子どもの頃に通っていた駄菓子屋
「人はみな、駄菓子屋での思い出を持っている」
ちょっと大げさな表現かもしれませんが、駄菓子屋文化を未来につなげる活動の中、多くの方々から感じたことです。好きだった駄菓子や、一緒に通っていた友達、お店の人のこと。駄菓子屋にまつわるさまざまな思い出は、誰しもの心の中にあるのではないでしょうか。今回は普段の駄菓子屋探しの旅とは趣向を変え、自分自身の思い出、「子どもの頃に通っていた駄菓子屋」を訪ねます。
小学生時代を過ごした埼玉県越谷市。ここに子どもの頃から、そして今も通い続けるお店があります。千間台小学校のすぐそばにある「星食料品店」。遊びに行くようになったきっかけは、店主が自分の祖父母の友人だったからでした。日本中どの駄菓子屋も地元の人からは愛称で呼ばれるもの。ここは昔から、お店は「ホシ」、店主は「おばちゃん」と呼ばれ、今もまったく変わりません。
開け放たれた入り口から店内に入ると、駄菓子の棚や10円ゲームが立ち並んでいます。奥には飲食スペースがあり(※現在はコロナウイルス対策で一時的に撤去しています)、昔はそこでチェリオを飲んだり、ブタメンを食べて過ごしました。名物は「たこせん」。マヨネーズを塗ったたこせんに、菓道の「ラーメン屋さん太郎」シリーズと「甘いか太郎」シリーズをのせ、半分に折って食べるこの地域のソウルフードです。
少子化って言われるけど、お客さんは多い
星食料品店は、昭和58年(1983年)に店主が創業したそうです。当初は駄菓子以外の日用品や食品を扱うお店でしたが、周囲にコンビニやスーパーマーケットができ始めたことや、目の前が小学校であることを踏まえてタバコ屋兼駄菓子屋に改装したとのこと。元々は5kmほど離れた地域で商店を営んでおり、「どうせやるなら人が多いところで」と、住宅街として開発中だった現在地に移転してきたそうです。
「少子化って言われるけど、このへんはそもそも人がたくさん住んでるところだから、相変わらずお客さんは多いよ。だけど、あんたが小学生の頃と今とじゃ、本当に時代が変わったね。まず物の値段が上がった。駄菓子もそうだし、タバコなんか倍以上になったし、吸う人も減った。あと、最近の子はやけにお金を持ってるよね(笑)。昔は100円持ってればお大尽だったけど、今の子は1回200円のガチャガチャでも、どんどんやるから。こっちのやってることは何も変わらないけど、周りが変わっていくんだよね。あんたのお爺ちゃんが吸ってたの、キャスターだったかな?よく買いに来てくれてたのを思い出すよ」
子どもの頃の楽しかった思い出は、大人になっても色褪せずに残っているもの。ここで覚えた買い物や10円ゲームの楽しさ、おばちゃんと交わした会話の数々が、現在の活動の礎になっているのは間違いありません。失礼かな?と思いつつも年齢を聞くと、82歳とのこと。よその昔ながらの駄菓子屋の店主と同様に「いつまでできるかわからないよ」と言っていましたが、健康すぎて「入院なんてしたことない」とも話していたので、まだまだ続けてくれそうです!
住所:埼玉県越谷市千間台西5-22-19
営業時間:9:00~17:30(夏季は〜19:00)
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]