【連載】タイの地獄めぐり① 出発準備

Posted by: 椋橋彩香

掲載日: Nov 15th, 2018

タイ国民の9割以上は仏教徒。街を歩くとまるでコンビニのような頻度で寺院に遭遇、そのなかに「立体像を用いて地獄を表現している寺院」が存在しています。本連載では、研究の過程でめぐってきた地獄寺の魅力を、全12回にわたり紹介していきます。

地獄へようこそ

みなさんはこの世に存在している「地獄」をご存知でしょうか。もちろん、毎日の満員電車が通勤地獄であったり、酒に溺れて地獄絵図のような惨状になったりと、比喩としての地獄は日常の中にいくらでも存在しています。しかし、ここでいう地獄は、多くの人が地獄と聞いて想起するであろう「死後の世界」としての地獄です。

「人間は現世で悪いことをすると死後地獄へ堕ちる」という思想には、誰もが一度は思いを馳せたことがあるかと思います。嘘を吐いたら閻魔様に舌を抜かれるとか、釜茹でにされるとか、棘の木に登らされるとか、そういう地獄のイメージは古くより引き継がれ、絵本やアニメ、漫画などの題材として今でも目にする機会があります。それは日本に限らず、全世界的にみられるものです。

そんななか、絵本やアニメ、漫画などといった平面的なメディアでは飽き足らず、実際に「空間として」地獄を生み出してしまった国があります。魅惑のエスニック料理、歴史ある古代遺跡、透き通ったビーチなどのイメージがある微笑みの国、タイです。

タイは仏教国といわれ、国民の9割以上は仏教徒です。それに伴い、街を歩くとまるでコンビニのような頻度で寺院に遭遇します。現在、タイには約3万の寺院が存在しているといわれていますが、そのなかに「立体像を用いて地獄を表現している寺院」が存在しています。こんな感じです。

このような寺院は、そのキッチュでグロテスクな様子から、日本では「珍スポット」として認識され、マニアの間では「地獄寺」と呼ばれています。地獄寺は現在わかっている限り70か所以上存在し、その多くはタイの農村部にあります。もちろん、外国人観光客はほとんどいません。

筆者はこの地獄寺に魅了され、3年程前から大学院で研究をしています。具体的には、なぜ地獄寺が生まれたのか?という疑問から出発し、地獄寺にはどのような表現がみられるか?という美術史学的な視点から地獄寺について考えています。

本連載では、そうした研究の過程でめぐってきた地獄寺の魅力を、全12回にわたり紹介していきます。実際に訪れた地獄寺を紹介しつつ、地獄寺がどのような場所であるかをわかりやすく伝えていければと思っています。全12回、タイの地獄めぐりにどうぞお付き合いください。

 

次回「タイの地獄めぐり② 地獄寺は何のためにつくられた?」へ続く。

 

PROFILE

椋橋彩香

Ayaka kurahashi 地獄研究家

1993年東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科にて美術史学を専攻、現代タイにおける仏教表現を研究テーマとする。2016年修士課程修了。現在、同研究科博士後期課程在籍。現代になり新出した立体表現「地獄寺」に着目し、フィールドワークをもとに研究を進めている。著書に『タイの地獄寺』(青弓社)。

タイの地獄寺Twitter
https://twitter.com/jigokudera

1993年東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科にて美術史学を専攻、現代タイにおける仏教表現を研究テーマとする。2016年修士課程修了。現在、同研究科博士後期課程在籍。現代になり新出した立体表現「地獄寺」に着目し、フィールドワークをもとに研究を進めている。著書に『タイの地獄寺』(青弓社)。

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https://twitter.com/jigokudera

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