「押印」の意味
「押印」は「おういん」と読み、印判を押すという意味。もともとは「記名押印」という言葉でしたが、省略されて現在では「押印」だけになっています。
「記名」は名前を記すことですが、契約書などの法的な効力の観点からは、印刷された名前や、ゴム印、社印などを使って押された名前や、代筆された名前、自署以外で記載された名前、という定義になっています。
省略された「記名」のもつ意味から、「押印」は自署以外の方法で名前が記載されている場所か、あるいは名前の記載がない場所に印判を押すことを指します。
この欄に押印してください。氏名はすでに印刷されています。
「捺印」の意味
「捺印」は「なついん」と読み、「押印」と同じく、印判を押すという意味。もともとは「署名捺印」という言葉でしたが、省略されて現在では「捺印」だけになっています。
「署名」は本人によって書かれた、直筆のサインのこと。筆跡鑑定で本人ということが証明できるため、契約書などで高い証拠能力を発揮します。
省略された「署名」のもつ意味から、「捺印」は直筆のサインとともに印判を押すことを指します。
直筆の署名をして、この欄に捺印してください。
「押印」と「捺印」の使い分け方
「押印」と「捺印」の違いは、一緒に直筆のサインをするかどうか。直筆のサインがない場合は「押印」、有る場合は「捺印」を使います。
【クイズ】より適切なのはどっち?
【答え】
1→押印
2→捺印
1の正解は押印。「名前が印刷されている」とあり、直筆のサインではないので「押印」が適切です。
2の正解は捺印。「署名」は直筆のサインを意味するため、「捺印」が適切です。
国語講師。都内大学受験塾・カルチャースクールで講師を務める他、書籍執筆、講演、企業研修、三鷹古典サロン裕泉堂の運営などの活動に取り組んでいる。NHK Eテレ『知恵泉』、NHK‐FM『トーキングウィズ松尾堂』など、テレビ・ラジオにも出演。著書に『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)や、『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)など多数。