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【金沢ミステリー】日本三名園の兼六園にある「鳥が全く寄り付かない銅像」とは?

Posted by: 坂本正敬
掲載日: Jun 26th, 2020.

金沢には兼六園という有名な庭園があります。今回は金沢ミステリーシリーズとして、その兼六園にある銅像の不思議を紹介します。

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金沢・兼六園の日本武尊像


兼六園の銅像には不思議があった

金沢・兼六園の日本武尊像

金沢の有名な観光地といえば、その筆頭は兼六園です。兼六園の中には、TABIZINEの過去記事「【金沢ミステリー】日本三名園の兼六園に現存する井戸から生えた『うらみ桜』の怪談話」で紹介した、井戸から生える桜があると紹介しました。兼六園に隣接した金沢神社にあるパワースポットも、過去記事「金運アップのパワースポット!金沢の地名の由来『金城霊沢』に残る言い伝え【石川県】」で紹介しましたね。

しかし兼六園には、まだ別の不思議な話があります。例えば園内でひときわ存在感を放つ、日本武尊の銅像(正式には、明治紀念之標)にも、ユニークなエピソードがあります。

銅像といえば、東京近郊の人の場合、上野恩賜公園(上野公園)にある巨大な西郷隆盛と愛犬の銅像を思い浮かべるはずです。西郷隆盛像は緑が豊かな公園の中にあり、ハトやカラスが銅像にとまって羽を休めています。

一方で、兼六園の日本武尊の銅像には、なぜか古くから鳥が一羽も寄り付きませんでした。そのため、ふんで汚れる心配がないと、地元の人には知られています。この像は、1880年(明治13年)に建立された、人物像としては日本最古の銅像です。100年以上も同じ場所で立ちながらも、鳥がとまっている瞬間を目撃した人が、ほとんどいないのですね。筆者も北陸に暮らすため、何度か確認してみましたが、確かに一度も鳥はとまっていませんでした。

イグノーベル賞を受賞した兼六園の謎

金沢・兼六園の日本武尊像

この日本武尊の銅像、西郷隆盛を中心とした鹿児島の士族(旧武士身分の人たち)による反政府運動(西南戦争)を鎮圧するために、石川県から志願して戦地に行き、死亡した従軍戦死者を慰めるために建てられています。

銅像を鋳造した職人は、お隣の富山県、銅器で有名な高岡の藤田治三郎です。「それだから」という理由もあるのかもしれません。郷土への愛着が強い地元の人には芸術的な価値が認められておらず、話題になるとすれば、「鳥が寄り付かない」というエピソードばかり。

ただ、この不思議な現象を見過ごさずに、注目して研究をした学者がいます。後に「ハトに嫌われた銅像の化学的考察」でイグノーベル賞化学賞を受賞する廣瀬幸雄さんですね。地元の金沢大学を卒業し、同大学で名誉教授にもなった廣瀬さんは、

<周りの木にハトがたくさん止まっているのに、なぜ銅像には寄ってこないのだろうか>(Tech Noteより引用)

と感じた過去の記憶から、研究を開始したと言います。

廣瀬さんは研究で、上野の西郷隆盛の銅像と比べ、兼六園の銅像は融点を下げるためのヒ素や鉛が、5倍近く含まれていると突き止めます。その上で、「ヒ素が鳥を遠ざけているのではないか」と仮説を立て検証を繰り返してみると、案の定、鳥はヒ素を嫌って行動するとわかったといいます。

なぜ鳥がヒ素を嫌うのかについては、今後の検証が必要だそうですが、この研究によって廣瀬さんは、「人を笑わせ、考えさせる研究や業績」に与えられるイグノーベル賞を受賞しました。

要するに、鳥が寄り付かない謎には、きちんと理由があったのですね。

台座にも注目

金沢・兼六園の日本武尊像
(c) Francesco Bonino / Shutterstock.com

また、この像は台座にも注目できます。

コンクリートを使わず、自然石だけで組み上げていて、その石積みの中にはヘビ、カエル、ナメクジに似ている石があると言われています。いわゆる、三すくみ状態が台座で表現されているのですね。台石とその下の土台である石積みの間には、クッションとしてしっくいが座布団のように敷き詰められていて、100年以上前から免震対策も施されているのだとか。

正直に言って、兼六園の中ではほとんど観光客が足を止めない場所ではありますが、こういったエピソードを踏まえて、あらためて眺めてみると、きっと見え方が深まるはずです。また、立ち止まる時間が長くなるほど、西南戦争に従軍し、戦死した人たちの存在が、じんわりと伝わってくるかもしれません。

次に兼六園に訪れる機会があったら、ぜひとも明治紀念之標(日本武尊の銅像)にも視線を向けてみてくださいね。

兼六園
住所:石川県金沢市兼六町1
電話番号:076-234-3800
開園時間:※期間によって異なる。7:00〜18:00(3月1日〜10月15日)、8:00〜17:00(10月16日〜2月末日)
定休日:年中無休
HP:http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/japanese/top.html

[参考]

ハトが寄り付かない銅像!?日常の発見が研究に活きる:廣瀬 幸雄氏【イグノーベル賞インタビュー Laugh and Think 第6回】 – Tech Note
※「伝統と革新の町・金沢を歩き解く!金沢謎解き街歩き 」(能登印刷出版部著・実業之日本社)
※「石川県大百科事典 」(北國新聞社)

[All Photos by Shutterstock.com]

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。


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