【離島暮らしのリアル】直島移住はじめて雑記~第5回:限られた選択肢のなかで「幸せ」を見つけるということ

Posted by: 春奈

掲載日: Feb 6th, 2022

「瀬戸内のアートの島」として知られる、香川県の直島。フリーランスライターの筆者は、夫の仕事の都合で思いがけず直島で暮らすことに。人気の観光地でもある離島での生活とは、いったいどのようなものなのでしょう。直島の魅力や離島ならではの苦労話など、住んでみたからこそわかった「離島生活のリアル」を連載形式で綴ります。5回目の今回は、限られた選択肢のなかで「幸せ」を見つけるということについて。

直島・宮浦の路地


 

都会と離島の決定的な違いは、圧倒的な「選択肢の差」

直島・宮浦港

直島に引っ越し、はじめて離島に住んでみてわかったことは、「人が生活する場」という意味では、東京も離島も本質的な違いはないけれど、そのあいだには圧倒的な「選択肢の差」が横たわっているということです。

都会に行けば、欲しいものはなんでも買えるし、カフェやレストランだって無数にあります。映画館やカラオケなど娯楽もたくさんありますし、駅に行って地下鉄に飛び乗ればどこへだって行けます。

ところが、離島ではそうはいきません。直島は観光地なので、小さな離島にしてはカフェやレストランの数は少なくないほうですが、本土に比べると選択肢は非常に限られています。

10年間東京で暮らしたこともある筆者ですが、「毎日違うお店でランチをする」だなんて、今となっては別世界の話のように感じられてしまいます……。

選択肢が極端に限られる離島の生活

直島の神社

直島には小さなスーパーとコンビニがあるので、「サバイバル」という意味で最低限の生活必需品をそろえることはできますが、食品にしても日用品にしても、ブランドや質にこだわって選ぶことはできません。

ドラッグストアもなければ書店もありませんし、ちょっとおしゃれな雑貨や洋服などが買えるお店もありません。総合病院もなければ、映画館やスポーツジムもありません。「普通の地方都市」にごく当たり前に存在するものが、ここにはないのです。

正直なところ、「ないもの」を数えるよりも「あるもの」を数えたほうがずっと早いのではないかと思うほど……。ただし、筆者がここで強調したいのは、「いかに離島の暮らしが不便か」ということではありません。

都会に比べて田舎の生活が不便なのは当たり前のこと。離島ともなればなおさらです。小さなスーパーやコンビニがあるという点で比較的恵まれているとはいえ、直島の暮らしで「ないもの」に目を向けてしまうとキリがありません。

限られた選択肢のなかでいかに幸せを見つけるか

地中美術館からの瀬戸内海

離島に住んで感じることは、選択肢が極端に限られる環境だからこそ、「ないもの」に目を向けるのではなく、「限られた選択肢のなかで、いかに幸せを見つけるか」が大事だということです。

第2回でお話したとおり、直島には日々移ろいゆくやさしい風景があります。自宅から歩いて3分ほどで海を眺めることができ、「同じ瞬間は2度とない」と感じさせられる美しい景色は、何度見ても静かな感動を与えてくれます。

そして直島には、人との「距離の近さ」があります。近所の郵便局に行ったら、窓口で「こんにちは~」と声をかけますし、住宅街で人とすれ違うときは、知らない人でも「こんにちは」とあいさつをします。こんなことは都会ではなかなか考えられないのではないでしょうか。

都会に比べると物質的には決して恵まれてはいませんが、こうした平和で穏やかな日常には、とてつもない安心感を覚えます。

幸福度を上げる近道は「日常のなかでちょっと違うことをする」

スパ―キーズコーヒー

とはいえ、離島ではどうしても行くところやできることが限られるので、日常生活がマンネリ化しがちなのも事実。ライターをしている筆者は、取材などで島外に旅行に出ることも多いのですが、その反面、島にいるときは家にこもって仕事をする生活になりがちです。

意識しないと同じ毎日の繰り返しになってしまうので、たまには1人で近くのカフェでモーニングやランチをしたり、あえて徒歩で美術館に行ってみたりと、「日常のなかでちょっと違うことをする」ことを意識しています。

すると「今日は○○した!」という満足感や達成感が生まれ、それ以外の時間はいつもどおり家で仕事をしていたとしても、充実感が格段にアップするのです。

平日の朝、カフェで1人モーニングをした日の満足感といったら……! それだけで、なんでもない1日が「特別な日」になったかのように感じられます。

必ずしも外に出なくても、「宅配食材で食べたことのないものを注文してみる」とか「はじめての塗り絵をやってみる」「YouTubeを見ながらダンスエクササイズにチャレンジする」など、どんなことでもいいと思います。大切なのは、いつもの日常にちょっとした「小さな変化」を起こすことなのです。

私たちはみんな限られた選択肢のなかで生きている

夕暮れの直島

考えてみれば、どんな大都会に住んでいたとしても、選べるものには限りがあります。選択肢がいくらたくさんあっても、時間にもお金にも限りがある以上、すべてのものを選ぶことはできないからです。

人との交流や外出を思う存分楽しむことができないコロナ禍でははなおさらですよね。どこに住んでいたとしても、私たちはみんな限られた選択肢のなかで毎日を送っているのです。

日常に閉塞感やマンネリ感を覚えてしまうと、つい「海外リゾートでのんびりしたい」といった大きな願望を抱いてしまいますが、自分の意思で今すぐ起こせるのは「小さな変化」。「今あるもの」「今できること」のなかに幸せを見つけることを意識して毎日を送ってみたら、平穏な日常にもっと感謝できるようになるかもしれません。

[All photos by Haruna]

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PROFILE

春奈

Haruna ライター

和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。

和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。

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