
歴史の教科書にも掲載!明治時代創業の神戸のコーヒー店
【放香堂珈琲の歩み(抜粋)】
1874年(明治7年):神戸元町商店街で宇治茶の小売り店を開店
1878年(明治11年):コーヒーの販売を開始
1882年(明治15年):店の様子を描く木版画『豪商神兵湊の魁』が発刊される
2016年(平成28年):東京書籍発行の中学校教科書『新しい社会 歴史』で紹介される

江戸時代末期の開港後から異国の文化や人が流れ込み、国際貿易港として大きく発展した神戸港。そこからほど近い異国情緒漂う神戸元町商店街には、創業100年を超える店舗が20店ほどあります。中でも「放香堂珈琲(コーヒー)」は日本で最古のコーヒー店として知られ、中学校の教科書にもそのことが記載されています。
今ではどこでも当たり前のように飲めるコーヒーですが、明治時代にはまだ一般に浸透しておらず、ハイカラで高級な飲み物でした。当時の人々にとってはその香りや色、味わいのすべてが珍しく、まさにコーヒーは西洋文化を象徴するものとして憧れの的だったことでしょう。
宇治茶とコーヒー、2つの看板を掲げた「放香堂」
日本で最古のコーヒー店、放香堂珈琲は、実は宇治茶と深い繋がりがあります。放香堂珈琲を始めたのは、宇治茶の里・京都府和束の茶農家でした。「放香堂」の屋号で松平家のお抱え商人として宇治茶の製造・卸業を行い、1874年(明治7年)、神戸元町商店街に宇治茶の小売り店を開店。やがてコーヒー豆の輸入も手がけるようになり、日本茶とコーヒーの両方を販売するようになりました。
そして、1878年(明治11年)12月26日の読売新聞に「焦製飲料コフィー店内にてお求め、或いは飲用自由」と掲載。現代でいうと「イートインもできるお店」ということを謳った広告であり、日本最古のコーヒー店だったことを示す貴重な資料となっています。
1882年(明治15年)には『豪商神兵湊の魁』という神戸商人たちを描いた木版画が発刊され、放香堂珈琲のお店のにぎわいが描かれました。店頭の看板には「加琲」と「宇治製銘茶」との文字が掲げられ、コーヒーと日本茶の両方を取り扱っていたことがわかります。
ちなみに、コーヒーを漢字で書くと「珈琲」となりますが、当時は「加琲」と書いていたのだとか。現在の放香堂珈琲も昔からの伝統をそのまま受け継ぎ、ロゴには「放香堂加琲」と記載しているそうですよ。
明治の味わいを再現!復刻「石臼挽きコーヒー」
放香堂珈琲では、明治時代の製法を再現したコーヒーを扱っています。放香堂珈琲の様子を写し取った木版画には「放香堂 加琲 印度産」とあり、当時にならって看板メニューのコーヒーにはインド産の豆を使用。
また、昔は今のようにコーヒーミルが流通していなかったこともあり、お椀型の臼や薬研を使ってコーヒー豆を挽いていたそうで、コーヒー豆専用石臼を開発し、オリジナルの「石臼挽きコーヒー」を販売しています。

石臼挽きは、電動ミルのように均一には挽けず、粗めと細かめの豆が混在するそうです。豆が不均一だからこそかなうオリジナルの味わいが特徴で、コクと苦味、さっぱり感が絶妙にブレンドされた香り豊かなコーヒーが楽しめます。
道具や資料が十分にそろわなかった時代に、もともとが宇治茶の生産農家だったということもあり、抹茶の製法をコーヒーにも応用したのでしょう。何とかしておいしいコーヒーを提供しようと試行錯誤した先人のパイオニア精神も感じます。

昔の製法にならった「石臼挽きコーヒー」は、お店のほか、オンラインストアでも販売を行っています。目を閉じて復刻コーヒーの香りと味わいに浸れば、およそ150年前の日本最古のコーヒー店への時間旅行も楽しめそうですね。
[Photos by Shutterstock.com]

あなたが知りたかったことが、この記事で参考になりましたか?
内野 チエ ライター
Webコンテンツ制作会社を経て、フリーに。20歳で第1子を出産後、母・妻・会社員・学生の4役をこなしながら大学を卒業、子どもが好きすぎて保育士と幼稚園教諭の資格を取得、など、いろいろ同時進行するのが得意。教育、子育て、ライフスタイル、ビジネス、旅行など、ジャンルを問わず執筆中。特技はワラビ料理と燻製作り。
【実は日本が世界一】サッカーコートより長い!149.992mの「うんてい
Mar 15th, 2023 | 坂本正敬
日本にいながら、意外と知らない日本の「世界一」。いつも何気なく目にしているものから、知られざる自然の世界、そして努力や技術の賜物まで、日本には世界に誇れる「世界No.1」がたくさんあるんです。そんな「実は日本が世界一」、今回は、神戸にある世界一の遊具を紹介します。
【日本三大和牛】「松阪牛」と「神戸ビーフ」もうひとつは?
Mar 3rd, 2023 | あやみ
世界から注目される日本の和牛。濃厚飼料を多く与え、長期間肥育した牛のことを「銘柄牛(めいがらぎゅう)」といいます。その中でも、優れた肉質で「日本三大和牛」と呼ばれているのは、「松阪牛」と「神戸ビーフ」、もうひとつは何でしょうか? それぞれの歴史のほか、飼育方法や肉質などを紹介します。
日本で一番神社が多い県はどこ?1位は京都ではない!?【都道府県ランキング
Dec 30th, 2022 | TABIZINE編集部
日本固有の神々を祀る神社。初詣をはじめとしてさまざまな機会に参拝することが多いですよね。日本各地にある神社は、全部で約80,000ほどですが、神社が一番多い都道府県はどこだか知っていますか? 神社といえば古都・京都を思い浮かべますが、京都は何位にランクインしているのでしょうか? 神社の多い県ランキングを発表します。
【日本三大温泉】群馬県「草津」・岐阜県「下呂」・兵庫県「有馬」の歴史と特
Dec 16th, 2022 | あやみ
日頃の疲れを癒やしてリフレッシュできる温泉は、日本人の生活に欠かせない存在ですよね。日本には火山が多く、地下水が豊富なため、全国各地に温泉地が点在しています。その中で、「日本三大温泉」といわれているのはどこだと思いますか? 3つの温泉地の歴史や泉質、魅力を紹介します。
【実は日本が世界一】「世界最小の恐竜の卵」はウズラの卵くらいの大きさ
Sep 21st, 2022 | 坂本正敬
日本が誇る意外な世界一を紹介するTABIZINEの連載。今回は、旅のプログラムとしても人気の「恐竜」に関する世界一です。
【日本三大夜景】函館・神戸・長崎の見どころ&アクセス方法は?
Sep 16th, 2022 | 内野 チエ
夜空の下に街々の灯りがきらめく夜景は、はっと目を見張るほどの美しさがあります。夜景が見られるスポットは日本全国にありますが、その中でもぜひ訪れてみたいのが「日本三大夜景」に選ばれているスポットです。各所の見どころやアクセス方法をまとめて紹介します!
【日本最古を探せ】時と宇宙の関係を解き明かすプラネタリウム「明石市立天文
Sep 3rd, 2022 | 内野 チエ
「日本最古」のスポットは史跡・名勝だけでなく、日常の意外なところにも潜んでいるものです。ホテルや遊園地、喫茶店など、数百年の時を重ねながら現在まで脈々と続く、歴史ある場所やコト、モノを発掘してみました。今回は日本最古のプラネタリウム「明石市立天文科学館」を紹介します。
続々誕生している車中泊場所「RVパーク」ってどこにあるの?6・7月新規オ
Aug 20th, 2022 | Mayumi.W
車の中で寝泊まりをする車中泊。安く自由に旅ができて気軽とも思える車中泊ですが、日本ではまだなかなか浸透しているとは言えません。そんな中、安心して車中泊を楽しめる場所「RVパーク」が続々誕生しています。今回は、全国に広がりつつある車中泊スポット「RVパーク」をご紹介。「RVパーク」を知れば、旅の選択肢がもっと広がるかも!
【日本最古を探せ】宇治茶の老舗が始めた「放香堂珈琲」は石臼で豆を挽く!?
Apr 17th, 2022 | 内野 チエ
「日本最古」のスポットは史跡・名勝だけでなく、日常の意外なところにも潜んでいるものです。ホテルや遊園地、喫茶店など、数百年の時を重ねながら現在まで脈々と続く、歴史ある場所やコト、モノを発掘してみました。今回は日本最古のコーヒー店「放香堂珈琲」を紹介します。
【日本最古を探せ】異国情緒あふれる街の心を支える「神戸ムスリムモスク」
Feb 20th, 2022 | 内野 チエ
「日本最古」のスポットは史跡・名勝だけでなく、日常の意外なところにも潜んでいるものです。ホテルや遊園地、喫茶店など、数百年の時を重ねながら現在まで脈々と続く、歴史ある場所を発掘してみました。今回は昭和初期に建てられた、日本で最初のモスク「神戸ムスリムモスク」を紹介します。