大都会・東京のオアシス「明治神宮」
遠くに旅に出る気持ちになかなかなりません。とはいえストレスもため込みたくありませんね。そんな時こそ、身近な自然に触れてリフレッシュしませんか。明治神宮は大都会・東京のオアシス。この春には原宿駅舎も新しくなり、明治神宮に向かう出口も作られました。
明治神宮は明治天皇と昭憲皇太后をお祀りしています。面積は71万3,000㎡(22万坪)。毎年正月には300万人を超える初詣の参拝客でにぎわいます。しかしこの11月で創建されてちょうど100年だということはご存知でしょうか。
100年計画で森を作る
この明治神宮の杜は人工的に作られた森なのです。原宿駅から南参道の鳥居をくぐり抜けると、鬱蒼とした森が両側に広がっているのがわかります。しかし明治のころ、この地は陸軍の練兵場の一部で周囲は草地、樹木はほとんどない荒地でした。
南参道をまっすぐ歩いてゆくと、突き当りに100年ほど前の大きな古写真が掲げてあります。植樹が始まったころの明治神宮です。明治45年7月明治天皇が亡くなり、次いで大正3年4月に昭憲皇太后が亡くなった後の大正4年に神宮造営計画がスタート。同時に100年かけて神宮に鎮守の森を作ろうという計画も始まりました。「明治神宮御境内林苑計画」です。この時から全国各地から10万本もの樹木が寄せられ、のべ11万人もの若者たちが勤労奉仕に参加して森造りが行われました。
計画を立てたのは、日本の公園の父と呼ばれる東京帝国大学教授の本多清六博士と彼の弟子の本郷高徳、上原敬二の3名です。彼らが目指したのは、古来この地にあった常緑広葉樹の広がる森でした。原宿駅から専用の線路を神宮内に引き、最盛期には1日に30両の貨物列車が全国から樹木や資材を届けたといいます。
いっぽう明治神宮の南側に広がるのが「明治神宮御苑」。ここは江戸時代には加藤清正、のちに井伊家の下屋敷の庭園でした。明治には宮内省管轄の南豊島御料地となり、身体の弱かった昭憲皇太后のために、明治天皇が遊歩公園を整備されたといいます。明治神宮がこの地に建てられたのも、そうしたご縁があったからだそうです。初夏にはショウブ、夏場は南池のハスの花がきれいに咲き誇ります。
ここにもひとつ、パワースポットがあるのです。それが江戸時代の初めに加藤清正が掘ったと伝えられる名湧水「清正井(きよまさのいど)」。水温は年間を通じて15度前後、水量は毎分60ℓ。心を浄化し、邪気を払ってくれるといいます。ちなみにこの水は御苑の南池を潤し、やがて渋谷川に合流して東京湾に流れていきます。
本多博士ら3名の専門家は神宮の森が完成するのは150年後と考えたそうです。とはいえ西参道に近い通路の両側は鬱蒼とした木立が広がっています。いまでは直径1mを超える常緑広葉樹は250本近くあり、20mを超える樹木も数多くあります。また森の王者と呼ばれるオオタカが棲みついてヒナをかえしているともいいます。想定以上に早く神宮の森が完成したといえます。
代々木の名前はモミの木から
ところで、この明治神宮がある代々木という地名が1本のモミの木に由来することはご存知でしょうか。代々木の名前の由来は諸説ありますが、一説には境内に大きなモミの木が「代々」あったことから、「代々木」と呼ばれたといいます。場所は南参道から入って神橋を越え、酒樽が並んでいる手前の左手。案内板があります。
現在のモミの木は戦後の1952(昭和27)年に植樹されたもので、それほど巨大ではありませんが、先代のモミの木は幹回りが10.8mもあったそうで、推定で50mもの高さを誇った巨樹だったようです。
その巨樹に登れば江戸一円が見渡すことができたといい、幕末には東京湾にやってくる黒船の動きをここで見張ったともいわれています。しかし、先代の木は明治のころに枯れ始め、戦時中の空襲で焼失してしまいました。
2本の木が寄り添う夫婦楠
さて、肝心の夫婦楠は本殿のまえにあります。大きなクスノキは本殿の両脇にありますが、夫婦楠は本殿に向かって左手。よく見ると2本のクスノキが並んでいるのがわかります。
樹齢は100年ほど、幹回りは366cmと317cmで高さは17m。立派な巨木に育っています。離れてみると2本のクスノキの枝葉が同化して、均整の取れた1本の巨木に見えます。
ご祭神として祀られている明治天皇と昭憲皇太后が仲睦まじかったことから、この夫婦楠の御利益は「縁結び」と「夫婦円満」、そして「家内安全」なのだそうです。
この夫婦楠、明治神宮でもっとも知られたパワースポットなのです。本殿で参拝をした後、夫婦楠の前から拝殿に向かって参拝をするのが効果的だといいます。
大都会・東京のど真ん中で、これほど豊かな森に囲まれた場所はありません。原宿や渋谷にお出かけの際に立ち寄って森の空気を吸い、心身ともリフレッシュしてください。原宿駅徒歩1分なのですから。
[All Photos by Masato Abe]