世界で最初の発明であり、世界でもっとも使われるブランド
カッターナイフ(折る刃式)は自宅にありますか? 必要な分だけ刃を出して、切れ味が悪くなれば刃先をぽきっと折ればいい、あの優れものです。
世界各国で使われているらしい折る刃式カッターナイフ、実は日本で生まれた製品だとご存じでしょうか?
毎日新聞経済部『増補版 日本の技術は世界一』(新潮社)によれば、大阪府にあるオルファ株式会社の創業者による発明品だとの話。同社の世界シェアは30~40%を占めるといいます。特にカナダではシェア100%に近いそうなので、驚きですよね。
もちろん、交換可能な刃を持つ刃物(ユーティリティー・ナイフ)といえば、折る刃式カッターナイフ以外にもたくさんあります。例えば、STANLEY社の「Stanley 199」のように、刃を折って交換するのではなく、単純に切れ味が悪くなったら刃を交換するタイプも広く使われています。
しかし、あくまでも刃を折って(snap-offして)新しくするタイプのカッターナイフ部門に限ると、日本のオルファとその創業者が世界で最初の発明者であり、シェア的にも世界でもっとも使われるブランドと認知されているのですね。
板チョコのように刃が折れるカッターナイフ
折る刃式カッターナイフのリーディングカンパニーであるオルファ社の公式サイトには読みもの『折る刃式カッターナイフの誕生秘話』があります。
同社は、折る刃式カッターナイフの発明家・岡田良男さんが創業した会社です。戦後の復興期にいくつかの職を経て印刷会社に就職した岡田さん。印刷用紙を切る作業に使っていたカミソリの刃に不便さを感じていたそうです。
そんな折、路上の靴職人たちがガラスの破片で靴底を削り、切れ味が悪くなるとガラスを再度割って切れ味を鋭くする作業を目にします。その姿と、敗戦後に進駐軍の兵隊がかじっていた板チョコの思い出がリンクし、次のように岡田さんは思い付いたのだとか。
<そうだ、板チョコのように刃に折り筋を入れておき、切れなくなったら、ポキポキと折っていくと1枚の刃で何回も新しい刃が使えるぞ!>(オルファの公式サイトより引用)
この岡田さんのひらめきから、折る刃式カッターナイフづくりが始まったのですね。試行錯誤の末に決まった刃の長さや大きさ、厚さ、折り筋の深さなどの規格は現在の世界基準になっています。
もちろん、最初からとんとん拍子で開発・販売が進んだわけではないそうです。電話帳を片手に飛び込みのセールスを続け、品質の良さと使い勝手が建築現場の職人などにそのうち高く評価されるようになり、現在の圧倒的なシェアの基盤が出来上がっていくのですね。
刃先をつまんで山折りにする
(C) Crowing Hen / Shutterstock.com
折る刃式カッターナイフといえば、素朴な疑問があります。刃をどうやって折ればいいのか、折った刃をどうやって処分すればいいのか、悩みませんか?
学研キッズネットによると、折りたい部分だけ刃の先端を持ち手から出して、折り筋を上に向け、ペンチや専用の道具を使い、刃先をつまんで山折りにすると簡単に折れるそうです。
折った刃の処分方法は、各自治体によって細かくは異なります。しかし、基本的には不燃ごみに分類できるので、使用済みの刃先だけを専用のケースに入れたり、少数の場合はセロハンテープでぐるぐる巻きにしたりして、まとめて捨てるといいようですね。
海外旅行に出かけて何かユニークなお土産を買って帰りたいと思ったら、海外に売っているオルファ社のカッターナイフを探し、現地の言語で書かれたパッケージの商品を買って配ると面白いかもしれません。スーツケースに入れておけば持ち帰れます。次の海外取材で筆者も一度探してみようと思いました。
[参考]
※ 5-3/8 IN CLASSIC 199® FIXED BLADE UTILITY KNIFE – STANLEY
※ Toolipedia: Utility Knives – family handyman
※ 毎日新聞経済部『増補版 日本の技術は世界一』(新潮社)
[Photos by Shutterstock.com]