オーソドックス地獄 ―基本となる5つの教え―
本連載では、タイにいくつも存在する
をテーマに、筆者が実際に訪れた寺院を紹介しつつ、その魅力をわかりやすく伝えていきます。全12回の連載、第3回となる今回は と名付けて、タイにおける地獄の基本をみていきます。タイの地獄思想が仏教に基づいていることは前回ご紹介しましたが、そのなかでも特に基本となる教えがあります。
というものです。五戒とは、犯してはいけない5つの教えであり、①不殺生(ふせっしょう) ②不偸盗(ふちゅうとう) ③不邪淫(ふじゃいん) ④不妄語(ふもうご) ⑤不飲酒(ふおんじゅ)、です。簡単に言うと、①生き物を殺さない ②盗みをしない ③浮気をしない ④嘘を吐かない ⑤お酒を飲みすぎない、ということになります。
タイの地獄寺では、このような5つの教えを中心に地獄があらわされています。生前、生き物を殺してしまった人は、自分の頭部がその生き物の頭部になり、同様の責め苦が与えられます。たとえば、豚を殺してしまった人は、豚人間になりナイフで切り刻まれたり、
魚を殺してしまった人は、魚人間になり釣り竿で釣られたりします。
このように、生前に犯した罪は、死後そのまま自分に降りかかるのがお決まりのルールです。
また、嘘を吐いた人は舌を引き延ばされたり、
お酒を飲みすぎた人は、とろとろになるまで熱した液体を飲まされたりします。
これらは五戒をあらわした
ということができるでしょう。地獄寺のなかには、このような五戒をわかりやすくあらわしている寺院があります。北の都、チェンマイにあるワット・メーイートという寺院を例にみてみましょう。
ワット・メーイートはチェンマイ市街地からバスで約2時間、チェンダーオという街にある寺院です。バス停からは数分で行くことができます。
ワット・メーイートには大きな亡者の像が4体あり、その足元には五戒を中心とした地獄が広がっています。
向かって右から順にめぐります。
こちらは殺生を戒めている場面。
続いて、盗みを戒めている場面。
さらに、飲酒を戒めている場面と続きます。
五戒をあらわした場面の間には、様々な亡者たちがいて、なかにはこんなかわいらしい亡者もいます。
―まるでハンプティダンプティ・・・。
この人は
実はこの無頭人、他の地獄寺にもたくさんいて、しかもそれぞれ個性豊かな表現がなされています。地獄寺を訪れたことのある方は必ず印象に残っているであろう、地獄のメインキャストのひとりです。
今回は地獄の基本となる5つの教え「五戒」についてご紹介しましたが、なかでもタイの人たちにとって最も重要な教えは「浮気をしない」ことであると、地獄寺をめぐってから感じるようになりました。その理由も含めて、次回はこの無頭人を中心に、もう少し詳しく紹介していきたいと思います。また来週。
次回「タイの地獄めぐり④ 浮気の罪① ―個性豊かな無頭人―」へ続く。