季節外れの酷暑に耐えきれず、初夏の北海道・積丹へ
もうかれこれ2年半、仕事や旅行に出かける際はもっぱら車移動でした。運転は好きですし、元々荷物が多くなりがちな性分ゆえ苦痛ではありませんが、やはり遠出が恋しくなります。
そんな欲求を気候も後押しします。季節外れの猛暑に耐えられなくなった私は、驚くほど能動的に北の大地へ向かう算段をつけていました。普段の仕事もこれほどのモチベーションで挑めば、各所に迷惑をかけずに済むのですが……。
数日後、久しぶりとなる空港利用と所々で様変わりした搭乗手続きに戸惑いながら、「北海道の翼」に乗り込みます。機内に持ち込む手荷物には、コンパクトに収納できる釣り道具も完備。
本州とは異なる魚種が生息し、考えられないほど豊かな魚影を有する北の大地への遠征ですから、わずかでも竿を出す時間を作りたい。釣りへの傾倒が重篤化すると誰しもこうなりますから、趣味というのは恐ろしいものです。
ご当地グルメや土産物購入を楽しみ、積丹の海へ
北海道へ出向く最大の目的は「食の満喫」。豊穣な土地ゆえおいしいものは数えきれぬほどありますが、何度も訪れるうちにいわゆる「ご当地グルメ」と呼ばれるジャンルに心惹かれるようになりました。また晩酌が欠かせない左党でもあり、おいしいお酒にも目がありません。その場で飲めずとも、製造現場での直売には必ず立ち寄ってしまいます。
そんな欲求を満たすべく、新千歳空港で車を借りて余市方面を目指します。目指すのはニッカウヰスキーの「余市蒸留所」。所内の見学には事前予約が必要ですが、併設されたショップやレストランは立ち寄りが可能であり、周辺では人気の観光スポットとなっています。
1時間半ほどドライブを楽しみ、余市蒸留所に到着。山間に造られることが多い国内の蒸溜所にあって、緑豊かな広大な敷地にレンガや石造りの建物が並ぶ風景は実に新鮮です。
まずはレストラン「樽」に入り、鉄板の上にスパゲッティ、カツ、ミートソースの順に盛られた「ロースカツのミートソーススパゲッティ」を注文。
子供も大人も誰もが好きそうなこのワガママメニューは「スパカツ」という北海道釧路市のソウルフードをベースとしており、カツには余市産の豚肉が使われています。メニューには各種ハイボールも並んでいましたが、ここはノンアルコールビールでグッと我慢します。
住所:北海道余市郡余市町黒川町7-133
食後は隣接するショップを訪れ、ここでしか買えない限定酒を買い込みます。近年のウイスキーブームにより商品によって購入できる本数に制限がありますが、種類の豊富さに思わず目移りしてしまいます。
住所:北海道余市町黒川町7-133
結局、往復の航空機代と同程度の散財をしてしまいましたが、帰宅後に楽しむ晩酌を考えれば後日訪れる請求への不安は吹き飛んでしまいます。お酒は「嗜む」程度に留めておかないと誰しもこうなりますから、これまた恐ろしいものです。
閑散とした積丹の漁港で北の定番釣魚「ガヤ」と戯れる
懐は一気に寂しくなったものの、空腹とお土産への欲を満たすことができ、大満足で余市の街を後にします。ここからさらに海沿いを北上して積丹半島の先端部へ。主目的は夕陽見物ですが、それを待つ間に釣りも楽しもうという魂胆です。
小1時間のドライブの後、半島先端近くに位置する「日司漁港」に到着。閑散とした港内に車を止め、釣りの準備を開始します。初めて訪れる場所ですから何が釣れるのかは不明ですが、とりあえずは「ワーム」呼ばれるゴムのような軟質のルアーを泳がせてみることにします。
投げる向きとルアーを泳がせる水深を変えながら魚の反応を探っていきますが、思ったような反応が得られません。以前に道内の別の漁港で遊んだ際は、すぐに魚が掛かって入れ食いを楽しんだのですが……。
ルアーを変えながら探り歩き、港口まで来てしまいました。何か魚影は見えないかと海中を覗き込んでみると、小さいながらも群れが見えました。さっそくメバル用の小さなワームを落としてみると、群れのうちの数尾が近づいてきました。
ようやくの好反応を見てルアーをチョンチョンと踊らせます。するとそのうちの1尾が食いつきました。ルアーを加えていたのは当地で「ガヤ」と呼ばれるエゾメバル。手のひらサイズの小型ですが、うれしい釣果です。
その後もガヤはルアーを奪い合うように群がってきます。魚の反応が鈍くなったらルアーの形や色を変えてやると、再び食い気が上向いて動きが良くなりました。
期待していた夕陽は分厚い雲に阻まれて見られませんでしたが、主目的を忘れるくらいガヤとの戯れを楽しむことができました。
住所:北海道積丹郡積丹町大字日司町
[All photos by オオモトユウ]