友家ホテル 沼にハマりました
開湯から1300年という大湯温泉。いまごろは大雪に見舞われているかもしれません。その友家ホテルにすっかりハマってしまいました。今回の訪問は2度目。訪ねたのは雪が降り積もる直前の12月でした。
マイカーで行くなら関越道小出ICから20分ほど。東京からの公共交通機関だと、上越新幹線に乗り約1時間半で越後湯沢駅。上越線に乗り換えて40分ほどで小出駅。そして路線バスで30分ほど。大湯温泉は雪深いところですから、冬場は電車と路線バスが安心です。
宿の公式サイトで予約すると14時にチェックインすることができます。路線バスは午後に2便運行されていますが、そのチェックイン時間に合わせて到着するには12時20分発の路線バスに乗るのがおすすめです。
バスを降りて宿へのアプローチが期待感と不安感を高めます。ちょっとわびしい大湯温泉街の坂道を下ってゆくと古びた建物が見えてきます。初めて訪ねた時には不安な気持ちになりました。
車の場合、狭い下り坂と玄関前のスペースにご注意ください。駐車は宿のスタッフがやってくれるので安心できますよ。
ここが玄関。ですが、玄関からおそるおそる館内に入ってみると、そこにはレトロモダンの不思議な空間が広がるのです。
非日常空間を満喫できます
友家ホテルのうたい文句は「比類なき休日空間」。その言葉通り、筆者がこれまで経験したことがないような「遊び心」にあふれている印象です。
上の2枚は玄関を入ったロビーラウンジの写真。広々とした空間には、おしゃれな椅子やインテリアが絶妙に配置されていて、ゆったりと落ち着くのです。
またロビーラウンジに、レコードやCD、DVDもたくさん置かれていて、無料で借りて客室で自由に楽しむことができます。
またロビーでは、ジャズやヒップホップ、R&B(おそらくスカやレゲエ、ワールドミュージックも)などのお洒落な選曲のBGMが常に流されているのもポイントです。
もうひとつ、下のほうにも玄関とラウンジがあります。ここも落ち着きます。下のほう、と書きましたが、こちらが本館と呼ばれているようですね。最初にできた建物なのでしょう。
長い歴史の中で少しずつ増築して、建物が細長くなったようです。ただ下の玄関にフロントはありません。あくまでもフロントは上の別館と呼ばれる玄関ロビーになります。
館内は、どこを切り取っても異なる造り。それでいてお洒落。しつらいやオブジェ、インテリアの配置など、ひとつひとつ考えられていますね。
建物自体は古いのですが、その古さと斬新なリノベーションが不思議な雰囲気を作り出しているのです。
いったいこの宿のどこに個人的にハマってしまったのか、考えてみました。決して新しくはないのです。外観は古いままで中身が斬新。まずこれは驚きます。
そして巧みなインテリアやしつらい。これにはセンスを感じさせられます。広々としたロビーラウンジや湯上り処。館内どこにも同じものがないこと。その時々、その場その場で新しい発見があり、滞在中まったく飽きません。
以前訪ねたときに、どのようにしてこんな空間を作ったのか伺ったところ、「何十年もかけて時間をかけて少しずつコツコツとリノベーションしてきた」と仰っていました。たしかに時間がかかっている印象で、2〜3年くらいでは、こんな空間は作れそうもありません。
ただ残念ながら、この宿にエレベーターはありません。足の不自由な人はご留意ください。そうそう、それとホテル脇を流れる佐梨川の、時に轟音の流れが気になる人もいるかもしれません。個人的には自然の川の音は心地いいくらいなのですが。
さて今回はどんな客室か
そして客室です。客室もいつくかのバリエーションがあるようで、今回は和洋室をお願いしました。広々とした室内で22畳。布団を敷いて眠ります。以前宿泊した時にはベッドのあるタイプだったので変えてみたのです。
「次はどの部屋に泊まろうか」と楽しく考えられるのは、客室の雰囲気がそれぞれまったく異なるからなのです。
公式サイトによると、「ゆっくりできる広い部屋」、「2~4名で多彩な用途」、「こぢんまりと小さな部屋」、「おひとり様がのんびり」、「ベッドのある部屋」、「子どもや孫と一緒に」、「会談が少なくお風呂に近い和室」、「喫煙できる部屋」などと、要望に合わせて選びやすいように幅広いスタイルの客室が用意されています。
自社ブランドというわけではありませんが、お茶請けのクッキーだけでなく、石鹸や化粧水、レターセットなど、友家ホテルならではのギフトも作っているようです。
部屋には女性客もうれしいパウダールームがありました。今回はここに持ってきたノートパソコンを置いてみました。ちょうどピッタリサイズで、良い感じです。
4つの貸し切り温泉を楽しむ
大湯温泉はアルカリ性単純泉。源泉かけ流しのお湯で、友家ホテルでは4つある浴室は、すべて貸し切りの浴室です。中でも特筆すべきは、大きな浴槽がドーンとある「庭園風呂」。温泉がどんどん流れ出す大きなお風呂は気持ちいいこと。カランはたしか3つありました。家族でもカップルでも、ひとりでも楽しむことができます。
貸切りできる時間が決められていないのも温泉好きにはうれしいところです。とはいえ、ほかの方の入浴も考えて長湯は禁物ですが。
「庭園風呂」ほど広くはないですが、「竜神の湯」も楽しいお風呂です。龍神のように勢いよく流れる佐梨川の流れを窓の下に見ながら細長いお風呂に浸かります。こちらにもカランは3つ。
「龍神の湯」の隣には、「扇風呂」があります。こちらはカップル、またはひとりでゆっくり入浴したい人にピッタリ。
そして下のラウンジにあるのが「四角い風呂」。モダンな明るい雰囲気で、こちらも佐梨川を眺めながらカップルかひとりで楽しむことができます。
以前訪ねた時にはなかったのですが、客室のタブレットからお風呂の空き状況がわかり、予約できるようになっていました。空いているお風呂に予約を入れて5分以内にお風呂に向かいます。お風呂場の入り口では、そに備えられているタブレットの入浴ボタンを押して使用中であることを示します。赤く点滅するので、安心して貸切温泉を楽しむことができるのです。
湯上り処はワンダーランド
そして、庭園風呂の手前にある「湯上り処」ももうひとつのお楽しみ。その広いことには驚きます。おそらくかつては庭園風呂に並んで大きな浴場があったのでしょうね。男女別々の大浴場。そしてリノベーションするなかで、この場所を湯上がり処にしたように思えます。
頭上にはミラーボールが回転し、卓球台やビリヤード台、ピアノ、囲碁将棋、マッサージチェアも用意されていて、純文学や大衆小説、SF小説、そしてたくさんの漫画本も。『きのう何食べた』から『リボンの騎士』や『ゴルゴ13』などなど、驚くほどそろっています。
もちろん湯上り処なので、冷たいお茶と、アールグレイと煎茶のブレンド香茶が用意されていました。
ファミコンやスマートボール、インベーダーゲームなどの懐かしいものもあって、それらを眺めるだけでもわくわくさせられます。そしてよくもまあ、これだけのものモノを集めたものだと感心するのです。
けっして新しくはありませんし、綺麗に整頓されているわけでもありません。でも妙なミスマッチ感覚が楽しいのです。それだけに宿泊客も遊び心を持っていないと、こちらの宿は楽しめないかもしれませんね。
手作りの絶品料理をいただく
食事はすべて客室でいただきます。まず前菜はタラの白子ポン酢、マッシュルームのサラダレモン和え、カキしぐれ煮、エノキとちりめんの和え物、玉子焼き、そして牛乳を葛で固めた峰岡豆腐。「出汁(だし)」にこだわっているといい、それぞれの味わいが絶妙なのです。
続いて定番というハマグリの鍋、そして下の写真、新潟名物の絶品ぜんまいの煮物。新鮮な素材が使われているのがわかりますし、出汁の味付けも見栄えも際立っています。ヘルシーでとても美味。
さらにマグロとヒラメのお造り、イワナの塩焼きに、下の写真はスペインの栗豚のステーキ。これもなかなかの美味でした。
〆は、なんといっても魚沼産の特Aというコシヒカリのご飯に味噌汁と漬物。ふっくらと炊かれたご飯が光輝いていました。特別豪華な料理が供されるわけではありません。でも、とても見立てや味にこだわっているのがわかります。
じつは朝食も大満足なのです。塩鮭に玉子焼き、煮物にハムトマトのサラダ、味噌汁に漬物という献立ですが、すべて丁寧に作られているのがわかります。
友家ホテルさん、どうやらまだまだリノベーションの途上にある様子で、これからもどんどん進化していくような気がします。次回はどの部屋に泊まろうか、どんな変化が起きているのか、それが楽しみな宿なのです。
[All Photos by Masato Abe]