【実は日本が世界一】透明度41.6m!摩周湖の昭和初期の記録は今も1位

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Jan 19th, 2022

北海道東部にある摩周湖は、阿寒国立公園の一部で「霧の摩周湖」と呼ばれています。筆者の母も若いころに訪れて霧の晴れた摩周湖を展望台から夏に眺め、同行のガイドさんに「ラッキーですよ」と言われたそうです。そんな摩周湖、ある分野で世界記録を保持しているとご存じですか? それは水の透明度。「摩周湖は世界第2位じゃないの?」と思った人はかなりの通かも。しかし摩周湖でかつて観測された透明度の記録は、その後も破られていない世界一なのです。

北海道摩周湖1


 

透明度が高い湖

北海道摩周湖2
摩周湖はどこにあるのか、整理しておきましょう。北海道を想像してください。国立公園にして世界遺産の知床半島が東側に突き出しています。その知床の根元が根室と網走で、根室に隣接して釧路湿原のある釧路が続きます。釧路湿原も国立公園だと考えると、この辺りは国立公園だらけですね。その釧路の北部に冒頭の阿寒国立公園があり、西から阿寒湖・屈斜路湖・摩周湖があります。今回のテーマは摩周湖です。

岩波書店『広辞苑』を調べると、

<透明度が高いことで有名>(『広辞苑』より引用)

と書かれています。その透明度はもちろん日本一で、ここ3年の透明度を一覧にすると次のようになります。

  • 2021年8月(令和3年)・・・25.8m
  • 2020年8月(令和2年)・・・21.1m
  • 2019年9月(令和元年)・・・18.5m

20mといえば、台座を含めた奈良の大仏の18mを超えるスケール。水面からそれだけ深い水中に丸くて白い板を沈めても目視できるほど透明だということです。

観測史上最も高い透明度は摩周湖で記録された

北海道摩周湖3
しかし世界で最も透明度が高い湖と言えば、ロシアのバイカル湖が現状で認知されています。バイカル湖とは、シベリア南東部にある三日月のような形をした淡水湖です。このところ観光地としてバイカル湖は極めて人気を博しています。環境問題が指摘されるくらい、新型コロナウイルス感染症の影響でなかなか海外へ出られないロシア人たちの国内旅行のニーズを満たし続けている旅先です。

人気の理由は、世界一深い湖で、地球上の淡水の約2割を保有し、12月から5月は氷結して真冬は氷の厚さが2mに達するなど、魅力的なスペックを誇るから。その上、世界で最も透明度が高い湖として知られていますから「鬼に金棒」ですよね。

その透明度は圧倒的です。1956年(昭和31年)とすごく古い情報で恐縮ながら、湖畔の街から1.5km離れた湖面で透明度を測ったバイカル湖の記録を見ると、7月・11月・12月・1月は透明度が20mを超え、12月は30m近くに達しています。バイカル湖の中でも最も深いエリアにおいては、条件がそろえば水深40mの水中でも、水面から沈めた白い透明度板が見えるのだとか。

しかし、摩周湖はこのバイカル湖にも引けを取らないのです。過去の記録にさかのぼって、観測史上最も高い透明度が記録された際の透明度を比べると、摩周湖に軍配が上がるのですね。

摩周湖が出した透明度の記録はいまだに世界一

北海道摩周湖4
もちろん、摩周湖もバイカル湖も年間を通じて湖中の透明度が常に高いわけではありません。先ほどのバイカル湖に関する1956年(昭和31年)のデータで言えば、9月は8m程度まで透明度が下がっています。

摩周湖も同じで、透明度は時期・年度によって変化します。しかし過去一の透明度比べで言えば、摩周湖は世界記録を保有しているのですね。

摩周湖とバイカル湖、最も深い透明度を記録した瞬間の過去のデータを整理してみましょう。

  • バイカル湖(1911年、明治44年)・・・40.5m
  • 摩周湖(1931年、昭和6年)・・・41.6m

40mとは、どのくらいでしょうか。野辺山宇宙電波観測所の電波望遠鏡(45m)には及ばないものの、全身が復元されている中では最長のセイスモサウルスの全長(35m)を超えます。

ちょっとわかりづらいかもしれませんので別の例を出すと、JR東日本の通勤電車であるE231系電車2両分です。大型路線バス4台分、縦方向の例を出せば大人のキリンを10頭縦に並べたくらいです。

それだけ深い地点まで透明度が確認されたのですね。すさまじい話ですよね。

とはいえ、摩周湖ではその水質調査の継続が課題になっているみたいです。摩周湖に恩恵を受ける近隣の5つの自治体が力を合わせて環境を守ろうと努力を続け、クラウドファンディングを立ち上げて支援を呼び掛けてもいます。

旅を愛する人、日本の貴重な湖を守りたいと思った人は、併せてチェックしてみてくださいね。

北海道摩周湖5
 

[参考]

摩周湖、澄んだ水は危険と隣り合わせ – 国立環境研究所

摩周湖の透明度推移 – 弟子屈町

Diel vertical migration of zooplankton in Lake Baikal and its relationship to body size

摩周湖 – 弟子屈町

東亜の湖沼の概觀 – 吉村信吉

ロシアのバイカル湖は地球上の淡水の約2割を擁する – CNN

※ OZERO BAYKAL (LAKE BAIKAL) – World Lake Database

Voluntary National Review of the progress made in the implementation of the 2030 Agenda
for Sustainable Development – Russian Federation

Frequently Asked Question – ЦНИТ ИГУ

北海道東部にたたずむ「神秘の湖 摩周湖」で、 水質調査を継続するプロジェクト! – CAMPFIRE

※ 『小学館の図鑑 NEO+ぷらす もっとくらべる図鑑』

[All photos by Shutterstock.com]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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