NHKのドキュメンタリー番組で取り上げられた店
神戸市に、近年では最高峰に知名度の高い駄菓子屋があります。インターネット上にインタビュー記事や訪問録が多数あり、短時間では全部に目を通せないほど。掘り下げて調べると、NHKのドキュメンタリー番組で取り上げられたことがあったそうです。そんなお店にはきっと素晴らしい何かがあるに違いない、ということで、神戸市内に入ると最初に訪ねてみることにしました。
ポートアイランドから海を挟んだ西側の和田岬地区。小学校のすぐそばの商店街を通ると、「淡路屋」と書かれた黄色いテントが特徴的なので、すぐにわかりました。正面から見ると右側に女性の店主が立つ焼き台、左側が入り口になっています。駄菓子や駄玩具が並ぶ店内には小ぶりな座敷があり、子どもにちょうど良いかわいいサイズ感。
調理品のメニューがかなり豊富で、リクエストに答えていったら増えすぎてしまったと教えてくれました。80円のたこせんや100円のクレープはどれもおいしく、この地域の子どもたちは幸せだと思います!
淡路屋は元々、昭和33年(1958年)に現店主のおばあさんが開業した食堂で、店名は初代店主の出身地から名付けられたそうです。平成6年(1994年)に引き継いだ際にクレープ屋に改装したそうなのですが、なぜか子どものお客さんばかりが来るようになったので駄菓子や玩具を置き、現在の形になったとのこと。駄菓子屋を運営しながら、行政に掛け合ったり、著名人に声を掛けたりと、駄菓子屋文化を未来に残すための広報活動のようなことも積極的に行っているそうです。
駄菓子屋は社交場としても未来に残っていってほしい
「駄菓子屋って普通は子どもたちが来るお店でしょう?ここは昔の名残りなのか場所柄なのか、いろんな人が来るんですよ。背景がまったく違う人がたくさん出入りしてるのがドキュメンタリーに良かったみたいで取り上げてもらって。そしたら地元の人だけじゃなくて、その番組を見たという人も来てくれるようになって、『いろんな人が来るといっても程があるやろ(笑)』っていうくらいの環境になってます(笑)。
駄菓子屋はものすごい勢いでなくなっていくけど、全然知らない人と店で話すとか、自分で買い物するとか、子どもたちのためになってると思うんですよ。細かいところで成長に繋がっていく。駄菓子屋は社交場としても未来に残っていってほしいから、私ができる限りのことはしますよ」
小学生の下校時、店の前を通る子どもたちがみんな、歩きながら店主に一言二言、声をかけていきます。そして店主はその都度ニコニコと、かけられた言葉に応じた上手な返しで見送っていました。そんな信頼関係が垣間見える何気ないやりとりも含め、お店の特徴の中でも特に際立っていると感じたのは、誰でもあたたかく包み込んでしまう店主の人柄です。
取材がたくさん来たり、老若男女問わず訪れた人がもれなく楽しんでいくのも納得で、「世の中には駄菓子屋(客商売)をするために生まれてきたようなすごい人がいるんだな」と唸らされました。
※駄菓子屋開業のレクチャーもしてくれるそうなので、神戸市周辺で駄菓子屋を開きたいと考えている方はぜひ一度、淡路屋を訪ねることをオススメいたします!
住所:兵庫県神戸市兵庫区笠松通7-3-6
営業時間:11:30~19:00
定休日:月曜日
[All photos by Atsushi Miyanaga]