物価が高い
一般に「地方は東京より物価が安い」と思われていますが、その法則は離島には当てはまりません。
直島には小さなスーパーとコンビニがあり、最低限の生活必需品は島内である程度そろえることができます。ところが、いざ直島のスーパーに行って驚いたのがその値段。
ものによっては、地方都市の一般的なスーパーの3割以上高いことも。お肉や加工食品などは特に高く、しゃぶしゃぶ用の豚ロースが200gで680円、バラ肉であれば550円ほどです。直島に住んでから、「豚肉は気軽に買えるもの」というイメージではなくなりました。
プロパンガスなのでガス料金も高く、気温が下がる冬場には2人暮らしで月1万5,000円を超えることもあるほど……。
実際に住んでみて、離島暮らしは思いのほか基本的な生活コストがかさむことを実感。夫の仕事の都合で直島に住んでいるため、夫と「離島手当ほしいよね」なんて、冗談交じりで話しています。
「ラッシュアワー」がある
「離島」と聞くと、車はもちろん人の往来も少ない、のどかでひっそりとした光景を想像しませんか? ところが平日の直島には「ラッシュアワー」があるのです。
もちろん都市部とは比べものにはなりませんが、朝早い時間に宮浦港に行くと、大勢の人や大型トラックがフェリーから降りてくる光景を目にします。
朝のフェリーで直島にやってくる人や車の多くが向かうのは、島の北部にある精錬所。1917年に設立された直島精錬所は、100年以上にわたって直島の経済基盤であり続けてきました。最近では、「直島=アートの島」というイメージが強くなりましたが、実は古くからの「精錬の島」なのです。
精錬所の関係者は直島に住んでいる人も多いですが、島外から通勤してくる従業員の方や、島外からやってくる関係者の方も少なくないため、朝の港周辺は離島とは思えないほど賑やか。離島のラッシュアワー、なかなか珍しい光景ではないでしょうか。
立派な家が多い
離島というと、なんとなくつましい生活を送っているようなイメージがあるかもしれませんが、直島に引っ越してきて、思いのほか立派なお宅が多いことに驚きました。建築資材の運搬にコストがかかり、建設費もかさむだろうに、「豪邸」と称しても差し支えのない家が何軒もあるのです。
直島ホール(手前)と町役場(奥)
それに加えて、町役場や学校などの公共の建物も離島とは思えないほど立派で、デザイン性にもこだわって造られていることがわかります。
直島に堂々たるお宅が多いこと、公共施設にお金がかかっていることも、直島が精錬の島であることと無関係ではありません。少し古いデータになりますが、2000年時点で町の税収の6割は精錬所関連の税金が占めており、個人所得も香川県内では3番目に高かったといいます。(四国新聞:島びと20世紀第3部「豊島と直島3 運命共同体」より)
過去には、香川県で最も裕福な自治体だったことも。直島は、離島のわりには「お金持ちの自治体」なのです。
役所の窓口に発券機がない
直島に住むまで、「役所の窓口では、まず順番待ちの札を取るもの」と思っていました。これまで住んだ場所では、県庁などの大規模な役所はもちろん、地方都市の小さな支所でもそうだったので、それが当たり前だと思っていたのです。
ところが、直島の町役場に行くと、そもそも発券機がありません。「手続きや相談をしたいときは、用がある窓口に声をかければいい」という、これ以上ないほどシンプルなシステム。
「そんなんで大丈夫なのかな?」と思ったのですが、筆者が手続きをしていた1時間ほどのあいだ、同じ窓口を訪れた人は1組だけ。発券機がないことに納得です。
町役場で働く男性職員が、みんな作業着を着て仕事をしていることにも驚きました。働く人にしかわからない気苦労もあるのかもしれませんが、直島の町役場の職員さんは自然体で人間らしく働いている感じがして、役場に行くのがちょっぴり楽しみになりました。
こうして直島で驚いたことを挙げてみると、多くの離島に共通するであろうエピソードもありますが、「精錬の島」であるがゆえに、直島が小さな離島としては特異な存在であることがわかります。次回は「精錬の島」としての知られざる直島の顔について、もっと詳しくお話したいと思います。
[All photos by Haruna]
【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第1回:新生活は突然に~
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第2回:島の風景は毎日違う
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第4回:「精錬の島」としての知られざる顔
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第5回:限られた選択肢のなかで「幸せ」を見つけるということ
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第6回:自分で自分の可能性を狭めてるかも
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第7回:離島の「物価」に衝撃
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第8回:フェリーに乗って買い出し
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第9回:島に住んで変わったこと
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第10回:離島生活でいちばん困ること
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第11回:直島のとある休日
>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第12回:お隣の豊島に行ってみた
Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。
【香川県・小豆島の観光地7選】映えるフォトスポット盛りだくさん!オリーブ
Mar 24th, 2024 | 大林 等
瀬戸内海に浮かぶ小豆島は、一年を通して穏やかな海と温暖な気候に恵まれています。地中海の沿岸を思わせるような島内では、オリーブの栽培が盛んです。オリーブにちなむ観光スポットのほか、エンジェルロード、二十四の瞳映画村、寒霞渓など、変化に富んだ風景を楽しむことができます。特にオリーブ公園は、フォトジェニックな写真を撮影したい人に大人気。瀬戸内海・風車・「魔女の宅急便」のロケセットなどフォトスポットが満載です。
香川県小豆島「島のパスタソース」はあえるだけで本格パスタが完成!【久世福
Dec 19th, 2022 | 石黒アツシ
全国からこだわりの生産者が集まった産直スタイルのオンラインモール「旅する久世福e商店」(通称「たびふく」)。バイヤーが実際に旅して見つけた、その土地ならではのおいしさを集めたということで、地方の心ときめく逸品を自宅の食卓で楽しむことができるんです。そこで、この連載では、ご当地の銘品や特産品に目がない「旅行家・食事家・写真家」の石黒アツシが、地方の調味料に注目。実際にお取り寄せして、その味を土地の魅力とともに紹介します。第9回は香川県小豆島の「島のパスタソース」です。
小豆島の寒霞渓にある通称「1億円トイレ」とは?【編集部ブログ】
Sep 18th, 2022 | TABIZINE編集部ブログ
世界でも最先端とされる日本のトイレ。自動的に便器を除菌や泡洗浄したり、脱臭機能、抗菌機能、自動でフタが開く機能、公衆トイレで空室がわかる機能など日々進化しています。今回ご紹介するのは、香川県・小豆島の寒霞渓で出会った通称「1億円トイレ」。ここ数十年の日本のトイレの進化を痛感するきっかけになりました。
おばちゃんのパッケージが可愛いノンカフェインの「さぬきマルベリーティー」
Sep 17th, 2022 | TABIZINE編集部ブログ
TABIZINE編集部員が、取材先やプライベートで気になった小ネタをお届けする編集部ブログ。今回は、香川県のお土産「さぬきマルベリーティー」をご紹介。桑の葉を使ったノンカフェインのお茶で、体をいたわりたいときにぴったり。何よりおばちゃんが描かれたパッケージにほっこり癒されてしまうのです。
香川県の巨大すぎる「しあわせ観音<小豆島大観音>」って知ってる?【編集部
Aug 31st, 2022 | TABIZINE編集部ブログ
TABIZINE編集部員が、取材先やプライベートで気になった小ネタをお届けする編集部ブログ。今回は、香川県・小豆島にある巨大観音「しあわせ観音<小豆島大観音>」についてです。真っ白な大観音の、その巨大さにも度肝を抜かれたのですが、最上階で手に入れたスリランカのお守り「ピリティヌーラ」もすごかった。
【離島暮らしのリアル】住んだからこそわかる「直島」の魅力!直島移住はじめ
Aug 18th, 2022 | TABIZINE編集部
あなたは「離島に住む」ことを考えたことはありますか? フェリーで島を訪れ、観光したとき「こんなところに住めたら素敵だな。でも不便かも……」と思ったことがあるかもしれません。美術館やかぼちゃアートだけではない、住んだからこそわかる直島の魅力や、町の様子、離島生活ならではの苦労など、知られざる「離島生活のリアル」。現地からお伝えしたTABIZINEライター春奈の連載をまとめてご紹介します。
【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第12回:お隣の豊島に行って
Apr 3rd, 2022 | 春奈
「瀬戸内のアートの島」として知られる、香川県の直島。フリーランスライターの筆者は、夫の仕事の都合で思いがけず直島で暮らすことに。人気の観光地でもある離島での生活とは、いったいどのようなものなのでしょう。直島の魅力や離島ならではの苦労話など、住んでみたからこそわかった「離島生活のリアル」を連載形式で綴ります。12回目の今回は番外編。これまで、直島や直島での生活について、いろいろな切り口からお話してきましたが、直島やその周辺を旅する人に向けて、直島のお隣にある豊島(てしま)の魅力をご紹介したいと思います。
【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第11回:直島のとある休日
Mar 20th, 2022 | 春奈
「瀬戸内のアートの島」として知られる、香川県の直島。フリーランスライターの筆者は、夫の仕事の都合で思いがけず直島で暮らすことに。人気の観光地でもある離島での生活とは、いったいどのようなものなのでしょう。直島の魅力や離島ならではの苦労話など、住んでみたからこそわかった「離島生活のリアル」を連載形式で綴ります。11回目の今回は、直島のとある休日について。
【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第10回:離島生活でいちばん
Mar 13th, 2022 | 春奈
「瀬戸内のアートの島」として知られる、香川県の直島。フリーランスライターの筆者は、夫の仕事の都合で思いがけず直島で暮らすことに。人気の観光地でもある離島での生活とは、いったいどのようなものなのでしょう。直島の魅力や離島ならではの苦労話など、住んでみたからこそわかった「離島生活のリアル」を連載形式で綴ります。10回目の今回は、離島生活でいちばん困ることについて。
【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第9回:島に住んで変わったこ
Mar 6th, 2022 | 春奈
「瀬戸内のアートの島」として知られる、香川県の直島。フリーランスライターの筆者は、夫の仕事の都合で思いがけず直島で暮らすことに。人気の観光地でもある離島での生活とは、いったいどのようなものなのでしょう。直島の魅力や離島ならではの苦労話など、住んでみたからこそわかった「離島生活のリアル」を連載形式で綴ります。9回目の今回は、島に住んで変わったことについて。