>>【見たさ 逢いたさ 想いが募る】越中八尾おわら風の盆
台風もなく平穏にお米を収穫できるように祈る行事
阪急交通社が実施した「日本の祭り」に関する調査によると、今回取り上げる富山市の「おわら風の盆」はトップ10に入っていました。とはいえ、この祭りの知名度は、「青森ねぶた祭」や「阿波おどり」、「祇園祭」などのビッグネームと比べるとまだまだ低い様子。
新型コロナウイルス感染症で中止になっていた数年を除けば、このところは期間中の3日で20万人ほどが訪れた大きな祭り です。しかし、富山へ引っ越してくるまで筆者も知りませんでした。一体、このおわら風の盆とは、どんな祭りなのでしょうか。
そもそも気になるポイントは、「おわら」や「風の盆」という独特な名称です。「おわら」という名前の由来については、富山県三大民謡の1つである盆踊り歌「越中おわら節」から来ていて、祭りでもこの「おわら節」が奏でられ、歌われ、踊られます 。
「おわら」そのものの起源は、お米づくりの作業である「わら打ち」、「お笑いごと」、小原(おわら)村の娘が歌った子守歌など諸説あるようです。
一方で、「風の盆」は、立春(現在の2月4日か5日)から数えて210日目にあたる9月の頭に、台風もなく平穏なまま、実り豊かなお米の収穫を祈る行事 を意味しています。おわら節に合わせたおわら踊りで風神を鎮める狙いもあるのだとか。
古い街並で「おわら節」を静かに踊り歌う男女
では、おわら風の盆とは、そもそもどこで行われる祭りなのでしょうか。青森ねぶた祭、阿波おどりのように祭りに地名が含まれていません。また、毎年20万人近くの人は、何を目当てに訪れているのでしょうか。
おわら風の盆は、富山市の「八尾(やつお)」という場所で行われます 。大阪に八尾(やお)市がありますが、こちらは八尾(やつお)です。
かつては、八尾町という基礎自治体で、合併を経て富山市に組み込まれました。おわら風の盆の開催される街の中心部は、古刹(こさつ)の門前町であり、カイコの卵やまゆ、生糸、和紙、薬草などの集散地でした。
とはいえ、県庁のある富山市中心部や富山駅から見れば市の外縁部にあたり、車で40分ほど離れた、お世辞にも交通の便がいいとは言えないところにあります。電車も通っていますが本数は少なく、最寄り駅の越中八尾駅から祭りの中心地までは約30分の歩きが必要です。
それでも人が押し寄せる理由は、古い街並を舞台に、おわら節を静かに踊り歌う男女の姿が、情緒たっぷりの雰囲気を漂わせ、見る者をうっとりとさせてくれるからです。
青森ねぶた祭や阿波おどりを「動」の祭りだとすれば、おわら風の盆は「静」の祭りといった感じ。法被にももひき、菅笠姿の男、町内ごとのゆかたに菅笠をかぶった女たちの静かで洗練された振る舞いが、陰影に満ちた北陸の古い街の雰囲気と、絶妙にマッチして見えるわけです。
ここ数年は見送られてきましたが、今年は開催が見込まれています。新型コロナウイルス感染症の第7波の影響で、開催方法にいくつかの制限が検討されているようですが、おわら風の盆を未体験の人は、9月の頭に富山の旅行を計画してみてはいかがでしょうか。
このところ、富山ではホテルが開業ラッシュで、宿の選択肢もかなり増えましたよ。
[参考]
※おわら盆の盆-越中八尾観光協会 ※ 『ブリタニカ国際大百科事典』
※ 北日本新聞『やさしく学ぼうふるさと富山』
※ 平凡社『マイペディア』
※ 知名度8割の青森ねぶた祭! 「ねぶた」の由来は4割が全く知らない ~阪急交通社が日本の祭りに関する調査結果を公開~
>>「祇園祭」にも「七夕祭り」にも「神田祭」にも知らなかった不思議が!【特集・有名祭りこそトリビアの宝庫】
>>いながきの駄菓子屋探訪84:おわら風の盆を待つ富山市「こどもや村井商店」
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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