【日本最古を探せ】宇治茶の老舗が始めた「放香堂珈琲」は石臼で豆を挽く!?

Posted by: 内野 チエ

掲載日: Apr 17th, 2022

「日本最古」のスポットは史跡・名勝だけでなく、日常の意外なところにも潜んでいるものです。ホテルや遊園地、喫茶店など、数百年の時を重ねながら現在まで脈々と続く、歴史ある場所やコト、モノを発掘してみました。今回は日本最古のコーヒー店「放香堂珈琲」を紹介します。

コーヒー


 

歴史の教科書にも掲載!明治時代創業の神戸のコーヒー店

【放香堂珈琲の歩み(抜粋)】

  • 1874年(明治7年):神戸元町商店街で宇治茶の小売り店を開店
  • 1878年(明治11年):コーヒーの販売を開始
  • 1882年(明治15年):店の様子を描く木版画『豪商神兵湊の魁』が発刊される
  • 2016年(平成28年):東京書籍発行の中学校教科書『新しい社会 歴史』で紹介される
  • コーヒー豆

    江戸時代末期の開港後から異国の文化や人が流れ込み、国際貿易港として大きく発展した神戸港。そこからほど近い異国情緒漂う神戸元町商店街には、創業100年を超える店舗が20店ほどあります。中でも「放香堂珈琲(コーヒー)」は日本で最古のコーヒー店として知られ、中学校の教科書にもそのことが記載されています。

    今ではどこでも当たり前のように飲めるコーヒーですが、明治時代にはまだ一般に浸透しておらず、ハイカラで高級な飲み物でした。当時の人々にとってはその香りや色、味わいのすべてが珍しく、まさにコーヒーは西洋文化を象徴するものとして憧れの的だったことでしょう。

    宇治茶とコーヒー、2つの看板を掲げた「放香堂」

    日本で最古のコーヒー店、放香堂珈琲は、実は宇治茶と深い繋がりがあります。放香堂珈琲を始めたのは、宇治茶の里・京都府和束の茶農家でした。「放香堂」の屋号で松平家のお抱え商人として宇治茶の製造・卸業を行い、1874年(明治7年)、神戸元町商店街に宇治茶の小売り店を開店。やがてコーヒー豆の輸入も手がけるようになり、日本茶とコーヒーの両方を販売するようになりました。

    そして、1878年(明治11年)12月26日の読売新聞に「焦製飲料コフィー店内にてお求め、或いは飲用自由」と掲載。現代でいうと「イートインもできるお店」ということを謳った広告であり、日本最古のコーヒー店だったことを示す貴重な資料となっています。

    1882年(明治15年)には『豪商神兵湊の魁』という神戸商人たちを描いた木版画が発刊され、放香堂珈琲のお店のにぎわいが描かれました。店頭の看板には「加琲」と「宇治製銘茶」との文字が掲げられ、コーヒーと日本茶の両方を取り扱っていたことがわかります

    ちなみに、コーヒーを漢字で書くと「珈琲」となりますが、当時は「加琲」と書いていたのだとか。現在の放香堂珈琲も昔からの伝統をそのまま受け継ぎ、ロゴには「放香堂加琲」と記載しているそうですよ。

    明治の味わいを再現!復刻「石臼挽きコーヒー」

    放香堂珈琲では、明治時代の製法を再現したコーヒーを扱っています。放香堂珈琲の様子を写し取った木版画には「放香堂 加琲 印度産」とあり、当時にならって看板メニューのコーヒーにはインド産の豆を使用。

    また、昔は今のようにコーヒーミルが流通していなかったこともあり、お椀型の臼や薬研を使ってコーヒー豆を挽いていたそうで、コーヒー豆専用石臼を開発し、オリジナルの「石臼挽きコーヒー」を販売しています。

    コーヒーの抽出

    石臼挽きは、電動ミルのように均一には挽けず、粗めと細かめの豆が混在するそうです。豆が不均一だからこそかなうオリジナルの味わいが特徴で、コクと苦味、さっぱり感が絶妙にブレンドされた香り豊かなコーヒーが楽しめます。

    道具や資料が十分にそろわなかった時代に、もともとが宇治茶の生産農家だったということもあり、抹茶の製法をコーヒーにも応用したのでしょう。何とかしておいしいコーヒーを提供しようと試行錯誤した先人のパイオニア精神も感じます。

    コーヒーのイメージ

    昔の製法にならった「石臼挽きコーヒー」は、お店のほか、オンラインストアでも販売を行っています。目を閉じて復刻コーヒーの香りと味わいに浸れば、およそ150年前の日本最古のコーヒー店への時間旅行も楽しめそうですね。

    放香堂珈琲
    住所:兵庫県神戸市中央区元町通3-10-6
    電話番号:078-321-5454
    営業時間:9:00~21:30
    定休日:水曜日
    公式サイト:http://www.hokodocoffee.com/

    [Photos by Shutterstock.com]

    PROFILE

    内野 チエ

    内野 チエ ライター

    Webコンテンツ制作会社を経て、フリーに。20歳で第1子を出産後、母・妻・会社員・学生の4役をこなしながら大学を卒業、子どもが好きすぎて保育士と幼稚園教諭の資格を取得、など、いろいろ同時進行するのが得意。教育、子育て、ライフスタイル、ビジネス、旅行など、ジャンルを問わず執筆中。特技はワラビ料理と燻製作り。

    Webコンテンツ制作会社を経て、フリーに。20歳で第1子を出産後、母・妻・会社員・学生の4役をこなしながら大学を卒業、子どもが好きすぎて保育士と幼稚園教諭の資格を取得、など、いろいろ同時進行するのが得意。教育、子育て、ライフスタイル、ビジネス、旅行など、ジャンルを問わず執筆中。特技はワラビ料理と燻製作り。

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