軽井沢から白く輝く浅間山を眺めながら
出掛けたのはちょうど1年前、コロナ禍の直前でした。標高1800mの万座温泉は車で行くことのできる国内最高所の秘湯です。公共交通では、JR吾妻線の万座鹿沢口駅から行くルートと軽井沢駅から行く2つの方法があります。今回は東京駅から長野新幹線に乗り軽井沢駅で下車、ホテルの送迎バスで現地に向かうことにしました。
軽井沢駅に到着したのはお昼前。まずは南口にある軽井沢プリンスのショッピングプラザを散策し、ランチをいただくことにしました。ちなみに、ここは有名ブランドのアウトレット、インテリア、雑貨、アウトドアなど約200もの多彩なショップがあるので、たっぷりと一日遊べますね。
たくさんのお店があって、どこで食べようかと迷ってしまうのですが、いただいたのはフードコートにある軽井沢フラットブレッズの、アボカドと海老のサンドイッチ。そしてクラムチャウダー。あの浅野屋と共同で開発した特製ブレッドに、新鮮野菜と厳選食材を贅沢に挟み込んだグルメサンドイッチといいます。
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢 プリンスショッピングプラザ フードコート内
電話:0267-41-2400
HP:https://www.four-seeds.co.jp/brand/fbz/
そして、駅の南口でホテルの送迎バスに乗り込みます。万座温泉まで直行で2時間ほどのバス旅。残念ながら、この冬の送迎バスは、コロナ禍の影響で春先まで中止となったとのことです。春以降は、通常に戻ると思われますので、ぜひご利用ください。
出発すると、やがてバスの左手に、真っ白な雪をかぶった浅間山が大きく見えてきます。雄々しくて美しい浅間。太陽の光に輝いて見えます。途中、万座鹿沢口駅にも立ち寄り、雪山の中を進みます。
標高1,800m、雪に包まれた万座温泉
山道を走ること2時間ほどで、万座温泉にやってきました。車窓からは、木立ちの向こうに万座スキー場のゲレンデが見え隠れしています。と同時に、硫黄の匂い。これは硫黄泉の匂いですね。万座温泉にやってきたという実感です。
万座温泉に着いても、バスはまだまだ山を登っていきます。今日の宿、ホテルジュラクは万座温泉の最も奥、一番高い場所にありました。
凍えるような寒さの中、暖房のきいたホテルに入るとホッとしますね。ロビーの天井は高く、窓も大きく開かれていて、万座温泉の全景が見渡せます。
万座温泉の開湯の歴史ははっきりとわからないのだそうです。古くは坂上田村麻呂が鬼退治をしたという伝説や、戦国時代、武士たちが湯治に訪れた記録が残っているそうです。
少なくとも江戸時代には秘湯の湯治場だったということです。とはいえ、標高1,800mの山あいですから秘湯中の秘湯で、たどり着くのも難渋したことでしょうね。
戦後になって西武グループがスキー場や温泉ホテルを開発し、交通の便が良くなってから注目されるようになりました。いまではジュラクやプリンスホテルなど、10軒近くの宿泊施設があるそうです。
ちょうど角部屋でしたので、窓が2つの方向に開いています。天気も良く雪が反射して明るい部屋です。窓からは雪煙とともに、もうもうと湯けむりを上げる噴気孔が目の前に見えます。そして、あたり一面に硫黄の匂いが充満していました。
それと客室内はけっこう暑いくらい。ひょっとしたら湯量たっぷりの温泉で全館セントラルヒーティングにしているのかもしれません。
雪を眺めながら至福の硫黄泉
さて、大浴場はそこそこの広さです。しかし、大きな窓越しに雪原が広がり、開放感はたっぷり。お湯の温度は40度ちょっとでしょうか。木枠のお風呂は落ち着くので、雪景色を眺めながらのんびりと浸かることができます。地球のエネルギーを充電させてもらっている気分になるのです。
泉質は硫化水素型の単純硫黄泉で源泉かけ流し。pHは3.19。乳白色のお風呂はいい気分です。pHが2.0ほどだと肌にピリピリ来ますが、このお湯は肌への刺激はありません。硫黄成分の含有量は日本一だそうです。
露天風呂は大浴場とつながっていました。外に出ると寒風が吹き粉雪が舞って無茶苦茶寒いのですが、お湯につかればもう大丈夫。気持ちいいこと。浴槽は左右に2つあって、すぐ脇には降り積もった雪が盛り上がっていました。
ちなみに硫黄泉は硫化水素の吸入などにより高血圧や動脈硬化の治療に効果があり、糖尿病に効果があるといわれています。硫化水素を長期的に吸入することで、高血圧の治療、予防効果が期待できるのだそうです。
日帰り入浴も可能で大人1,000円、小学生までは500円(タオル250円・貸しバスタオル300円)月曜から土曜は12:30~16:00、日曜は11:30~16:00に入浴できます。
地産地消のバイキングをいただきます
さあ夕食。食事処でのバイキングです。個人的には自分の好きなものを少しずつ選ぶことのできるバイキングがお気に入りなのです。
ちなみに現在では新型コロナ感染防止のために、万全の態勢で衛生対策をしているとのことでした。
幻の魚といわれる山女魚(ヤマメ)の塩焼きもいただきました。山女魚の養殖は今までは難しいとされてきましたが、群馬県嬬恋村では養殖に成功したのだそうです。
そして、上州豚のしゃぶしゃぶです。くせのないあっさりとした風味が評判のブランド豚ですね。そのほか、群馬県は地元で採れるキャベツやニンジンなど、野菜も甘くおいしいのです。ごちそうさまでした。
2日目が楽しい湯めぐり旅
翌日は鹿教湯温泉に向かいます。まずは軽井沢駅まで送迎バスで送っていただき、軽井沢から新幹線で上田駅へ。新幹線の乗車時間は、なんと20分足らず。アッという間なんです。
上田は情緒ある城下町ですね。NHK大河ドラマ「真田丸」にも登場した真田昌幸が戦国時代末期に築いた上田城が町のシンボル。駅の改札には真田氏の赤い甲冑が展示されていました。
旅は2泊3日がちょうどいいですね。特に2日目は丸一日のんびりできるのがうれしい。上田で時間があれば、上田城址公園も訪ねてみてはいかがでしょう。
さて、上田ではランチに何をいただこうかとちょっと考えましたが、やっぱり信州は蕎麦ですね。上田駅周辺にはお蕎麦屋さんがたくさんありますが、豪快な盛りで知られる刀屋さんで昼食をいただきました。これでもさるそば小、十分です。ちなみに小、中、普、大と4ランクありまして、中盛で2人前、大盛では1キロもあるそうで一見さんは遠慮してもらうのだとか。
住所:長野県上田市中央2-13-23(上田駅徒歩8分)
電話:0268-22-2948
そうそう、上田市も寒いことは寒いのですが、駅周辺では積雪がありません。しかも日照時間がけっこう長いんだそうです。晴れの日が多い土地ということですね。
さて、送迎バスに乗車するためにJR上田駅南口へ。温泉口と呼ばれています。上田市の南部は、別所温泉や鹿教湯温泉などたくさんの温泉地があるのです。ここで鹿教湯温泉斎藤ホテルの送迎バスが待っていてくれました。
歴史ある名湯・鹿教湯温泉へ
のどかな山あいを走って、40分ほどで鹿教湯温泉に到着。鹿教湯温泉は名前の通り、その昔、鹿が漁師に教えてくれたお湯という言い伝えが残されています。とはいえ、実は鹿に姿を変えていたのは文殊菩薩さまだといい、以来、高台にあるお堂に文殊菩薩を祀っているのだそうです。
文殊堂には行基が彫った文殊菩薩像が安置してあり「日本三大文殊」のひとつといいます。開湯は、はるか1200年前。長逗留をして湯治をする温泉地として歴史があります。今は山あいののどかな温泉街になりました。
異色の老舗温泉宿「斎藤ホテル」
昔ながらの温泉街にあって、今回宿泊した斎藤ホテルは異色の存在です。木造2階建ての古い旅館が並ぶ温泉地で、ドーンと10階建てのビルが建っているのです。
じつは創業400年という老舗の温泉旅館だったのですが、25年前に近所にあるリハビリテーション病院と連携をとってクアハウス(健康増進施設)へと姿を変えたのだそうです。新しい形の湯治を提案しています。
客室は和室のほかに、長期滞在できるように台所があり、IHクッキングヒーターに簡単な食器、そして食卓に椅子もあります。
さらに驚いたのは、この10階建ての建物のうち、実は奇数階は分譲マンションになっているのだそうです。住民は中高年の方が多く、お年寄りやリハビリをしている方が多いようでした。
25mの温泉プールも完備しています。ホテルに住む方も宿泊客も早朝から夜まで無料で利用できます。プールではリハビリも行われています。歩行の困難な方も水の中だと、楽に歩く訓練ができますね。
トレーニングルームも完備。ここでも無料と有料のリハビリが行われているようです。またランドリーコーナーや2階には広々とした書斎もあり、長期滞在にも対応しています。
そして温泉。窓が大きく外光が差し込んで明るい大浴場。お湯はPh8.08で、くせのない柔らかなお湯は弱アルカリ性の単純泉、無色透明です。それでも、ほんのわずか硫黄の匂いがあるような気がしました。
露天風呂は大浴場からつながっていて、広々とした庭に面しているので開放感があります。夜も入浴したのですが、写真のように庭の樹木がライトアップされており、幻想的な雰囲気に包まれていました。
評判の和洋中創作料理をお好みで
斎藤ホテルの食事はとてもおいしいと評判なのです。夕食・朝食は食事処でのビュッフェ。マンションに住んでいる方々も、湯治で訪れている方も食事は健康への第一歩。斎藤ホテルも温泉とともに、料理もこだわっていました。和食、洋食、そして中華の多彩な料理をそろえていました。
ちなみに現在、ビニール手袋と個人用トングで料理を取り分けるなど、しっかりと新型コロナ感染防止策を行っているとのことです。
お刺身もたくさんの種類が並んでいます。中高年の方が多いせいか、料理は和食の種類が多いようでしたが、それぞれ工夫を凝らし丁寧に作られています。本日のおススメは子羊のロースト。手の込んだ料理でした。また中華料理では薬膳の料理もあり、食材も調理も工夫している印象でした。
そしてデザート。イチ押しはアップルパイなのだそうです。ホテルの近所にカフェ工房も構え、信州特産のリンゴを使ったお土産アップルパイも提供しています。満腹満腹、ごちそうさまでした。
最後に追加をひとつ。実は個人的には客室に用意されていた温泉まんじゅうがとても気に入り、お土産に買って帰りました。皮も上品で、小豆の香りがしっかりした粒あん。雑味がなく、本当に絶品。地元の方以外にはあまり知られていないお店ですが、ぜひおすすめしたい温泉まんじゅうです。
住所:長野県上田市鹿教湯温泉1333-2
電話:0268-44-2420
[All Photos by Masato Abe]