イギリスでは冬にノースリーブ、夏にモフモフブーツもアリ
イギリスに住み始めて驚いたことのひとつに「季節感のないイギリス人のファッションセンス」があります。例えば、真冬でも半袖シャツのみの男性を多く見かけますし、ノースリーブのワンピースにタイツも履かずコートを羽織っただけでパブに来る女性も、ごくごく当たり前にいます。逆に、夏なのにモフモフなブーツとデニム姿の女性や、ちょっと肌寒い程度の日にダウンコートを羽織っている人もいます。
季節感にとらわれない斬新なイギリス流ファッションスタイルについて、今回は考えてみたいと思います。
重ね着をする習慣がない
日本で育った筆者がイギリス人のファッションに違和感を抱いた理由のひとつに、重ね着をする習慣がないということがあります。昭和~平成に幼少時代や10代を過ごした筆者は、夏は半袖を着る、冬は長袖のトップスをまず着て、その上にセーター、そしてコートというのが当たり前として育ってきました。
そのためイギリス人の多くがする、半袖Tシャツの上に直接コートやダウンジャケット、ノースリーブのトップスの上にウールのセーター(ちくちくしそう)という、筆者が親しんできた重ね着のルールにまったくのっとっていないファッションスタイルが斬新に見えました。
衣替えがない
冬でも半袖やノースリーブ、夏でもフリースやウールのセーターを着るイギリスには「衣替え」も存在しません。1年を通して同じようなものを着まわすため「夏用」「冬用」を入れ替える必要がないからです。
「重ね着」「衣替え」の習慣がない理由は?
イギリス生活が長くなるとともに、イギリスに重ね着や衣替えの習慣がない理由もわかってきました。
1.「夏服」「冬服」の切り替えがない
日本では、制服のある学校に通っていた人の多くは「この日からはこの日までは夏服を着る」という決まりがあったと思います。ところがイギリスの学校の制服には「夏服」「冬服」という概念がなく、一年中半袖でも長袖でもOK。つまり、子どものころから夏服、冬服の区別がなく成長します。
2. 天候が変わりやすく、夏でも冷え込むときがある
また、イギリスの気候の特徴も要因の一つになっているかもしれません。イギリスの気温は冬でも5℃ぐらい、夏でも25℃を超える日が少ない、というふうに、日本よりは一年を通じて寒暖の温度差が少ないのです。天気も変わりやすいので、夏でも冷え込んだ日にはフリースやセーターが必需品ということがよくあります。
3. 暑がりの人が多い
理由はわかりませんが、イギリス人は日本人より確実に暑がりの人が多い(もしくは寒さに強い)ようです。周りを見ていると、筆者は常に人より1〜2枚多めに着こんでいることが多く、薄手のセーターがちょうどいいぐらいのときに、イギリス人はTシャツ1枚が当たり前といった具合です。イギリス人は、冬でもあまり寒いと感じることなくノースリーブや半袖を着こなせるのかもしれません。
4. 寒さは小物で対策
日本人にとっての寒さ対策は肌着や暖かいセーターを着たりして、とにかく「重ね着」をイメージする人が多いかと思います。ヨーロッパ全般に言えることですが、寒さの厳しいヨーロッパでは、寒さ対策の基本は重ね着よりまずマフラーや帽子、手袋、厚底の靴などの小物で調節し、末端や首を冷やさない工夫をする人が多いです。
重ね着は極寒の地での最終手段というイメージで、普段は半袖Tシャツやフリース(もしくはコート)、ニット帽、手袋で過ごす程度の人が多いです。
「今」着たいものを着るのがイギリス流
夏服と冬服のあった学生時代を過ごし、スーツ姿で仕事へ行く両親を見て日本で育った筆者にとっては、暑い夏には○○を着て、寒い冬には○○を着るという固定観念が確立されていたため、はじめはイギリスの季節感ゼロのファッションがとても新しく奇抜なものに感じたものでした。自分が今着たいものを着る、という自由さが、イギリスの斬新なファッションを作る基本になっているのかもしれません。
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