懐かしい感じのする「昔ながらの駄菓子屋」
新潟市秋葉区にある「にいつ駄菓子の駅」に続き、卸問屋の青山トーイさんに取引相手のお店を紹介していただきました。新潟市の中心部から新潟空港の方に向かうと、空港の敷地(滑走路)にちょうど差し掛かる辺りにプール、海水浴場を含めた大きな施設「山の下海浜公園」があり、周辺は区画が整理された街が広がっています。そして、その街にひっそりと佇む駄菓子屋がありました。
看板がなく、街に完全に溶け込んでいて目立つ感じはしないのですが、目の前は公園という駄菓子屋的にはかなりの好立地。訪ねたのは日暮れの後で周囲はとても静かでしたが、日中はかなり賑わうのではないでしょうか。
ドアを開けて店内に入ると、特徴的なチャイム(ピンポン音)が鳴ります。店内は年季の入った什器に駄菓子と文房具が並び、初めて来たのにどこか懐かしい感じのする「昔ながらの駄菓子屋」そのもの。早速買い物をしていると、文房具がなんと1980年代後半から90年代前半のもの中心!懐かしい感じではなく、単純に懐かしいものがそのまま販売されていました。
酒井商店は、元々住んでいた地域が昭和39年の新潟地震で被災してしまい、翌年この場所に転居して開いたお店だそうです。先代である現店主のお母さんが運営していた頃からほぼ専業の駄菓子屋で、学校で必要になる文房具も置くようになると「なんかや」(※よろず屋的な意味だそうです)と呼ばれるようになり現在に至るとのこと。陳列用の物干し竿、ドアチャイム、ドアに取り付けられた瓶ジュース用の栓抜きなどの特徴的な店の設備は、便利なので先代の時代からずっとそのままなんだそうです。
駄菓子屋やるなんて全く思ってなかった
「元々子どもってそんなに好きじゃなかったんです(笑)。だから自分が駄菓子屋やるようになるなんて全く思ってなかった。いろんなことが重なって偶然今に至ってますけど、始めてから子どもの面白さにたくさん気が付いて。うちは娘しかいないから、特に男の子が面白いのよね、なんか男の子って年齢より子どもっぽいでしょう?そして、何歳になっても『おばちゃん元気?』ってまた来てくれる。子どもってかわいいなと思えるようになったことで、価値観が全然変わっちゃったなあ」
先代が病気になりお店を開けられなくなって閉業しようかという時、ちょうど小学校の遠足があって、おやつを買いたい子どもたちのために2日間だけ現店主が代打で開けたそうです。その後、常連の子どもたちから「毎日開けてほしい」という熱い要望が続いたり、近所の人が手伝いに来てくれたり、ちょうど勤めていた会社を退職したりと、さまざまな偶然や想いが重なって現在も続いているというお店でした。
なにかひとつでもズレがあったら一生すれ違うことすらなかっただろう、と思うと、旅先での一期一会の奥深さを感じずにはいられません。
住所:新潟県新潟市東区船江町1-16-14
営業時間:13:00~18:00
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]