1本の木に会いに行く【36】紅枝垂地蔵ザクラと上石の不動ザクラ<福島県>

Posted by: 阿部 真人

掲載日: Mar 18th, 2022

福島県・三春町の「三春の滝桜」ほどには知られていませんが、「滝桜の娘桜」と呼ばれる「紅枝垂地蔵ザクラ」、そして「滝桜の子孫」といわれる「上石の不動ザクラ」も素晴らしい桜です。美しく清楚で、桜に近づくこともできます。両方とも滝桜から3kmほどとそれほど遠くない場所にあるので、滝桜を訪れるのであれば、ぜひ立ち寄ってみてください。

上石の不動桜

日本三大桜 「三春の滝桜」

三春の滝桜

上の写真は、日本三大桜のひとつ「三春の滝桜」の2021年春の姿です。例年に比べてずっと早く開花した滝桜は強烈な印象でした。これほど見事な桜はそうありません。樹齢1,000年を超えるといいますが、いまもたくましく美しく咲き誇っていました。その滝桜の子や孫にあたる桜も近くで美しい花を咲かせているというのです。

道中

まずは「紅枝垂地蔵ザクラ(べにしだれじぞうざくら)」に会いに車を走らせました。周辺は三春町や郡山市が入り組んだ丘陵地帯が広がっています。桜の所在地は郡山市になるようです。

近づくと

滝桜から車で10分ほどの場所でした。近くに大きな駐車場もありました。歩いて近寄ってみます。

「滝桜の娘桜」と呼ばれる紅枝垂地蔵ザクラ

桜を見上げる

ちょうど反対側から春の日差しを浴びて神々しく見えます。たしかにしだれ桜です。しかも滝桜に比べて、ちょっと花の色が濃いようです。だから「紅枝垂(べにしだれ)」と呼ばれているのですね。品種はエドヒガン、樹齢は400年で滝桜の娘といわれていますが、お母さんの滝桜と花びらの色が微妙に違う気がします。

木の下に地蔵尊

紅枝垂地蔵ザクラというその名の通り、桜の下にはお地蔵さまを祀る小さなお堂がありました。生まれたばかりの赤ん坊が亡くなることがないように、無事に健康に育つように、このお地蔵さまに願かけをしたといいます。

延命地蔵尊

いまでは「延命地蔵尊」と呼ばれ、このお堂に中にいらっしゃいました。そのお地蔵さまの脇には、地元の人々が安置したであろう小さな赤ん坊の石像も。子を思う親の強い思いが伝わってきました。

太い幹

お堂の前には迫力のある幹がどーん伸びています。この太い幹でしだれ桜を支えている姿は、子どもたちを守る親のように思えました。

日差しを浴びて

そして花々はたくさんの小さな子どもたち。日差しを浴びてたくましく育ってほしいものだと願いました。

地蔵桜縁起

近くには「地蔵桜縁起」を記した石板がありました。これによれば、樹齢は1,000年とあり、根回り(根元の周囲)は10.5mで、「山峡のそらに羽をひろげる清婉な紅枝垂」とあります。たしかにお母さんの滝桜に較べて、少し色っぽい印象でした。

そして農作業の合間に滝桜を中心に半径10km歩き回り、滝桜の子孫を探し出した木目沢伝重郎さんという方について記されています。420本もの子孫を確認しており、その筆頭がこの紅枝垂地蔵ザクラなんだそうです。

桜番付

近くには誰が選定したものでしょう、福島県内の桜の番付表も掲示されていました。これによると東の横綱が滝桜で、西の横綱がこの地蔵桜だといいます。

地蔵桜見上げて

福島県内には本当にたくさんの美しい桜が残されているようです。昔のまま里山がきれいに残されているせいでしょうか。あるいは桜に対する思いが人一倍強いせいでしょうか。どの桜も、その周辺もきれいに整備されていることにも感動します。

次いで上石の不動サクラへ

もうひとつの上石(あげいし)の不動ザクラへと向かいました。所在地は郡山市。桜番付では滝桜に次いで東の大関に選ばれています。

近づく

こちらも滝桜から3〜4kmの山あいにあります。位置関係でいいますと、滝桜が三角形の上、北の頂点にあり、南東に紅枝垂地蔵サクラがあり、南西に上石の不動サクラがあるのです。

桜見上げる

遠くからでも、丘の上に伸びる美しい桜であることがすぐにわかりました。樹齢は約350年、品種はエドヒガンといい、こちらも滝桜の子孫だといいます。

不動尊

その脇には、不動明王を祀る不動堂があり、周囲を菜の花が囲んでいました。とても絵になる、美しい光景なのです。

お堂の中は

この不動堂は幕末のころ、この地に移り住んだ三春藩士がお堂を寺子屋として使い、地域の子どもたちの教育をしたそうです。その名残が天井などの落書きに残されているといいます。覗いてみたのですが、暗くてよくわかりませんでしたが。

桜から周囲を見渡す

丘の上にある桜の脇に立って見渡してみると、のどかな田園風景が目に広がりました。風も穏やかで心が和らぐような良い気持ちです。

太い幹

根元は太くたくましいのですが、途中から上の部分がなくなっているようで、四方に枝を広げる形になっています。

桜アップ

ですが、さえぎるものがないので、気持ち良く枝を延ばし、桜の花々も瑞々しく咲き誇っていました。事前に見ていた写真ではもう少し色が濃かったようですが、目の前にすると薄紅色に思えました。

桜の上の方

案内板によれば、樹高は16m、幹の周囲は5.3mだそうです。桜を見上げながら、満開のこの木の下で勉強する子どもたちの姿を想像しました。

階段下から見上げる

穏やかな風のなかで、子どもたちのにぎやかな笑い声が聞こえてくるような気がしました。

紅枝垂地蔵ザクラ
住所:福島県郡山市中田町木目沢字岡ノ内
電話:024-954-8922(郡山市観光協会)
公式サイト:https://www.kanko-koriyama.gr.jp/tourism/detail5-1-417.html

 

上石の不動サクラ
住所:福島県郡山市中田町上石字舘
電話:024-924-2621(郡山市観光課)
公式サイト:https://www.kanko-koriyama.gr.jp/tourism/detail5-1-418.html

[All Photos by Masato Abe]

PROFILE

阿部 真人

Masato Abe 還暦特派員

大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。

大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。

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