【連載】タイの地獄めぐり⑨ 地獄のある場所 ―屋外/屋内それぞれの魅力―

Posted by: 椋橋彩香

掲載日: Jan 17th, 2019

地獄のある場所

本連載では、タイにいくつも存在する「地獄寺」をテーマに、筆者が実際に訪れた寺院を紹介しつつ、その魅力をわかりやすく伝えていきます。全12回の連載、第9回となる今回は地獄寺の空間構成について見ていきましょう。

タイの地獄寺では、基本的に屋外に地獄空間がつくられています。田舎の広大な敷地に、まるで南国の植物かのように増殖した地獄の光景が広がっています。

地獄寺はタイ以外にもアジア各国で見られますが、このように屋外にある例は決して多くありません。その点で、タイの地獄寺は他国に比べても少し異例であるということができます。

屋外型の地獄は、寺院の敷地内にあります。本堂の近くにある場合もあれば、連載の第5回で紹介したような、少し離れた森の中にある場合もあります(「ジャングル系地獄」ですね)。

そして多くの屋外型の地獄では、像と像の間を自由に行き来することができます。亡者と亡者の間に入って写真を撮る人も多いようです。

地獄なのに、青空の下にある。現世とも来世とも言い難いこの空間は、「タイの地獄寺」という独特な雰囲気を生み出しているといえるでしょう。

一方、屋内型の地獄は、基本的には寺院の真下、お堂の地下につくられる場合が多いです。

空間内では赤や緑の妖しい照明が駆使され、まるで異世界のような雰囲気を醸し出しています。
さらに、屋内型の地獄では音響も駆使できるため、空間内では絶えず亡者の呻き声や不穏な音楽が流れています。なかには、地獄の解説を流してくれている場合もあります。

筆者が訪れた2017年時点では未完成であった、ランパーン県にあるワット・サンティニコムは、屋内型の地獄としてはタイでも随一の規模を誇る地獄寺です。

このようなお堂の地下を下っていくと、ピンクの照明に照らされた空間が現われます。

ヤマ王の裁きを受け、道を進んでいくと、左右にたくさんの亡者たちが見えてきます。
なかには前回紹介したような巨大餓鬼たちの姿も。しかしかなりオリジナリティあふれる表現になっています(勝手に「東洋のティム・バートン」と称しています)。

右手にはひたすら棘の木エリアがあったり、

地獄釜エリアがあったりします(ナイトプールに見えるという説もあります)。

ワット・サンティニコムの地獄空間では、絶えず不穏な解説音声が流れていて見る者の恐怖を煽っているのですが、残念ながらこの記事では音声までは伝えられないので、ぜひ実際に行って体感してもらいたいです

ワット・サンティニコムに代表されるような屋内型の地獄では、壁や天井にまでびっしりと地獄絵が描かれている場合が多くあります。

こうした抜かりない演出が、地獄を一層盛り上げてくれていることは言うまでもありません。立体像で構成されている地獄においてこうした地獄絵は、あくまで装飾的なものとして捉えられてしまいがちですが、これらはよくよく見てみるとおもしろいのでぜひ注目してほしいところです。

これまでタイの地獄寺、すなわち立体像で地獄を表現している寺院について見てきましたが、このへんでこうした「地獄絵」についても少しふれておきたいと思います。タイの寺院のなかには、壁画などに地獄を描いている寺院も少なくありません。それは伝統的な地獄絵から現代の個性豊かな地獄絵まで、様々なものがあります。次回はこの「地獄絵」について、いくつかの寺院を例にご紹介したいと思います。それでは、また来週。

次回「タイの地獄めぐり⑩ 受け継がれる地獄絵 ―もうひとつの地獄表現―」へ続く。
PROFILE

椋橋彩香

Ayaka kurahashi 地獄研究家

1993年東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科にて美術史学を専攻、現代タイにおける仏教表現を研究テーマとする。2016年修士課程修了。現在、同研究科博士後期課程在籍。現代になり新出した立体表現「地獄寺」に着目し、フィールドワークをもとに研究を進めている。著書に『タイの地獄寺』(青弓社)。

タイの地獄寺Twitter
https://twitter.com/jigokudera

1993年東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科にて美術史学を専攻、現代タイにおける仏教表現を研究テーマとする。2016年修士課程修了。現在、同研究科博士後期課程在籍。現代になり新出した立体表現「地獄寺」に着目し、フィールドワークをもとに研究を進めている。著書に『タイの地獄寺』(青弓社)。

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