『古事記』や『日本書紀』に記されている大神神社
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奈良県桜井市にある「大神神社(おおみわじんじゃ)」は、『古事記』や『日本書紀』の神話にもその起源が記されている日本最古の神社です。一般的な神社は本殿に向かってお祈りをするものですが、大神神社にはそもそもその本殿がありません。
大神神社は、神社に社殿が成立する以前から存在していた神社であり、原初の神祀りを体現する全国でも珍しい神社。ご神体は拝殿の奥にある三輪山で本殿ではなく、神様が鎮まる山に向かって祈りを捧げます。その参拝の様式は古来より変わらず、現在に至るまで脈々と受け継がれてきました。
森羅万象を司る国造りの神様
大神神社の三輪山に鎮まるご祭神は、国造りの神様「大物主大神(おおものぬしのおおかみ)」です。出雲の大国主神(おおくにぬしのかみ)が国造りを供にしてくれる者を求めたとき、海のかなたから大物主大神が姿を現し、国造りを手助けしたことが『古事記』と『日本書紀』に記されています。
その際、大物主大神は「私を三輪山に祭ってください」と大国主神に話したのだとか。のちに大国主神の分身として三輪山に祀られた大物主大神。その名にある「物」とは、すべての事物や現象の「もの」を指します。そして、「大いなる物の主」という名が示すとおり、すべての「もの」の上に君臨している偉大な神様として、古来より厚く信仰されてきました。
第10代・崇神天皇の時代には疫病を大物主大神が鎮めたという話も伝わっており、病気回復や厄除け、方位除けの神様としても敬われ、国家の守護神として敬われました。
平安時代には朝廷で大物主大神にまつわるお祭りが多く開催され、中世には全国に三輪流神道が広まりました。また、近世においては三輪山が幕府から格別の保護を受け、明治時代には神社の社格の最高位である官幣大社となりました。
縁結びのパワースポット!運命の赤い糸と夫婦岩
国造りの神様として、古代から人々を守り続けてきた大物主大神。そんな神様を祀る日本最古の神社・大神神社は、商売繁盛や金運、健康運、仕事運、恋愛運など、人の暮らしに関わることのほぼすべてにご利益をもたらしてくれるといわれる最強のパワースポットです。
実は縁結びの聖地としても知られ、あの「運命の赤い糸」のゆかりの地としても注目を浴びています。その元といわれているのが『古事記』に記されている大物主大神の恋物語です。
大物主大神と恋に落ちたのは、人間の女性・活玉依姫(いくたまよりひめ)。相手の素性を探るため、両親から着物に糸を取り付けておくように言われ、その糸をたどったところ三輪山に行き着き、相手が神様だったことに気づいたという話が残されています。
大神神社には夫婦のように仲睦まじく寄り添う2つの岩があり、大物主大神と活玉依姫の伝承にちなみ「夫婦岩」と呼ばれています。良縁や夫婦円満にご利益があるとされ、大神神社を参拝するときはぜひ立ち寄ってみたい場所です。神社では夫婦岩をデザインした「えんむすび守」もありますよ。
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