アクセスしやすい東鳴子温泉
東北新幹線古川駅から陸羽東線に乗り換えて42分。東京からもアクセスしやすいのが東鳴子温泉です。
もうずいぶんと昔、旅館大沼にはお邪魔したことがあります。その時は「東鳴子」という駅名でしたが、1997年に「鳴子御殿湯」という名前に変えたそうです。江戸後期に仙台藩主の奥さまが湯治をしたとか。
たしかにいいお湯です。すぐ西にある鳴子温泉は硫黄系の温泉なのですが、ここは薄い茶色または無色透明のお湯で、美肌効果の高い重曹泉を中心に多彩な泉質に恵まれています。そのため湯治や長期療養滞在をする方も多いのです。駅から500m以内に温泉宿が何軒もあります。
女性にやさしい 歴史ある湯治宿
旅館大沼も鳴子御殿湯駅から歩いて6、7分、表通りに面しています。門構えは昔と変わりません。こじんまりした建物で、建物自体はけっして新しくありませんが、きれいに掃除されています。いまも湯治で長期滞在する方も多いそうです。
到着するとロビーで抹茶を頂きました。以前お世話になったときに対応していただいた、陽気な女将をよく覚えています。いまは82歳だとか。お元気そうでなによりでした。
創業して120年。いまでは大女将の息子さんが5代目のご主人です。温泉湯治宿としてお湯と食で健康作りにこだわっているようです。
この宿の特徴は、8つある浴室のうち5か所が無料で貸切り出来ることです。ひとりでも貸切りOK。部屋で休んだ後、さっそく露天風呂に案内していただきました。車で送迎してくれるのです。宿から5分ほどの小高い離れに大きくて気持ちのいい露天風呂がありました。
「母里の湯」といいます。30分交代で宿の車で送迎してくれます。こちらは無色透明な「含食塩・芒硝重曹泉」。体が温まる美肌の湯です。今年は雪が少なく雪見露天とはいきませんが、そんなこととは関係なく、貸切りの露天の解放感が素晴らしいですね。広々とした空間を独り占めできるのです。
こちらは古くからある「千人風呂」という大浴場。ここは貸切ではなく混浴ですが、19時半から21時は女性専用です。
旅館大沼には、赤湯と呼ばれる「純重曹泉」と透明な「含食塩・芒硝重曹泉」の2本の源泉があります。PHはそれぞれ6.9と7.4で、赤湯は天然重曹成分が86%、全国的に見ても素晴らしい重曹泉なのだそうです。
玄関には100年前から「婦人名湯」の看板が掲げられていますが、重曹泉は主に皮膚を乳化して汚れを落とし、肌をきれいにする清浄作用が特長で、湯上りは肌がしっとりしてすべすべになり美肌になります。
お好みの無料貸切風呂にどうぞ
こちらは4階にある貸切りの「陽の湯」です。窓からは東鳴子の街と山並み、そして陸羽東線の電車がよく見えます。東に向いているので太陽が昇るところも見れますね。こちらは「純重曹泉」。
「陽の湯」の向かいにある「陰の湯」。こちらも「純重曹泉」です。それぞれ2,3人で入浴しても大丈夫。
健康第一を考えて洗剤にも気を使っているそうです。体につけるものですので、化学成分を使っていない、天然素材のシャンプーやリンス、ソープをそろえていました。
そしてさらに足湯に、ふかし風呂。ふかし風呂とは床に横になって温泉の熱で体を温めるお風呂です。さらに女性専用の大浴場「天女の湯」もあり、どれに入ろうか迷ってしまうほど。湯治の楽しみが増しますね。
小さな宿だから 丁寧に作られる家庭料理
食事も温かな手作り感があります。食事処で気が付いたのは、ひとりで湯治に来ている方がたくさんいたこと。しかも、そのほとんどが女性でした。
特別な料理というわけではありませんが、地元で採れたもの、野菜や山菜を使って、丁寧に調理をしているのが嬉しいのです。
仙台牛の陶板焼きもおいしく頂きました。天ぷらもアツアツで供されます。ひとつひとつ心を込めて作られているのがよく分かりました。
翌朝はすこし雲がかかっていましたが「陽の湯」に入って朝日が昇るのを待ちました。気持ちの良いお風呂です。
東鳴子温泉のおススメ湯治宿
ところで、東鳴子温泉には気軽に日帰り入浴もできる湯治の宿が立ち並んでいます。ほかの温泉宿もご紹介しておきましょう。上の写真は「いさぜん旅館」。泉質の違う3つの温泉があり、特にラジウム炭酸泉は屋敷内で湧き出る自慢の温泉。このお湯に入ると風邪をひかないと言われているそうで、混浴での入浴になります。
こちらはなんと1784年創業で現在12代目となる「勘七湯」。大小2つの浴室があり、不老泉と呼ばれる重曹泉の源泉かけ流しはおススメです。
そして上の写真は線路を挟んで反対側にある「なんぶ屋」。こちらの泉質も純重曹泉ですが、他の宿に比べて色が薄く、とろみがある印象です。それぞれに特徴があるんですね。
鳴子温泉に比べて全国的には知られていませんが、お湯が素晴らしく、交通の便も良く、そして財布にもやさしい宿ばかり。数日間滞在して、たくさんの宿の多彩な温泉を味わい、較べてみるのも楽しいものです。
[All photos by Masato Abe]