埃及
「埃及」。イスラエル建国を批判して戦ったアラブ人の大国のひとつです。今まさに、この文章を打ちながら、この国名を平仮名で書いて変換キーを押すと「埃及」と出てくることから、本当にこのような漢字が当てられているとわかります。
恐らく、この字は単純な音写ではないです。「埃」の音読みは『漢字源』(学研プラス)で調べると「アイ」と書かれています。どう頑張っても、この音は国名とは結び付きません。なぜなら答えは「エジプト」だからです。
そう思って調べてみると、そもそもエジプトの国名の由来が東京都立図書館の情報に書かれていました。
<古王国の首都メンフィスの古代名「フゥト・カァ・プタハ(創造神プタハの居住地)」をギリシャ人がアイギュプトスと呼んだことによる。これがローマに伝えられエジプトに転訛した>(東京都立図書館の公式ホームページより引用)
東京都立図書館の情報ではありませんが、インターネット上には、この「アイギュプトス」を音写して「埃及」と書いたとの意見がいくつも見られました。この情報、ちょっと個人的には直感として疑わしいと思います。国名を漢字にする際、「象牙海岸」の例を見てもわかるように、音写だけが漢字表記の方法と限らないからです。
手元には、江戸時代の末期にエジプトを訪れた侍34人の旅行記の資料をまとめた鈴木明『維新前夜』(小学館)があります。この中ではエジプトが「阨日多」と書かれています。「阨」は「エ」と読みます。江戸時代の末期に実際に現地を訪れた人たちが「阨日多」と書いているのに、わざわざエジプトのもともとの呼び方である「アイギュプトス」を「埃及」と書き直す必要はないはず。
では「埃及」とは何なのかといえば、まさに文字どおり「埃(砂ぼこり)」が「及ぶ」国という意味なのではないかなと根拠なく思ってます。『維新前夜』に描かれた江戸時代の侍たちも、
<土の目が日本よりよほど細かいのだろう>
<風塵が巻き起こると、忽ち眼の前が見えなくなるまでに、細かい砂が吹き荒れ、顔中を覆っても、とても立ってはいられない>
(鈴木明『維新前夜』(小学館)より引用)
と感想を抱いたと記されています。実際にエジプトを訪れるとわかりますが、エジプトの砂じんは日本人のイメージする大粒の砂に加えて、粉のような砂も混じっています。まさに「ほこりのように細かい砂が(国中に)及ぶ」国と考えた方が正しいのではないか、そのように直感しました。
根拠はない話ですが、仮に漢字検定1級に挑戦していて国名の漢字が覚えられないと苦しんでいる人がいれば、このようなこじつけで覚えてしまったほうが記憶に定着しやすいかもしれませんね。
以上、「海外の国を漢字で表記するとどうなるのかクイズ」でした。全問正解した人は。今すぐ漢字検定を受験して、そのスキルを正式に評価してもらったほうがいいかもしれません。先ほども書いたとおり、上級になると国名・地名も出題されるみたいですから。
[参考]
※ エジプト・アラブ共和国 – 東京都立図書館
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