元気な菓子問屋がある地域は駄菓子屋が多い
駄菓子屋探訪を重ねていくと、そもそもの人口が多い地域以外にも「元気な菓子問屋がある地域は、街の規模に関係なく駄菓子屋が多く残っている」ということがわかってきました。新潟市は人口の多い街ですが、インターネットで調べた限り、「青山トーイ」という問屋さんが駄菓子屋を下支えしてくれているとのこと。電話で連絡して訪ねてみると小売りをしていない完全な問屋さんだったのですが、こちらの活動の旨を理解してくださり、卸先のお店を数店舗教えてくれました。
「にいつ0番線商店街」にある「にいつ駄菓子の駅」
その中のひとつが、今回訪ねた新潟市秋葉区にある「にいつ駄菓子の駅」。元々この地域は新津市という自治体で、新津駅がターミナル駅として周辺の発展を支えた歴史から、「鉄道の街」としてさまざまな地域活性活動を行っています。お店のある商店街の名前も「にいつ0番線商店街」という鉄道関連で、お店の名前も鉄道関連だったので、店内も駅をモチーフにした感じの造りなのかな?と想像しつつ向かいました。
細い路地状になった通路から建物に入ると、奥行きのある広いお店がありました。店内は観光地などで見かける昭和レトロモチーフの内装。それも、展示だけでなく実際にそのスペースを利用して飲食等ができたりと、実用性を兼ね備えた工夫がされていました。学校の教室を模したスペースは、そのまま授業ができそうなほどです。
懐かしさをコンセプトに作られた店
にいつ駄菓子の駅は正式には「にいつ駄菓子の駅+昭和のなつかし屋」という、懐かしさをコンセプトに作られた比較的新しい駄菓子屋さんです。元々昭和レトロモチーフの駄菓子屋で働いていた店主が、一念発起して独立したとのこと。柏崎市在住の看板屋さん、コレクターさんと組んで内装を作り込み、細部に至るまで素晴らしい仕上がりにすることができたそうです。
「ここは町工場が入っていた場所なので、すごく広いんです。なので家賃もそれなりにしちゃうんだけど、この大きさがあれば自分の理想の駄菓子屋が作れると思って、思い切って開業しました。駄菓子を売るだけだと難しいので、鉄板焼や飲み物を置く、地産地消のために野菜販売をする、イベントで店内のスペースを貸すなど、いろいろ組み合わせています。私はこの街で生まれ育ったので、地域社会に貢献しながら永く続けていきたいです」
レトロな空間の中で消費を楽しむ構成
チョークを売っていて子どもが自由に落書きできたり、一部のレトロインテリアは販売されているので、雑貨屋さんに来た気分で買い物したり、座敷でのんびり鉄板焼を食べたり。駄菓子や飲食物だけを買うのではなく、空間ごと提供され、その中で消費を楽しむ構成に、居心地が良すぎて思いっきり長居をしてしまいました。
薄利多売が前提の駄菓子業界。それをこの時代に、個人で大きなテナントを借りて運営するのはなかなか勇気のいる選択だと思います。それを決断できるキップの良さや地元愛のある店主に尊敬の念を抱いた駄菓子屋さんでした。
にいつ駄菓子の駅+昭和のなつかし屋
住所:新潟県新潟市秋葉区新津本町3-7-38
営業時間:10:00~19:00
定休日:毎月7の付く日(土曜・日曜日の場合は営業)
[All photos by Atsushi Miyanaga]
Atsushi Miyanaga
駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。
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