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【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第12回:お隣の豊島に行ってみた

Posted by: 春奈
掲載日: Apr 3rd, 2022. 更新日: Aug 15th, 2022

「瀬戸内のアートの島」として知られる、香川県の直島。フリーランスライターの筆者は、夫の仕事の都合で思いがけず直島で暮らすことに。人気の観光地でもある離島での生活とは、いったいどのようなものなのでしょう。直島の魅力や離島ならではの苦労話など、住んでみたからこそわかった「離島生活のリアル」を連載形式で綴ります。12回目の今回は番外編。これまで、直島や直島での生活について、いろいろな切り口からお話してきましたが、直島やその周辺を旅する人に向けて、直島のお隣にある豊島(てしま)の魅力をご紹介したいと思います。

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豊島の風景02


豊島(てしま)ってどんなところ?

豊島の風景08

まずは「豊島ってどんなところ?」という基本的なところをお話しておきましょう。豊島は香川県小豆郡土庄町(とのしょうちょう)に属する離島。面積は14.5キロ平方メートルと直島の2倍近くありますが、人口は約760人と直島の4分の1ほどです。

製錬業を経済基盤としている直島に対し、豊島は古くから農業がさかん。米やいちご、みかん、オリーブなどが名産で、昔なつかしい棚田の風景が広がる自然豊かな島です。

直島同様、瀬戸内国際芸術祭の会場となっており、「豊島美術館」をはじめとするアート施設も充実。直島から豊島へは高速船でわずか20分なので、直島を訪れる機会があれば、ぜひ豊島にもセットで足を運んでみてはいかがでしょうか。

直島に住んで1年近く。「豊島に行こう行こう」と思いながら、なかなか行けていなかったのですが、ようやく機会を見つけて行ってきました。

高速船でいざ豊島へ

高速船サンダーバード

朝9時20分に直島・宮浦港発の高速船に乗船。直島発着の高速船には「○○バード」という名前がついていて、直島~豊島・犬島線は「サンダーバード」です。

隣の島といえども、いままで行ったことのない未知の場所にドキドキ。はじめての場所に行くときって、たとえ国内でもちょっとワクワクしませんか? 約20分の船旅はあっという間で、あらためて「近い!」と実感しました。

豊島の風景10

はじめて見る豊島の風景ですが、港周辺からして「直島とは違うなぁ」という印象。直島には製錬所があるので、離島にしては大型トラックや工事車両の往来が多いのですが、豊島の家浦港周辺はあまり車も見かけずひっそりとしているのです。

豊島を回るには、なにはなくともレンタサイクル。まずは港の近くで電動自転車をレンタルします。13時35分発の船で直島に戻る予定だったので、4時間コースを選びました。

スローな時間が流れる癒やしの島

豊島の風景01

自転車で島内を走っていると、あらためて直島との違いを実感。車とすれ違う頻度が圧倒的に低いですし、直島にあるような住宅密集地もほとんどありません。

畑と瓦屋根の民家と海……なんてのどかなんでしょう。海がすぐ近くにあることを除けば、島というより「里山」という表現がぴったりの風景です。

今回の豊島訪問は直前まで天気予報と相談して行く日を決めたので、まったくのノープラン。まずは、豊島のメインアトラクションである豊島美術館に行ってみることにしました。

豊島の風景03

美術館のすぐ手前で、はっとさせられるほどフォトジェニックな坂道を発見。急な下り坂の向こうには瀬戸内海、その左側には棚田……。こんなに素敵な坂道、日本中を探してもなかなか見つからないのではないでしょうか。

豊島の風景04

この棚田、一時は荒れ地となっていたものの、豊島美術館の開館と瀬戸内国際芸術祭の開催に合わせて2010年に復元されたのだそうです。離島に限らず、日本の農村には過疎化や高齢化の波が押し寄せていますが、こうした「日本の原風景」が、ひとつでも多く残ってほしいと思わずにはいられません。

唐櫃(からと)地区を散策

豊島美術館

豊島美術館に到着したものの、この日の午前中は予約なしでは入館できないとのこと。筆者は「入れたら入ってみようかな~」くらいのノリだったので、そう惜しくもなかったのですが、豊島美術館目当てに豊島を訪れる場合は、必ず事前予約をしておいたほうが良さそうです。

気を取り直して、豊島の東側にある唐櫃(からと)地区を散策してみることに。豊島には直島からの船が発着する家浦地区だけでなく唐櫃地区にも港があり、唐櫃港からは高松や小豆島への船が出ているようです。

豊島の風景06

港の奥のほうには「いかにも漁村」といった風情の心安らぐ風景が広がっていました。日曜日の昼間だというのに、車の音も人の声もほとんどせず、本当に静か。お隣の島でありながら、まったくの別世界です。

勝者はいない

ローカルな雰囲気漂う公園の前を通りかかったところ、屋外展示作品『勝者はいない』を発見。豊島の形をしたバスケットゴールで、脇に置いてあるボールで実際に遊ぶこともできます。

豊島の風景07

そこからさらに東へと進んでいくと、アート作品『心臓音のアーカイブ』の横にビーチが広がっていました。美しいグラデーションを描き出す瀬戸内の海は、何度見ても心が洗われるような感じがします。瀬戸内に住む一番の喜びは、やっぱりこの海の眺めですね。

ロケーション抜群の「海のレストラン」でランチ

海のレストラン01

そろそろお腹が空いてきたので、家浦港から唐櫃地区に向かう途中で見かけた「海のレストラン」でランチをすることに。その名の通り海に面したレストランで、海側の大部分が開放的なテラスになっているんです。

海のレストラン02

お花いっぱいのガーデンを抜けて店内へと足を踏み入れると、この景色! 直島には海を望むカフェはあるものの、海の真横で食事ができる本格的なレストランはないので、最高のロケーションに興奮してしまいます。

海のレストラン03

テーブルに飾られているお花も素敵で、これだけで満足度十分。自家製サルシッチャのグリルや豊島の食材を使った窯焼きピザなど、お料理も本格的で、至福の時間が過ごせました。

海のレストラン
住所:香川県小豆郡土庄町豊島家浦525-1
電話:0879-68-3677
URL:https://il-grano.jp/umi/

「豊島横尾館」で独特の世界観にハマる

豊島横尾館02

豊島で最後に訪れたスポットが「豊島横尾館」。築約100年の民家を改修し、横尾忠則氏のアート作品と、建築家・永山祐子氏の建築を融合して2013年に開館したミュージアムです。

豊島横尾館01

「母屋」「倉」「納屋」の3つの空間に展示されている11の平面作品に加え、庭のインスタレーションや円筒系の塔の内部に設けられた滝のインスタレーションなど、古民家のつくりを生かしたキッチュな世界観はインパクト抜群です。

ミュージアムのテーマは「生と死」だそう。筆者はアートに関してはまったくの素人ですが、アートがわからなくてもシンプルに「面白い」と感じられ、「これが見られただけでも豊島に来た甲斐があった」と思ったほどです。

豊島横尾館
住所:香川県小豆郡土庄町豊島家浦2359
電話:0879-68-3555(豊島美術館)
URL:https://benesse-artsite.jp/art/teshima-yokoohouse.html

豊島横尾館を後にしたら、レンタサイクルを返却し、13時35分発の高速船で直島へ。大竹伸朗氏の『針工場』がずっと休館していて見られなかったのが心残りでしたが、豊島の風景を眺めながら自転車を漕ぐだけでも癒やしを感じることができました。

豊島に行ってみて

豊島の風景05

実際に豊島に行ってみてわかったことは、豊島の魅力は観光スポット単体で成り立っているというよりも、島の風景と一体だということです。

観光スポットひとつひとつのインパクトだけを見れば、豊島より直島のほうが上を行っているかもしれませんが、豊島の観光スポットは、島の美しい自然風景や、昔ながらの石垣の古民家といった伝統的な景観と一体になることで、がぜん輝きを増すのです。

豊島の風景09

お隣の島とはいえ、直島と豊島はまったくの別世界であり、「島ごとに固有の魅力があることが瀬戸内の素晴らしさだなぁ」と、瀬戸内の奥深さを改めて実感する小旅行となりました。

おわりに、全12回にわたって直島や瀬戸内について綴ってきた本連載ですが、今回で一旦終了となります。読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。また別の記事でお目にかかりましょう。

【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第1回:新生活は突然に~

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第2回:島の風景は毎日違う

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第3回:直島に住んで驚いたこと

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第4回:「精錬の島」としての知られざる顔

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第5回:限られた選択肢のなかで「幸せ」を見つけるということ

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第6回:自分で自分の可能性を狭めてるかも

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第7回:離島の「物価」に衝撃

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第8回:フェリーに乗って買い出し

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第9回:島に住んで変わったこと

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第10回:離島生活でいちばん困ること

>>【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第11回:直島のとある休日

春奈

Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。


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