空路で冬の函館そして湯の川温泉へ
訪ねたのはちょうど1年前、コロナ禍の直前でした。羽田から飛び立った飛行機は津軽海峡が見えるあたりで降下を始め、西からぐるりと回り込むように函館市内に向かって行きます。
冬の荒天で飛行機が少し揺れましたが、雲間から雪の函館の街が見えます。そして函館山がすぐ目の前に!旅の期待感が高まります。
そして市街地の上空で高度を下げ、函館空港へと着陸しました。
函館は四季折々の美しい街並みとグルメを旅人に提供してくれますが、なかでも冬が楽しみです。函館山から眺める純白の街並み、雪のなかを走る市電、雪の舞う教会や五稜郭などの歴史遺産など、北国の港町ロマンを感じさせてくれるからです。
そして名湯・湯の川温泉のお湯とともに、港であがった地元のカニやエビ、ホタテ、また北海道特産の野菜やお肉などなど、どこから歩こうかと到着前にワクワクしました。
まずは国の特別名勝「五稜郭」へ
まずは五稜郭で函館の歴史を体感しましょう。函館空港から函館駅まではバスで20分ほど。五稜郭公園へは途中の五稜郭バス停で下車します。湯の川温泉からだと、市電に乗車して五稜郭公園前までは15分ほど。そこから歩いて五稜郭に向かいました。徒歩10分ほどで高い五稜郭タワーが見えてきます。
街の雰囲気と位置関係を知るには高い場所がイチバンということで、大人料金900円を支払いタワー展望台へ向かいました。
高さ90mの展望台から眺めると函館の街並みが良く見えます。もちろん五稜郭の形。もともとは江戸時代末に幕府によって作られた城郭。明治維新の際には新政府軍と旧幕府軍との間の戊辰戦争で戦場となりました。箱館戦争です。いまでは国の特別名勝に指定されています。
五稜郭の中には、かつてここにあった箱館奉行が復元されています。外国との貿易のために函館が開港された後1866年(慶応2年)から2年間、蝦夷地だった北海道の政務を司った、いわばお役所です。入館料は大人500円。
住所:北海道函館市五稜郭町44
五稜郭タワーについては、2021年1月14日から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止などのため、当面の間は臨時休業とのことです。
HP:https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014011601161/
函館山周辺には歴史的な名所がずらり
続いて五稜郭から函館山方面に向かいました。ふたたび市電に乗り、五稜郭公園前から函館山の麓にある十字街までは20分ほどです。
函館山の麓には古い函館の面影が残されています。そのひとつが教会の建物群。上の写真2つは函館ハリストス正教会。「ハリストス」とはギリシャ語でキリストを意味します。1858年、日本で最初のロシア領事館が函館に置かれた際に、領事館付属の聖堂が建てられたのが起源だとか。国の重要文化財に指定されています。
ちなみに大規模な保存修理の工事のため、残念ながら2022年12月まで聖堂は工事シートで覆われ、拝観ができません。敷地内への立ち入りは可能とのことです。
そして上の写真はカトリック元町教会。ハリストス正教会のほど近くにあります。1859年にフランス人宣教師カションが設けた仮聖堂を起源として、1877年に木造の初代聖堂が建てられたといいます。
ちなみに教会群は坂道にあるので、雪道で足元が滑らないようご注意ください。特に凍ったところは歩かないように。柔らかい雪を踏んだ足跡の上に重ねて歩くようにすれば、それほど滑りません。
そしていよいよ函館ロープウェイ。カトリック元町教会からもほど近いのです。函館山へ向かいましょう。料金は往復で大人1500円。15分おきに出発しており、乗っている時間は5分足らず。あっという間に山の上に到着です。この日は中国人や韓国人観光客がワンサカ。日本人観光客はわずかでした。
標高334mの函館山からの眺めは360度、壮観です!夜景はもっと美しいとの評判ですが、昼間のうちに函館の街並みを見ておきたかったのです。もともとここには開港した函館を守るための要塞があったといいます。
おまけですが、函館山の展望台から市街とは反対に回ると、雄大な津軽海峡が見渡せます。上の写真は西南の方向。雪の合間の美しい夕景が広がっていました。
住所:北海道函館市元町19-7
電話:0138-23-3105
2021年1月17日から当面の間、営業時間を短縮し16:00~20:00(上り最終19:50)とのことです。
HP:https://334.co.jp/
函館山の麓には、まだまだ名所がたくさんあります。上の写真は旧イギリス領事館。1859年にロシア、アメリカに次いで開設されたそうで、建物は1934年まで使われました。いまでは開港記念館として開放されています。入館料は大人300円ですが、旧イギリス領事館・函館市北方民族資料館・函館市文学館の3館共通入館券があり、大人720円でした。
個人的にはアイヌなど北方民族の歴史資料を展示する北方民族資料館は興味深いものでした。北海道からシベリア、アラスカなど広大な北の文化圏はそれほど知られておらず、今も謎が多いのですね。
入口のホールに展示されているコロボックル。アイヌに伝わるフキの葉の下に住むという小人です。コロボックルの物語は昔からアイヌの人々が伝承してきたもので、小さなコロボックルは恥ずかしがり屋だったそうです。一説には、北千島に住む別集団のアイヌだったのではないかともいわれているんですって。
この日、函館山ロープウェイを除けば、周辺はずっと歩いて散策しました。上の写真、オシャレなギフトショップが並ぶ金森赤レンガ倉庫も近くにあり、半日から一日かけてのんびりできます。
市電に乗って湯の川温泉へ
さて、函館の宿に向かいましょう。十字街駅から市電に乗り、東の空港方面、湯の川温泉駅まで戻ります。十字街駅からは40分ほどでしょうか。
湯の川温泉駅の交差点には足湯がありました。建物の上には屋根があるので、雨や雪を気にせず足をつけることができます。ですが今日は早目に温泉に入って体を温めたいところです。
市電湯の川温泉駅からは雪道で滑らないように慎重に歩いて8分ほどで今夜の宿の平成館海羊亭に到着しました。今回は2泊。天井の高い広々としたロビーです。
湯の川温泉は登別、定山渓とともに北海道では古くから知られる温泉地です。
客室はすべて2019年にリニューアルされたそうです。キレイで居心地が良いのです。
ところで、湯の川温泉は秘湯ではありませんね。大きな温泉地です。その始まりは1653年(承応2年)といいます。松前藩主の9代高広(幼名 千勝丸)が難病にかかり、ある晩母の清涼院は「松前城の東にある温泉に行けば、どんな病も治る」という夢を見ます。その温泉に千勝丸を湯治させるとまもなく全快。藩はお礼に、薬師堂を建てたというものです。
12階にある2つの温泉、展望風呂へ
「湯の川」の語源はアイヌ語の「ユ(湯)+ペツ(川)」からきているそうです。当初は湯量も少なく、温度も低かったらしいのですが、明治18年に100度以上毎分140リットルの温泉を掘り当て、翌年に湯治場を開くことで入浴客が増え、それに伴い料理店・宿・商店などが建ち並びました。
平成館海羊亭の浴場は12階にありました。この宿の温泉は2つの泉質が楽しめるのです。まずは大浴場。広々として窓越しに、西にある函館山を眺めることができます。また反対側にある露天風呂からは東の函館空港と海岸線をはるかかなたまで眺めることができ、気分爽快なのです。
泉質は、大浴場が無色透明なナトリウムカルシウム塩化物泉。露天風呂は含ヒ素・含重曹-弱食塩泉で、鉄分を含んでいるせいか茶色いお湯で「赤湯」と呼ばれています。「赤湯」は湯の川温泉でも珍しいのだそうですが、もともと開湯したばかりのころの湯の川は赤湯だったといいます。
たくさんの海の幸をいただきます
海の幸、山の幸が豊富な北海道の食事は楽しみです。こちらのホテルでは食事処でのバイキングとなり、40種類もの料理が並ぶといいます。個人的には好きなものを存分にいただけるバイキングがうれしいですね。
函館の港に上がった海の幸、北海道の地元食材を使った料理、どれもおいしいのです。特に冬場はカニやホタテ、イクラが楽しみ。北海道の海産物はプリプリふっくらして、しかも甘みがあっておいしいんですよね。ごはんは海鮮丼を自分で作っておいしくいただきました。
翌日、客室から外を見ると虹が架かっているではありませんか! 冬の晴れ間の虹も気持ちいいものです。
冬の北海道なので寒いことは寒いのですが、名所旧跡や温泉、そして美味しいお店がたくさんあって出かけるのも苦になりません。雪もまた楽しみのひとつなのです。
おまけ おススメの函館ランチ
函館のグルメと言えば、まずは函館ラーメンです。塩味の澄んだスープ。札幌の味噌ラーメン、旭川の醤油ラーメンとともに、北海道を代表するラーメンです。昆布系の出汁がきいています。あっさりしているので、するすると食べられます。JR函館駅ビルの2階にあるあじさい亭でいただきました。
ちなみに函館駅周辺も見どころがたくさんあります。海産物などやレストランなどが集まっている函館朝市も駅のすぐ目の前にあります。
そして、もうひとつ気に入ったのが、函館のソウルフードのお店というラッキーピエロ。ほんとうはハンバーガーが人気なのですが、メニューにある鉄板ミートソーススパゲティに思わず惹かれてしまいました。
お店は五稜郭前の真野交差点です。店内はカラフルなデコレーションでハッピーな気分になります。ちなみにラーメン屋のあじさい亭の本店も同じ交差点にありますので、ぜひどうぞ。
[All Photos by Masato Abe]