京都までのルートが決まり、いよいよ全線開通に向けて一歩を踏み出した北陸新幹線。2015年の開業から既に2年が経過し、沿線の富山も着実に発展を遂げています。
その富山駅近くに誕生した新名所が富山県美術館。2017年8月26日の本格開館に先駆けて、先の3月25日に一部開放されました。
富山県に暮らす筆者が早速足を運んでみましたので、富山の新しい観光拠点にもなる、楽しすぎる富山県美術館を紹介したいと思います。
金沢21世紀美術館以上!?
そもそも富山市は金沢市と違って、街の中心部に観光客を楽しませる場所が少ないという弱点が指摘されていました。
主要な観光地は立山黒部アルペンルートだったり、トロッコの黒部峡谷鉄道だったり、世界遺産の五箇山合掌造りだったり、氷見漁港のグルメだったり。
全てが県庁所在地である富山市から、遠い場所にあるのですね。
その富山市の弱点を大きく補う可能性も秘めた場所が、まさに富山県美術館になります。
お隣の石川県では金沢21世紀美術館が絶好調で、2015年は年間で237万2821人もの人を集めています。その日本を代表する美の拠点に勝るとも劣らない新名所が、同美術館になるのですね。
世界一美しいスタバの近所にできた美術館
富山県美術館の魅力はまず立地。北陸新幹線の富山駅北口から徒歩でも移動できる場所に、環水公園という美しい水辺の公園があります。
“世界一美しいスタバ”として有名なコンセプトストア、スターバックス環水公園店がある場所ですね。過去記事「月に32回通うマニアが教える!「世界一美しいスタバ」富山環水公園店の魅力」でも紹介しました。
緩やかな芝生の傾斜地に囲まれた公園の中央には、遊覧船やカヌー、水鳥が自由に水面をシェアできる広い船だまりがあります。
その船だまりは海へと続く運河に向けて、途中でL字のように大きく向きを変えているのですが、その水路の導線を丸ごと受け止めるような場所に、富山県美術館は建っています。
設計を担当した内藤廣さんも、環水公園を前庭にするような感覚で設計したのだとか。
公園に面した建物の一面を丸ごと直線に切り落とし、全面ガラス張りのデザインにしています。館内からは環水公園はもちろん、その向こう側にそびえる立山連峰の山並みまで、大パノラマで楽しめるデザインになっています。
富山県の西部には雨晴(あまはらし)と言って、富山湾越しに3,000m級の立山連峰を眺められる、世界的にもまれな景観を楽しめるスポットがあります。
富山県美術館は、環水公園という前庭を使ってその光景をぜいたくに再現しているようにも一瞬、思えました。
建物そのものがアートな美術館
残念ながら本格オープンをしていないため、ピカソ、ミロ、ウォーホール、棟方志功、草間彌生など、主に20世紀以降の芸術家の作品を中心とするコレクションは、まだ展示されていません。
がらんとした展示室がそのまま公開されているだけで、美術館としてある意味決定的に不完全な状態でのオープンとなっています。
ですが、作品展示の全くない美術館であっても、楽しめてしまうからまた不思議です。
そもそも地上3階、屋上庭園付きの同美術館は、「建物そのものがアートでなければいけない」という思想に基づき設計されているそう。
例えばほの暗い長廊下の向こう側には屋外広場の外光が見えて、その中央に巨大な白くまのオブジェが設置されていたり、階段や屋上への通路が迷路のように入り組んで設置されていたり。
建物を貸し切って、皆でかくれんぼをしたらすごく楽しいだろうとワクワクしてしまったほど、歩き回るだけで十分に楽しめる館内になっています。
屋上には子どもが主役の庭園もある
(C)プレスリリースより
現状で公開はされていませんが、屋上には夜10時まで開放されている芝生の庭園があり、子どもも大人も思い切り遊び回れるようになっています。
遠方から美術館を見ると、屋上には何やらカラフルで親日的な宇宙人にも見える遊具が、にょきにょきと突き立っています。
見方によっては、ガラスとアルミで統一された建物の外観を損ねているという意見もあるかもしれません。
ですが、この美術館のテーマとして、「アート」と「デザイン」と「子どもたち」というクリエイティビティに満ち溢れたモチーフを一堂に集めるという狙いもあるのだとか。
隣接した環水公園には、なるほど子どもも多く集まります。
公園内から子どもたちが美術館の屋上に「謎のにょきにょき」を見つけ、「何あれ? 行ってみたい」と目を輝かして親の袖を引く光景も思い浮かびます。
実際に中に入ってみれば、子どもが自由に楽しめるワークショップやマグネットによるウォールアートなどの仕掛けがいっぱい。素敵すぎる仕掛けの美術館ですね。
屋上庭園は美術館が休みの日もオープンしている
館内にはミュージアムショップ、カフェ『Swallow Cafe』、レストラン『日本橋たいめいけん 富山店』なども入居しています。
休館日は水曜日と祝日の翌日、さらに年末年始。屋上庭園は12月1日~3月15日と雪の降る冬季は閉鎖されますが、それ以外は美術館の休館日でもオープンしています。
今後のスケジュールとして、本格オープンの8月26日からは開館記念展の第1弾『生命と美の物語LIFE―楽園をもとめて』がスタートします。
その後は秋から年始にかけて第2弾、翌年の春には第3弾と記念展が続くそう。
目の前の環水公園内には、美術館に向かう道にアートワゴンが設置され、市民の手作りクラフトやアート作品が並ぶそうです。“世界一美しいスタバ”などと一緒に、環水公園全体を楽しみたいですね。
以上、新たにオープンした富山県美術館を紹介しましたが、いかがでしたか?
唯一の難点は、ちょっと駐車場が狭いかなという印象・・・。ざっと歩き回って数えてみましたが、公式の駐車場は96台分くらいしか用意されていないはず。
環水公園はこのところ地元の人に大人気で、周辺の無料駐車場が全く足りない状況になっています。その意味で電車で来た観光客こそ、徒歩で向かうと自動車を停める場所に困らずに済むかもしれませんね。
[アートとデザインをつなぐ、来夏開館の富山県美術館。永井一正氏デザインによるロゴマーク・ロゴタイプが決定!10/8(土)-9(日)にPRイベント「ART PICNIC!」開催。 – 有限会社エピファニーワークス ]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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