「ほしいもの」が思い浮かばない
直島に引っ越してきてはや1年弱。これまで東京都心やドイツ南西部の田舎町など、いろんな場所に住んできましたが、離島生活ははじめての経験でした。直島に住んで「変わったな~」と思うことはたくさんありますが、特に顕著なのが「物欲がなくなった」ことです。
前回実家に帰省した際、誕生日が近かったので母に「誕生日プレゼントに何かほしいものない?」と聞かれたのですが、何も思い浮かばないのです。「はて、なんかあったっけ? スマホはこないだ買い替えたばっかりだし、アクセサリーは好きだけど、つけていく場所もそんなにないから、今あるもので十分だしなぁ」と、ほしいものを聞かれても「特にない」という状態になっていたのです。
季節ごとにちょこちょこ服を買い足したりはするものの、気づいてみれば、カメラやスマホ、パソコンなどの必需品以外、これといって「ほしいもの」はなくなっていました。
めったに1,000円以上のものを買うことがない離島生活
東京に住んでいたころは、日々新しい服やバッグなど、いろいろなものがほしくなり、クレジットカードの明細を見て毎月のように「こんなに使ったっけ!?」と驚いていたものでした。合計金額を見て「なにかの間違いではないか」と思うのに、ひとつひとつ中身を見ていくと間違いないというあの現象、経験がある人も多いのではないでしょうか。
ところが、直島に住んでからの出費は服や靴、バッグ、アクセサリーなどの服飾費というよりは、食費や旅費がメイン。完全にモノ消費からコト消費に移行しているのです。
考えてみれば、島内で遣うお金は日々の食料品やちょっとした日用品、外食費に加えて、電気代やガス代、インターネット代といったライフラインの費用程度。「そういえば直島で買うもので1,000円を超えるものってほとんどないよね」と、ふと気づいて改めて驚きました。
直島で1点あたり1,000円を超えるモノを買った記憶といえば、シャインマスカットくらい。夫に聞いても「箱入りのマスクとお酒」程度だそうです。
最低限の生活必需品以外のすべてのもの、ときに生活必需品ですらネット通販や島外に出かけたときに購入するので、島内での支出は非常に限られています。
今はネットでなんでも買える時代なので、ネットショッピングのやりすぎには要注意ですが、生活圏で消費の場がないとモノの誘惑が少ないので、自然と物欲が低下し、衝動買いも少なくなるのです。
ファッションのカジュアル化も進行
直島に住んで物欲がなくなったと同時に、ファッションもカジュアルになりました。東京に行くと「みんなおしゃれだなぁ」と思うのですが、銀座や表参道を歩くような気合いの入った格好だと、直島では「いかにも観光客」という感じになってしまいます。
「気合いが入りすぎているファッション」や「エレガントすぎるファッション」は、離島の風景には不似合い。むしろ、「頑張ってる感」のない抜け感のあるカジュアルな服装でいてこそ、島の風景や雰囲気になじみます。直島に引っ越してからは「スニーカーやフラットシューズに合わせても違和感がないこと」を基準に服を選ぶようになったので、手持ちの服のカジュアル化が進みました。
島では、都会だとちょっと物足りないように見えるかもしれない「なんの変哲もないファッション」がしっくりくるので、今は「ファッションを頑張らなくていいこと」に対して心地よさを感じています。
なじむファッションは土地ごとに変わってくる
直島に住むようになって、「住む場所によって、その土地になじむファッションというのは変わってくるんだなぁ」と実感。次に都会に引っ越したとき、「どんなファッションをすればいいかわからない」というファッション迷子状態にならないか、ちょっと心配です。
自分のファッションって、「自分の好みや価値観が形づくっているもの」と思いがちですが、実際には周囲の人々の感覚や土地の雰囲気など、環境に左右される要素が多分にあるのではないでしょうか。
[All photos by Haruna]
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Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。
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