紀末のパリで活躍した画家フェリックス・ヴァロットン。日本に初めてこの画家を紹介したのは三菱一号館美術館、2014年のことでした。ブラック・ユーモア溢れる独特の視点、卓越したデザインセンス、そして何よりどこか謎めいた作品たちは、多くの人を魅了してやみません。
2014年のあの日、筆者もヴァロットンの作品に胸を撃ち抜かれた一人。特に版画の連作〈アンティミテ〉はそのおしゃれな構図と、秘密を盗み見ているような設定とタイトルに、衝撃を受けました。
ヴァロットン作品には油彩画も多数ありますが、真骨頂とも言えるのが木版画。今回は、その〈アンティミテ〉を含む、希少性の高い連作〈楽器〉〈万国博覧会〉〈これが戦争だ!〉などのほか、ヴァロットンが生涯に制作した版画の大部分が一挙初公開されます!
さあ、謎めいた「黒と白」の世界へー。
卓越したデザインセンス。世界有数のヴァロットン版画コレクション
今回公開されるのは、三菱一号館美術館が所蔵する世界有数の貴重なコレクションです。ヴァロットンとロートレックを比較する新たな試みや、映像展示、声優・津田健次郎さんによる音声ガイドアプリ(有料:税込800円)も。かなり見応えがあるので、じっくり時間をかけて鑑賞したい。
≪〈息づく街パリ〉口絵≫
19世紀後半のパリ。様々な世代、階級や人種が入り混じる大通りの雑踏は格好の題材でした。〈息づく街パリ〉は表紙を含む7点の連作からなる、約100部限定の版画集です。
≪歌う人々(息づく街パリⅡ)≫
≪学生たちのデモ行進(息づく街パリⅤ)≫
≪1月1日≫
物乞いが群がる中、悠然と歩く着飾った裕福な家族。画面右の女性は腕に生まれたばかりの赤ん坊を抱きながら、もう片方の手を必死にのばし施しを求めています。ヴァロットンは、こうしたパリで目にする場面を描き、貧富の差を生み出す社会に警鐘を鳴らしています。
≪にわか雨≫
ほとんどが「黒」で埋められているにも関わらず、今にも動き出しそうな≪にわか雨≫。ヴァロットンの黒と白の世界は、持ち前のユーモラスなセンスもてつだって、漫画的な躍動感に満ちた一面もあります。この臨場感、ぜひ美術館で直近で観てほしい。
≪フルート(楽器Ⅱ)≫
≪嘘(アンティミテⅠ)≫
連作≪楽器≫≪アンティミテ≫は特にじっくり味わいたい。黒と白の世界がつむぎ出す、密室のドラマティックな緊張感を存分に楽しめます。黒が親密に語りかけてくる。そんな体験ができますよ。
≪楽器≫は6種類の楽器とその奏者が、≪アンティミテ≫は、男女関係と結婚生活の不協和音が奏でられる10の場面が描かれています。
ジャポニスムの影響
浮世絵をはじめとする日本の美術品は、19世紀半ば以降ヨーロッパに紹介され、西洋美術に大きな影響を与えました。
写実に行き詰まった画家たちにとって、浮世絵版画の特徴は新鮮に感じられ、新しい表現として取り入れられていきます。平面的な画面、極めて明るい色彩、簡素化された線描、奇抜で大胆な構図、高い水平線や極度の俯瞰的視点……。
日本で人気のあるゴッホやモネもそうですが、ヴァロットンも影響を受けた一人です。
≪ユングフラウ≫
≪怠惰≫
稀少な板木も
≪1月1日≫のための版木
版木は通常再利用されないよう破棄されてしまうため、こうして残存するものは数少ないのだとか。
〈アンティミテ〉版木破棄証明のための刷り
限定部数で刷られる版画は、その希少性を保つため、それ以上刷りができないように版を破棄してしまうことが多いそうです。こちらは、破棄したことを示すために版木を物理的に切断して組み合わせた「版木破棄証明のための刷り」。
「死」を描く
西洋美術において「死」は普遍的なテーマですが、ヴァロットンもその一員であるナビ派の画家たちは、そこに深淵な視線を向けることは少なかったと言います。
≪暗殺≫
その中でヴァロットンは、木版画の重要な主題として「死」を何度も取り上げています。生と死を浮き彫りにする、黒と白だけの世界。ここでも、ヴァロットンの構図やセンスが活きています。

ヴァロットンの作品をモチーフにした映像作品もお見逃しなく
三菱一号館美術館という空間
三菱一号館美術館は、展示室と展示室の間に、外の世界が見える廊下があります。この、外と内が交差する感じ、日常と非日常をつなぐ感じがまた、いいのです。
展示室の緊張感からふっと、現実との間に引き戻される感覚。ベンチで一息つき、先ほどまで鑑賞していた作品とそこで感じたことに想いを馳せ、そしてまた次の展示室(非日常)へと向かう感覚。ぜひこちらも、味わってみてください。
11月30日(水)までは、黒と白2色のコーディネートで当日の入館料が100円引きになる「#黒白コーデ割引」もありますよ。
Café 1894
明治期(1894年)に銀行営業室として利用された空間を復元したミュージアムカフェ・バー「Café 1894」では、展覧会にちなんだメニューを楽しめます。

《嘘〈アンティミテI〉》-大人のティラミス- 1,280円(税込)販売時間 18:00~23:00※
■所在地 東京都千代田区丸の内2-6-2 三菱一号館美術館1F
■営業時間 11:00~23:00(L.O.22:00)※営業時間が変更になる可能性がございます。
詳細はCafé 1894サイト https://mimt.jp/cafe1894/ をご確認ください。
■TEL 03-3212-7156
「ヴァロットン―黒と白」
会期:2022年10月29日(土)~2023年1月29日(日)
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで(金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は21:00まで)
※詳細は展覧会サイト
https://mimt.jp/vallotton2/ をご確認ください。
※開館日、開館時間を変更する場合がございます。
休館日:月曜、12月31日、1月1日(但し、10月31日、11月28日、12月26日、1月2日、1月9日、1月23日は開館)
入館料:一般1,900円 高校・大学生 1,000円 小・中学生 無料
問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)
三菱一号館美術館
東京都千代田区丸の内2-6-2
[Photos by Ryo Hirao & Aya Yamaguchi]
Aya Yamaguchi 統括編集長
インターネットプロバイダ、旅行会社、編集プロダクションなどを経てフリーに。旅と自由をテーマとしたライフスタイルメディア「TABIZINE」編集長を経て、姉妹媒体「
イエモネ」を立ち上げる。現在は「TABIZINE(タビジン)」「イエモネ」「novice(ノーヴィス)」「bizSPA!フレッシュ」統括編集長。可愛いものとおいしいものとへんなものが好き。いつか宇宙に行きたい。
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