日本百名山の阿蘇山 雄大な大自然を歩く
阿蘇山登山のアクセスは、車の場合は九州自動車道熊本ICからでも熊本空港からでも阿蘇山上(阿蘇山西駅)駐車場まで1時間ほどでしょうか。バスでも行くことができ、JR豊肥本線阿蘇駅から産交バスで阿蘇山西駅へ向かいます。所要時間は30分ほどで1日7便バスがあるそうです。
さかんに火山活動を続ける阿蘇山。広い意味では外輪山や火口原をも含めた呼び名ですが、阿蘇五岳を中心にした東西にのびる連山を呼ぶことも多いのです。上の写真は、左から杵島岳、烏帽子岳、中岳、高岳、そして根子岳の阿蘇五岳。現在活発な噴火活動をしているのは中岳の第一火口なのです。
今回の噴火で中岳第一火口や登山口だけでなく、阿蘇山上ターミナルに近づくこともできなくなりましたが、噴火前は火口の近くで見学ができるようになっていました。その近く、火口西から登山道が始まっています。
駐車場には噴火した時の避難シェルターもありました。頑丈に作られているシェルターで、それほど火山噴火はすさまじいのでしょうね。中岳第一火口からおよそ2kmの範囲では、噴火にともなって弾道を描いて飛散する大きな噴石や火砕流に十分警戒しなくてはなりません。
「阿蘇火山火口規制情報」http://www.aso.ne.jp/~volcano/
登山口から平坦な砂千里に木道が一直線に延びています。一直の木道は初めて体験します。ここは中岳火口の南東部に位置する古い火口跡で、植物がほとんどなく、荒々しい岩肌と火山灰で黒っぽい砂浜が広がります。まるで、どこか遠い星にでも来たような印象です。
途中に火山の注意を促す標識とともに登山地図がありました。この砂千里を回り込むように少しずつ登っていきます。
稜線に出るために急登を登る
目の前に大きな壁がやってきました。標高差は200mほどでしょうか。この急登を登って中岳への稜線に出るわけです。とはいえ「山登り」という感じの場所はここだけです。
急登の途中に振り返るとこんな具合。歩いてきた砂千里の向こうには烏帽子岳でしょうか、見えていますね。
急登を登ること30分ほどで、ようやく稜線にたどり着きました。標高1,400mは超えています。上の写真、最高地点の高岳、そしてその向こうに急峻な根子岳が見えています。
中岳から高岳へ 噴火口を臨む
中岳への稜線を歩いていると左下に噴煙を上げる中岳の第一火口がよく見えました。ここが10月20日に大きく噴火をしたわけですが、この第一火口を囲むように七つの火口跡があり、南北に(写真では左から右上に)人の耳に似た形で東西400m、南北1,100mにわたり広がっているといいます。
まずは1,506mの中岳の頂上に到着。西側すべてを見晴らす場所です。登山した後に噴煙を上げる中岳火口近くの見学広場に行ったのですが、火口の底までのぞき込むことはできません。中岳への稜線からの眺めのほうが良いだけに、もし噴火の現場に立ち会っていたらどれだけ恐ろしいことか。
阿蘇の最高峰 高岳へ
そして反対方向に目を向けると、なだらかな坂の向こうに高岳が見えています。この日は天気が下り坂で、東の方向から雲が近づいて時おり山頂部分が雲に隠れるようになってきました。早いうちに山頂に行きましょう。
そして最高峰1,592mの高岳に着きました!中岳からは15分ほど。登山口からだと2時間ほどの山歩きです。天気もなんとか持ちました。
ちなみに帰りの飛行機から阿蘇カルデラの全貌を撮影することができました。下の写真です。真ん中東西に阿蘇五岳と周囲に巨大なカルデラが見えます。
どのようにしてこのカルデラが作られたのかといいますと、9万年前に大規模な噴火で地下のマグマが大量に放出され、その影響で大陥没が起き巨大なカルデラが誕生。その後7万年前からの火山活動で阿蘇五岳の山々が形作られたそうです。ちなみに9万年前の大噴火による火山灰は、北海道東部でも厚さ10cm以上堆積したといいますから想像を絶します。
南阿蘇の白水温泉 竹の倉山荘
下山後に向かったのは阿蘇山の南側に位置する南阿蘇村。阿蘇パノラマラインの山道を下って20分ほどで白水温泉竹の倉山荘に到着です。
巨大なカルデラの中にあるわけですが、ここは現在の噴火とはまったく関係ありません。玄関先から屋根付きの通路が続いて、旅情気分を盛り上げてくれます。
古民家風の建物で、こちらが玄関ロビー。新しい建物ではありませんが、きれいに磨かれ清潔感がありました。スタッフのみなさんも笑顔で和みます。
客室は素朴なしつらいのせいでしょうか、なんだか田舎の親戚の家を訪ねたような気分です。
窓の外には南の外輪山が見えます。阿蘇山からふもとに下ってきた印象でしたが、南方の眼下には田園が広がり、そのまた向こうにまた外輪山の山なみがあるのが不思議な気分です。
絶品のかけ流し温泉
そしてベランダの横には客室露天風呂も備え付けられています。すべての客室が露天風呂付。こちらの宿はかけ流しですから、うれしいですね。南阿蘇村は「名水」と「名湯」の両方に恵まれたところのようです。
もちろん宿には大浴場と露天風呂があり、渡り廊下でつながっています。平日の昼間でも日帰り入浴客がやってくるところをみると、地元でも人気なのでしょうね。
大浴場は広々とした岩風呂。温泉は敷地内自噴泉から湧き出ているといい、泉質はナトリウム炭酸水素塩泉。大浴場には内湯、サウナ、水風呂がありました。お湯はそれほど熱くなく、長湯を楽しめます。
露天風呂も南に広がる外輪山や田園風景を眺めながら入浴できます。寝湯もあって、のんびりしました。夕食後にもう一度入浴。ひとり癒やされました。
阿蘇の郷土料理をいただきました
夕食は食事処でいただきました。会席コースか焼肉コースから選ぶのですが、今回は会席コースをお願いしていました。
配膳するスタッフの方は素朴であたたかいもてなしでした。会席コースは地元で獲れる野菜や川魚を使ったふるさとの味です。
お米は宿のご主人が自分の田んぼで作っているらしく、とうもろこしの炊き込みご飯は食卓で炊きあがります。お米がおいしかったです。しかも夜食におにぎりを握ってくれるというのです。が、もう満腹で遠慮しました。
朝食はバランスよくまとまっていました。熊本でも納豆を出してくれるのですね。朝は納豆があるとうれしいのです。ごちそうさまでした。
南阿蘇の湧水 白川水源
さて、宿の近くには阿蘇のおいしい水、白川水源があります。車で10分ほどの場所なので、帰り際に立ち寄りました。水が豊富なことに驚きです。
環境庁の「名水百選」に選ばれるほどの水源で、常温14度の水が毎分60トンも湧き出し、熊本市内を流れる白川の源となっているそうです。水源の水も自由に持ち帰ることができるとのこと。とはいえ、環境保全の協力金として高校生以上は100円支払います。
前々から阿蘇は訪ねたい場所でしたが、これまでも火山噴火での制限や地震、水害で大変な目に遭ってきました。今回は復興応援の気持ちを込めて訪ねたのです。阿蘇は登山だけではありませんので、みなさんも雄大な阿蘇を体感してみてください。
[All Photos by Masato Abe]