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あなたも知っておいた方がいい、接着剤で空腹と寒さを凌ぐキベラスラムの真実

Posted by: 目黒沙弥
掲載日: Jul 3rd, 2016. 更新日: Jul 22nd, 2023
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ケニア・ナイロビにはアフリカ最大のスラムが存在します。その規模はなんとナイロビの人口の過半数を占めるといわれており、たくさんの人が貧困やドラッグ依存など深い問題を抱えている現状です。

そんなキベラスラムへ実際に行って感じた「闇と光」、日本で生活していたら決して見ることはなかった「リアル」にスポットを当ててお伝えします。


キベラスラムとは

あなたも知っておいた方がいい、接着剤で空腹と寒さを凌ぐキベラスラムの真実
(C) Saya Meguro

ナイロビには200ほどのスラムが点在しており、そこで生活する人口は250万とナイロビの総人口の60パーセントを占めます。半分以上の人がスラムで暮らしているのです。それに対しスラムの居住面積はナイロビ全体のたった6パーセントであり、家屋の数は250,000戸。所狭しとトタン屋根の家が折り重なっている状態です。今回筆者が訪れたスラムは人口が100万人の「キベラスラム」。ここで見えてきた問題とは・・・。

接着剤で寒さを凌ぐ子供たち

あなたも知っておいた方がいい、接着剤で空腹と寒さを凌ぐキベラスラムの真実
(C) Danny Yoder

筆者がなによりも衝撃的だったのは、スラムのゴミ山の隣で過ごすストリートチルドレンの子供たち(上写真)。 彼らは何らかの理由で親と過ごすことが出来なくなり、親のいなくなった子供たち同士で暮らしています。親もお金も政府からの支援もない子供たちの食料は、ゴミ山に捨てられた「廃棄物」。ゴミ山から食べられそうな廃棄物を探しあて、空腹を凌いでいるのです。

そして毛布もない彼らが冷え込む夜にしていること、それは「近くの靴工場のゴミ箱から拾ってきた接着剤を何度も何度も吸い込む」こと。その工場で使われる接着剤には幻覚溶剤が使われているため、これを吸うことによって体の神経が麻痺し、寒さだけでなく空腹も紛らわすことができるのです。彼らを抱き寄せたときのゴミの匂いと接着剤のツンと鼻をつく匂いは、紛れもなく彼らの強いられている生活そのもの。実はこの行為によって、彼らの寿命は30歳前後にまで縮まってしまうのです。

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(C) Saya Meguro

一食50円にも満たないご飯を振る舞うと一心不乱に食べ続け、「新鮮なご飯なんて食べるのいつぶりだろう。ありがとう」とお礼をいう子供たちの健気で真っ直ぐな目を見ていると、世の中の「平等」という言葉はどこで通用するものだのだろう? と疑問にさえ思い、現代の日本の持つ「幸せの形」に頭を傾げてしまいます。なんの罪もないはずなのに、産まれた場所と時代が違うだけでこんな生活を送っている子供たちが、世界中には山ほどいるのです。

それでも色眼鏡は必要ない

あなたも知っておいた方がいい、接着剤で空腹と寒さを凌ぐキベラスラムの真実
(C) Saya Meguro

けれども、ここキベラスラムに起こることは悲観的なことばかりではありません。お金がなくても、住民が協力して子供たちを守っていこうとする姿勢は決して忘れていけないもの。実は昨今、徐々にではありますが学校を作る活動や炊き出しが行われています。ガイドのコリンズは言いました。「ケニアは助け合いの精神なんだ」と。

筆者がスラムを歩いていると、子供も大人もたくさんの住民が笑顔で ”Welcome!” と挨拶をしてくれました。色眼鏡をかけていては決して見られなかった、スラムの人たちの屈託のない笑顔。「今日を精一杯生きる」というシンプルな行為は、忘れてはいけないある意味で彼らから学ぶべき精神なのかもしれません。

向けるべきものは同情じゃない

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(C) Saya Meguro

筆者も最初は「現状を知りたい」という思いがありつつも「彼らの生活を邪魔しないのだろうか。プライドを傷つけないのだろうか」と、ただのツーリストが観光のスポットのひとつであるかのように立ち入ることに抵抗はありました。

ただスラム出身のガイドのコリンズも含め、現地の人はみんなこの状況を打破するべく日々精進している一人です。「まずは知ってほしい。そして伝えて欲しい」そんなことを何度も現地の人から伝えられました。けれども今回書いた内容については完全な主観によって書かれた記事に変わりありません。一日滞在しただけでは分からない問題は山ほどあり、現状は筆者の目で見て感じたものよりも深刻だということは火を見るよりも明らかです。

スラムの人たちが抱える問題

あなたも知っておいた方がいい、接着剤で空腹と寒さを凌ぐキベラスラムの真実
(C) Danny Yoder

スラムに住む人々はトイレ不足、水問題など日常生活に関わるものから、雇用の問題まで幅広く問題を抱えています。とくに雇用率は全体の約50パーセントと、およそ半数が職に就けない状態にあります。それは彼らが教育を受けてこなかったため就ける仕事が限られてしまうことや、薬物の問題を抱えており求職活動もままならない状態にあることが問題です。

とくにレイプよるHIV被害などに遭った女性は深刻の問題のひとつ。なぜならHIVについて十分な知識がない住民の間ではスラム内でさえ差別の対象になり隔離されてしまい、日常生活さえ普通に送ることの出来ない状況に直面しているのです。たとえ病気に侵されていても、彼らには病院に行くお金もありません。ただただ、死を見つめて過ごしていくしかないのです。

それでもまず大切なことは「知ること」なのではないでしょうか。そして一生懸命に命を燃やす人たちへ最大限のリスペクトを向けること、今ある幸せを忘れないこと、小さなことでも自分の出来る支援をすること。なぜなら、今日あなたがジュースに払った、たった150円でお腹がいっぱいになり、最高の笑顔を見せてくれる美しい子供たちがそこには溢れているのです。

[Agape Hope for Kibera Slum Tour]
[Kibera.org]

目黒沙弥

Saya Meguro ライター
北海道出身。NZや日本をヒッチハイク縦断してみたり、ヒマラヤに登ってみたり、スペインで盗難に遭ってみたり。とにかくワクワクすることがすき。将来の夢は湖畔のちかくに家を建てて、動物と自然に囲まれて暮らすこと。

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