『持ち運べる仕事』があってよかった
直島に住むようになって、つくづく実感しているのが「フリーランスでよかった!」ということ。フリーランスライターとして活動している筆者は、パソコンとネット環境さえあれば、日本全国、もっと言えば世界中どこでも仕事ができるからです。
筆者は2021年の3月末に、夫の仕事の都合で直島に引っ越してきました。「パートナーの転勤で地方に引っ越し」という話はたまに聞きますが、直島は純粋な離島。ある程度の規模の地方都市ならまだ「転職」という選択肢もあるでしょうが、働き口が極端に限られる離島で「正社員として転職する」というのは現実味がありません。
長年直島に住み続ける前提であれば、時間をかけて職探しをしたり、自分でビジネスを始めたりというのも考えられますが、1~2年程度の期間限定の直島赴任のため、それも難しいのが現実……。
もしフリーランスとして働くことができていなければ、自分のキャリアは詰んでいたのではないかと想像してしまいます。
「自分のキャリアを諦めることなく充実した仕事が続けられているのは『持ち運べる仕事』があったおかげ」だと、離島に引っ越して、あらためてフリーランスという働き方に感謝する日々です。
「雇われる」という選択肢以外考えられなかった
会社員や公務員の経験しかない方にとっては、フリーランスなんて縁遠い話に感じられるかもしれません。今はフリーランス生活を謳歌している筆者も以前は今とはまったく違っていたのです。
会社員と公務員の両親のもとに生まれ、大学卒業後は大多数の同級生と同じように一般企業に就職して会社員になりました。「フリーランス」という働き方があることを知ってはいても「自分がフリーランスになる」だなんて、1ミリも考えたことはありませんでした。
「雇われる」以外の選択肢が一切なかった筆者に転機が訪れたのは社会人6年目のこと。日本で知り合ったドイツ人の夫と一緒に暮らすため、ドイツに移住することになったのです。
ドイツ移住となれば、それまでの仕事は続けられないため、ゼロベースで自分のキャリアを考え直す必要が出てきます。
「今までのキャリアの延長線上ではなく、いま純粋にやりたいことは何だろう?」 ― そう自問した答えが「ライター」でした。
気づいたらフリーランスに
こうして未経験、コネなしの状態からライターとしてのキャリアを歩み始めたものの、最初から「フリーランスになろう」と思っていたわけではありません。世の中のライターはほとんどがフリーランスなので、「ライターになったら結果的にフリーランスになっていた」というだけです。
筆者がフリーランスになったのは、言ってみれば『成り行き』なのですが、今ではこの成り行きは人生で最もハッピーな出来事のひとつだったと思っています。もともと「雇われる」以外の選択肢は考えられなかったのに、ライターになったおかげで時間や場所にとらわれずに働けるライフスタイルを実現できたわけですから。
筆者が『成り行き』でフリーランスになったように、フリーランスになるというのは実はそれほど難しいことでもなければ突拍子もないことでもありません。実際に経験してみたら、「やってみたらできてしまった」という感じです。
私たちは自分で自分の可能性を狭めている
ひょんなことからフリーランスのライターになって感じることは、「私たちがいかに自分で自分の可能性を狭めてしまっているか」ということです。
筆者の場合、ドイツ移住という大きな変化によって「ライター」というキャリアにチャレンジすることができ、結果的にフリーランスになったわけですが、ドイツ移住がなければ、「自分のキャリアはこれでいいのかな?」と悶々としながら会社員を続けていたかもしれません。
誤解のないように添えると、決して「会社員はダメでフリーランスがいい」と言いたいわけではありません。大事なのは「自分が本当にやりたいことができているか」「自分が本当にやりたいことができるよう行動しているか」ということです。
もし自分の心の奥底に「ノマドのように旅しながら働けたらな」という願望の芽があったとしても、多くの人は「そんなことで食べていけるわけがない」「そんなのはワガママな夢物語」と考え、心の声にフタをしてしまうのではないでしょうか。
本当はほかにやりたいことがあるのに、「自分にはそんなの縁がない」「私には無理」という思考から、本来あったはずの選択肢を無視してしまうのは、あまりにももったいないと思います。
私たちは、知らず知らずのうちにこうした『自分ブロック』で自身の可能性を狭めてしまっているのではないでしょうか。
心の声に耳を傾けると大きな変化が生まれるかも
人生において、心の声にフタをして、自分で自分の可能性を狭めてしまうことほどもったいないことはありません。
「こうしたい」「こうなりたい」という自分の心の声に耳を傾け、実現するために一歩を踏み出せば、意外とあっさり叶ってしまうかもしれないからです。
こう言いながら、筆者自身もまだまだ「世間の常識」や既成概念、思いこみにとらわれてしまっているなと感じることがあります。そんなときは1度立ち止まって、自分で自分の可能性を狭めてしまっていないか、振り返るようにしたいものです。
[All photos by Haruna]
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