世界でもっとも長い食用のマッシュルーム
突然ですが、「ホクト」という会社をご存じですか? 筆者は一時、長野との県境も近い群馬県の嬬恋村に暮らしていた時、近所のスーパーで毎日のように次のような歌を耳にしていました。
「きのこのこのこげんきのこ。エリンギ、マイタケ、ブナシメジ。きのこのこのこげんきのこ。おいしいキノコはホクト」(ちょっと違っているかもしれませんが)
その時初めて、長野市のホクトという会社がこの世に存在し、大手企業としてキノコを栽培していると知りました。
実は、このホクト、ギネス世界記録を保有しています。タイトルは「Longest edible mushroom」です。
英語の苦手な人からすると「edible」がちょっと難しい言葉かもしれません。ただ、「エディブルフラワー」なるカタカナ用語があるので、なんとなく意味も類推できるのではないでしょうか。「edible」とは「食べられる」という意味の英単語です。
ホクトの社員が、世界でもっとも長い食用のキノコ(具体的にはエリンギ)を栽培したとして、2014年(平成26年)7月25日にギネス世界記録に認定された のですね。
偶然のミスが突破口になった
この偉業の背景は、農林水産省が配信するWebマガジン『aff(あふ)』の連載「ギネス世界記録 挑戦者たち」に詳しいです。公式記録によると、長さ59cm、重さ3,580g 。それこそ、ちょっと重めの生まれたての赤ちゃんといったサイズですよね。
ホクト創業50周年のプロジェクトとして、一般的な市販品と同じエリンギを使って、同社のきのこ総合研究所のスタッフが栽培に取り組みました。
思ったように大きく育たない、傘が大きくなりすぎてキノコの柄が曲がってしまうなど、なかなか最初はうまくいかなかったようです。100個以上のエリンギを使って、試行錯誤が4カ月以上続きました 。
しかし、転機が訪れます。設定を間違えて光の量を予定より多くしてしまった時、偶然にも大きくてきれいなエリンギが育ち、突破口になったそう。
最終的には、もっともきれいに育ったエリンギをいくつかの候補の中から選び、ギネスワールドレコーズ社の計測日を迎えたのだとか。
ブナシメジも52cmまで大きくなった
ブナシメジ
プロジェクトでは並行して、ブナシメジ栽培チームも動いていたそうです。両方で競い合い、最終的にはブナシメジも52cmまで大きくなりました。しかし、2cm差でエリンギチームが勝ち、ギネス世界記録を勝ち取ったのですね。
エリンギもブナシメジも、手軽に栽培できるキノコとして家庭用栽培キットも販売されています。この夏、暑くて旅行どころではない、どこへも出かけたくないという人は、キノコについて勉強を開始してみてはいかがでしょうか?
エリンギもブナシメジも家庭用栽培キットの発売が毎年秋に始まります。今から予習し、研究を深め、秋になったら栽培を開始し、ギネス世界記録に挑戦してみても面白いはず。
筆者もチャレンジしてみようと思います。家庭での栽培を通じて、ホクトの研究チームのすごさを再確認できそうですね。
[参考]
※ Longest edible mushroom – Guinness World Records
※ 世界一長い食用きのこ – aff
※ [22年10月下旬予約]きのこ栽培セット:もりのエリンギ農園
[All photos by Shutterstock.com]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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