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1300年以上の歴史がある世界最古の温泉宿
山梨県の早川町にある西山温泉は、南アルプスを源流とする早川渓谷のそばにある温泉郷です。
早川町は日本でもっとも人口の少ない町であり、南アルプスの山の谷間に位置する西山温泉へ通じる道は早川沿いの県道・南アルプス公園線のみ。深い緑に囲まれた温泉郷は、まさに「秘湯」という呼び名がぴったりです。
そんな西山温泉にあるのが、日本最古の温泉宿「慶雲館」です。その歴史は1300年余りと古く、日本国内のみならず、世界でもっとも古い歴史を持つ宿として、2011年に「ギネスワールドレコーズ」にも認定されました。
武田信玄や徳川家康も利用した秘湯
甲斐の秘湯・西山温泉の慶雲館の歴史は古く、およそ今から1300年以上も前。その始まりは、西暦705年まで遡ります。
時は飛鳥時代。文武天皇が即位し元号が「慶雲」と定められた翌年の慶雲2年(705年)に、藤原真人が開湯したと伝わっています。実はこの藤原真人という人物は、大化の改新で中大兄皇子(後の天智天皇)とともに活躍した藤原鎌足(中臣鎌足)の長男でした。
学僧として唐に渡り、その後、定恵という名で出家した藤原真人は、流浪の末にこの地に定住することになり、ある日、湯川のほとりで熱湯が噴出しているのを見つけたのだそう。当時は医薬品などのなかった時代。温泉は貴重な治癒の手段であり、それ以来、病気に苦しむ多くの人が西山温泉に湯治に訪れるようになり、慶雲館の発祥になったということです。
758年(天平宝字2年)には第46代・孝謙天皇が湯治に利用し、20日余りで全快したという伝説も残されています。また、武田信玄や徳川家康といった名だたる武将たちも訪れたという話が伝わっています。
1300年以上もの長い時の中で、多くの歴史上の人物が入湯したという慶雲館の温泉。これまで一度も枯れることなく、今もなお、そのお湯はこんこんと湧き続けています。
渓流の絶景に包まれ源泉かけ流しの贅沢なお湯を
慶雲館では自然に湧き出る源泉を4本持ち、各客室のお風呂や給湯、シャワーに至るまですべて加温・加水なしの全館源泉かけ流しの温泉が楽しめます。泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性アルカリ性高温泉)で、お湯は無色透明。かすかに温泉特有の香りがあり、胃腸病や筋肉痛、便秘、美肌に効能があるとされています。
館内には趣の異なる大浴場が6つあり、どの浴槽からも、宿を取り囲むダイナミックな自然との調和が楽しめます。また、客室は日本の伝統を感じられる意匠が凝らされ、全室源泉かけ流しのお風呂付きという贅沢さ。
耳を澄ませば、すぐそばを流れる早川の水のせせらぎが聞こえ、風に乗って届く森の香りに身体の奥から癒やされそう。夜には満点の星が夜空を彩り、極上のひとときが過ごせます。大自然の恵みに包まれて日本最古のお湯に身体をゆっくりと伸ばせば、日常の疲れも吹き飛びそうですね。