福島県の山あい 桧枝岐村の会津駒ケ岳
桧枝岐村はちょっと遠いのです。首都圏から公共交通機関で会津駒ケ岳へ向かうには、1日がかりとなります。
もっともポピュラーな行き方は、午前中に東武鉄道浅草駅や北千住駅から電車に乗って会津高原尾瀬口駅まで行き、そこから駒ケ岳登山口行のバスに乗るルートで、宿泊する必要があります。
ちなみに駒ケ岳登山口バス停から滝沢登山口までは徒歩で30分ほど。車で行けば、あっという間、登山口手前に無料の駐車場(約20台)があります。
登山口手前に地図が掲示されていました。山頂までは3時間半ほどです。
「駒ケ岳」という山の名前は全国各地にありますが、会津駒ケ岳の場合、雪解けの頃、まばらに残る雪の形が馬(駒)の形に似ていることから名付けられたという説と、山の形が疾走する馬(駒)に見立てられて名付けられたという説もあるそうです。
登山口から自然林をぐいぐいと高度を上げながら登っていきます。急登というほどではありませんが、楽な道ではありません。
途中にはブナ林が広がっているようです。ブナの木の葉は日差しを受けてキラキラ輝くので林が明るく見えますね。
1時間半ほどで水場の標識が出てきます。そのあたりまで来たら、傾斜は緩やかになっていきます。
幻想的な霧に包まれた山頂付近
ただ、この日は霧が発生していました。雨は降っていないのですが、高度を上げるにつれて霧(ガス)がだんだん濃くなっていきます。
湿原に張りめぐらされた木道に出てからはずっと霧に包まれて、どのあたりにいるのか目視ではわかりません。木道の一本道なので迷うことはありませんが、GPSで位置確認をしながら歩いて行きます。
水場から1時間半ほどで、霧の向こうに山小屋が見えてきました。天気が良ければ周囲は「アルプスの少女ハイジ」の舞台になりそうな、美しい草原らしいのですが・・・
山小屋、駒ノ小屋です。この場所からの眺望がとても素晴らしいといいます。ですが今日はあいにくの霧。
駒ノ小屋にはスタッフが常駐し宿泊することができます。小さな売店では水や軽食だけでなく、洒落たTシャツも販売していました。トイレもありますので、ご安心ください。
山頂はこの右手のようです。山頂をう回して、さらに先の中門岳に向かうルートの分岐点です。
駒ノ小屋から20分ほどで標高2,133mの山頂に到着!登山口からは3時間ちょっとでしょうか。頂上付近は笹などでまわりを囲まれているために眺望はきかないようです。
山頂からさらに進むと平坦な湿原地帯が現れます。湿原にはリンドウやチシマゼキショウなどの可憐な花が咲いています。そして目指すは標高2,060mの中門岳。
この湿原も晴れていれば遠くまで眺望できる、気持ちの良い散歩道なのでしょうね。尾瀬ヶ原でさえ標高は1,400mですから、さらに標高の高い場所に湿原が広がっているのです。
霧に包まれた湿原のなかに池塘や池が点在していました。そして45分ほど歩いた小さな池(池塘)のかたわらに中門岳の標識がありました。
雨が降っているわけではありません。ずっと霧に包まれた山歩き。幻想的な霧で、ここが標高2,000mの山の上とは思えません。不思議な感じです。
帰り道、下るにつれて霧が晴れてゆくなかで木道の補修が行われていました。古くなった木道は濡れると滑りやすくなり、今回も霧で何度も滑りました。最後にはすってんころりんと吹っ飛んでしまったくらいです。ケガもなく大丈夫でしたが。
秘湯 桧枝岐温泉「せせらぎの宿 尾瀬野」で癒やされる
下山してやってきたのは、桧枝岐温泉の「せせらぎの宿 尾瀬野」。実は登山口バス停からすぐのところにあるんです。
桧枝岐村は日本有数の豪雪地帯で、人口は500人ほどの小さな村。村の中心部でも上の写真のように、のどかな印象です。ですが面積はとても広くて会津駒ケ岳だけでなく、尾瀬や燧ケ岳など大自然が豊かなところでもあるんです。
さて、桧枝岐温泉の尾瀬野さん。小さな宿ですが、とても落ち着く宿なので、リピーターが多い様子ですね。食事とともに温泉、それも浴室がとても気持ちがいいのです。
ちなみに客室は8〜10畳ほどの、テレビとコンセントがあるだけの和室で、きれいにしています。料金は1万円もしないので、とてもリーズナブル。
「せせらぎの宿」という名前の通り、浴室の大きな窓から桧枝岐川の渓流や対岸の緑の樹木、そして陽の光が入り込んで開放感に満たされます。泉質はアルカリ性単純泉でサラッと軽い印象でした。ちなみに美肌を作ってくれるメタケイ酸が70mgほど。
桧枝岐の郷土料理がおいしい
食事は大広間でいただきます。天井の高い立派な大広間で、ゆったりといただくことができます。なんといっても桧枝岐村ならではの料理が魅力です。
上の写真は桧枝岐名物の「はっとう」。そば粉ともち米を良く練って伸ばし、ひし型に切ったものを茹でて、えごまやきな粉をまぶして食べます。
山菜や野菜のかき揚げもたいへん美味!そして蕎麦もまた桧枝岐の名物。「裁ち蕎麦」といいます。
地元で採れたそば粉は、つなぎを使わず、熱湯と水だけでこねて、うす~くのばしたものを何枚も重ねて包丁で切ります。その切り方が布を裁つ様と似ていることから、こう呼ばれるようになったそうです。
そして、さらに絶品なのが舞茸ご飯。舞茸は天然ものです。首都圏のスーパーで売っている舞茸とは全く違って、とても香りがいいのです。そして歯ごたえと甘味?でしょうか。しっかりと味があるのです。おかわりしたくなること、間違いありません。
そのほかにも絶品料理が続きます。地元で採れたきのこや山菜、お肉、そしてそばをつまんだ 「つめっこ」が入った味噌仕立てのお鍋で、桧枝岐の味を堪能しました。
遠い山あいの秘湯ですが、ほんとうにノンビリできて落ち着きます。そして野菜や山菜など郷土料理がとてもおいしいので、おすすめなのです。
[All Photos by Masato Abe]