【実は日本が世界一】日本の「漏れない水道」は世界トップクラス!特に福岡が「世界一」を誇るものとは?

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Sep 16th, 2021

世界で最も日本が優れている意外な分野を紹介するTABIZINEの連載。今回は、旅行にも暮らしにも大切な「水」の話です。

水道水のイメージ

日本の水道が世界一を誇る「水漏れ」の話

水道水
世界を旅すると、水道水を飲めない国の多さに驚くはずです。筆者が暮らす富山市の水道水は、モンドセレクションで最高金賞を連続受賞するほどおいしいのですが、世界には水道水を飲めない国も多いです。旅行者としてはペットボトル入りの水を欠かしてはならず、なかなか大変ですよね。

とはいえ、今回取り上げる話は水道水の飲める・飲めない問題ではありません。水源から浄水場を経由して各家庭やホテル、観光施設に至るまで、さまざまな場所へ届けられる水道水の漏水率についてです。

漏水率とは文字どおり、水源から水道管を通って蛇口に至るまでに、どれだけの水が途中で漏れて(失われて)しまうか、その比率を意味します。漏水率が高ければ蛇口に届くまでの過程で水が失われているわけで、限られた水資源を巨大な人口で分け合う大都市では死活問題です。

にもかかわらず、例えばミャンマーの首都・ヤンゴンでは66%の水が水源から蛇口に届くまでに失われているとの情報もあります。インドの首都・デリーでは40~50%、マレーシアの首都・クアラルンプールでは34%、ベトナムの首都・ハノイでは30%、タイの首都・バンコクでは23%、台湾の台北では18%、中国の北京では17%の水が失われているとのデータもあります。

ロンドンやニューヨークも漏水率は高い

ロンドンの水道
(C) Chrispictures / Shutterstock.com

ヨーロッパの大都市も一緒です。さすがに東南アジアや南アジアの国々よりも漏水率は低いですが、水源から蛇口に届くまでの間にそれなりの水が失われています。例えばロンドンでは26.5%の漏水率が報告されています。意外な数値ですよね。タイのバンコクとあまり変わらないわけです。

BBCの報道を見ると、2011年11月~2018年2月に至る6年半の間にロンドンでは現に3万6,000回も水道管が破裂して水が漏れたといいます。

もちろん、この状況を放置しているわけでもなく、テムズ水道局を前身とする水道事業会社Thames Waterは、2020年~2021年に2年連続で漏水率を改善した報告しています。ただ世界の大都市ロンドンの立ち位置と存在感、歴史を考えると、水道管が破裂して道路が水浸しになるなんて、ちょっと意外ですよね。

情報源によって数値は違うものの、ニューヨークも8.5%程度の漏水率があるといいます。ニューヨークタイムズを見れば、「水道管がニューヨークのいたるところで破裂している。修復はできるのか?」といったタイトルの記事が2020年に出されているとわかります。ニューヨーク市は、劣化した水道管の修復に年間4億米ドル(約400億円)もお金を費やしているのだとか。

ニューヨークの水道管は布設から平均して66年の月日がたっていると同記事にも書かれていました。世界の大都市であるニューヨークの地下には電線・電話線・ガス管・地下鉄・その他の施設が入り乱れています。その中に水道管が走っているため、老朽化した水道管を修繕しようと思っても、大変な困難を極めるようです。

BBCとニューヨークタイムズの記事には、水道管からあふれ出た水で路上が濡れ、道路が水浸しになっている写真が掲載されています。そのような光景を逆に日本で見た記憶はありますか?

限りなく0に近いのではないでしょうか? 思い返してみれば筆者も一度しかありません。その理由は、世界でトップクラスの漏水率の低さを日本が誇っているからだといえるはずです。水源から蛇口へ水を運ぶまでに、水を漏らさない水道システムが日本は国中に張り巡らされているのですね。

福岡の漏水率の低さは世界一とも言えるレベル

福岡市の風景
例えば東京の漏水率は3%程度です。ロンドンや台北、北京などの大都市と比べると、驚きの数値ではないでしょうか。

もちろんこの数値は一朝一夕に確立したわけではありません。第二次世界大戦後には、東京も80%の漏水率があったそうです。ほとんどの水道水が水源から蛇口に届くまでに、どこかに失われてしまっている状況です。

戦後の80年近い歳月をかけて、焼け野原に水道管も含めて現在の東京をつくりました。優れた水道技術を持つドイツのベルリンも漏水率は4%を下回るといいますから、世界でもトップクラスの漏水率を東京も実現したのですね。

さらに驚きは日本の地方都市です。東京よりも漏水率に優れた都市が日本にはいくつもあって、例えば広島・札幌・名古屋・さいたま市などは2%台の漏水率を誇っています。さらに福岡県の政令指定都市である福岡市の場合は、市のホームページ情報によると、平成29年度の実績で漏水率がなんと1.8%です。

あらためて漏水率を復習すると、

<家庭などへ配水される水量のうち,水道管から漏れる水量の割合>(福岡市のホームページより引用)

でした。現職の福岡市長も公式ブログで福岡の漏水率を「世界一」と誇っています。

同ブログによると、政令指定都市の中で福岡市は唯一、一級河川が流れていない都市なのだとか。それでも年間で1万5,000人が増え続ける大都市を問題なく運営しています。その理由は、日常的な市民の節水意識はもちろん、圧倒的な漏水率の低さがあるからこそなのですね。

福岡在住のライター仲間にも聞いてみました。福岡市は、過去に深刻な水不足に苦しんできた歴史を持つようです。地元紙の西日本新聞の報道を見ても、例えば1978年が特にひどかったらしく、観測史上5番目の小雨を記録して福岡都市圏のダムが干上がり、給水制限が287日間にも達したのだとか。学校の授業でプールが中止になるなどは当たり前、「お米がたけない」とパン食に切り替える人たちすら続出したそうです。

295日の給水制限が1994年にもあったとの話。福岡市の人たちにとって漏水率は、まさに死活問題で、危機意識に基づく長年の努力が、世界一と宣言できるくらいの水道システムを確立させたのですね。

日本の意外な世界一を今回も紹介しました。大都市の中でも特に漏水率の低い福岡は現在、移住先としても人気です。福岡市に引っ越す予定のある人は、圧倒的な漏水率に感謝しながらも、渇水の歴史を学び、日常的な節水も引っ越しとともに意識すると、地元の人にすんなりと受け入れてもらえるのではないでしょうか。

[参考]

全ての人々に安全な水を – ジャイカ

データで見る水の世界

平成 25 年版 「日本の水資源」概要版

東京水道の国際展開 2018年IWA世界会議・展示会 – 東京都水道局

東京水道 日本版水メジャーで外資に対抗 12月には中東へ職員派遣 – 産経新聞

東京都の水道技術は、世界で〇番目?!ミャンマーで水ビジネスをスタート – 音喜多駿

文字どおり「水も漏らさぬ」技術が誇り- 水道の漏水率 – – 福岡市

第3章 現状と課題

福岡市の漏水率の低さは世界一!半沢直樹で水道配水量に異常が! – 福岡市長高島宗一郎オフィシャルブロ

Our leakage performance – Thames Water

Water Mains Are Bursting All Over New York. Can They Be Fixed? – The New York Times

London’s water pipes leak 36,000 times in six years – BBC

「大渇水」40年節水進む福岡 「屈指の漏水対策」 「再生水義務付け」 「近隣市町に水源」 「体験の風化」懸念 – 西日本新聞

[All photos by Shutterstock.com]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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