日本と米国は外交的に良好な関係を維持
米国は以前から「サラダボウル」といわれます。白人だけでなく、アフリカ系やアジア系、ヒスパニックなど多様な人種、キリスト教徒やイスラム教徒、仏教徒など多様な宗教、それを受け入れて現在の地位を築いてきたのが米国です。
周知のように、米国と日本は太平洋戦争で戦い、日本は米国から広島と長崎に原爆を投下され、焼け野原の敗戦国から戦後をスタートしました。当然ながら、広島や長崎には反米的な思いを抱える人も多かったのは現実ですが、日本の戦後の経済成長を支援してきたのは欧米で、日本と米国は外交的に良好な関係を維持、発展させてきました。
日米関係の背後にあった「冷戦」
戦争を交えた両国が戦争直後から良好な関係を維持、発展させてきたのには理由があります。最大の理由は、第二次世界大戦直後から始まった「冷戦」です。当時、米国とソ連は自由主義と共産主義というイデオロギー上の対立状態にあり、米国はソ連の脅威が南下しないよう、日本との日米同盟を強固にし、ソ連の南下政策を抑えようとしていました。
要は、日本はソ連圏の拡大を抑える防波堤的役割を担っていたのです。よって、冷戦に勝利する上でも米国は日本を必要としていましたし、日本は経済的に米国を必要としていたので、そこには相互関係がありました。
日本が防衛費増額を決定した理由
そして、今日、日本はもっと米国を、米国はもっと日本を必要としています。その理由は台頭する中国の存在です。われわれ研究者の間では、2030年代にも国力で中国が米国を追い抜くという試算もありますが、米国と中国の経済力、軍事力が現在も拮抗し続けており、そうなれば日本周辺の安全保障環境はいっそう中国有利に傾きます。米国はそれを何とか抑えようと日本との防衛協力を強化する方針で、日本が防衛費増額を決定した背景にもそれがあります。
米国市民の間でも日本は重要な国との認識
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新型コロナウイルスの流行によって、米国ではアジア系へのヘイトクライムが増えましたが、必ずしも日本人を狙ったものではなく、狙ったら日本人だったというケースが多いのでないかと考えられます。これらは少数であり、いろんな考え方を持った米国人がいますし、米国人の対日認識はおおむね良好です。米国には、日本のアニメをはじめとする多く文化も広がっており、長年米国では日本文化が親しまれています。
そして近年、米国では市民の間でも台頭する中国への警戒感が強まっており、市民の間で日本との協力がこれまで以上に必要との意見が増えています。今後、日本と米国との関係は、よりいっそう緊密になり、米国市民の間でも日本は重要な国との認識がさらに強まることでしょう。
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