
国宝、世界遺産にも登録!幕末に建てられたキリスト教会
【大浦天主堂の歩み(抜粋)】
1864年(文久4年):大浦天主堂が完成
1865年(慶応元年):大浦天主堂で信徒が発見される
1933年(昭和8年):大浦天主堂が国宝に指定される
1945年(昭和20年):原爆による被害の修復工事が始まる
1953年(昭和28年):国宝に再指定
2018年(平成30年):世界遺産に登録される

長崎市にある大浦天主堂は、幕末の頃に建てられた、現存する日本最古の教会です。創建当時は木造の外壁でしたが、明治時代に増改築が行われてレンガ造となり、現在の姿となりました。
長崎に落とされた原爆の被害にさらされたものの、爆心地から離れていて、倒壊することなく持ちこたえることができたので、国宝や世界遺産にも登録されています。
日本におけるキリスト教信仰の重要な舞台にもなった大浦天主堂。そこにはさまざまなドラマが隠されていました。
キリスト教「信徒発見」の奇跡の舞台

日本にキリスト教が伝わって以来、信徒はキリスト教弾圧の政策に苦しめられる時代が長く続きました。禁教政策は豊臣秀吉から始まり、宣教師や信者26人が長崎の西坂で処刑されるという痛ましい出来事が起こりました。
その後も江戸時代の鎖国政策下でキリスト教弾圧は続き、信徒たちは「隠れキリシタン」として、命がけの信仰を密やかに続けていました。
そして幕末。黒船の脅威でついに幕府は開国を決断し、外国人居留地がつくられました。大浦天主堂はそうした在留外国人のために建設された教会で、フランス人宣教師によって設計されたものです。
大浦天主堂の正式名称は「日本二十六聖殉教者聖堂」。秀吉の時代に殉教した二十六聖人に捧げる教会として、殉教の地である西坂に向けて建てられています。
大浦天主堂が完成したのは1864年(文久4年)。それからわずか数カ月後の1865年(慶応元年)3月、ある大きな事件が起こります。長崎の隠れキリシタンの一団が大浦天主堂に現れ、マリア像の前で神父に信仰を告白。長きにわたる弾圧から、信仰を守り続けた隠れキリシタンたちが、ようやく歴史の表舞台に立った瞬間でした。
世界の宗教史上でも類を見ない「信徒発見」の舞台となった大浦天主堂。中世ヨーロッパ建築を代表するゴシック調の教会として1933年には国宝に指定されましたが、1945年(昭和20年)8月9日の原爆投下で甚大な被害を受け、5年の歳月をかけて修復工事が行われました。
その後、1953年に国宝に再指定され、2018年(平成30年)にはユネスコ世界遺産委員会で世界文化遺産への登録が決定されました。
大浦天主堂の見どころは?

(C)(一社)長崎県観光連盟 長崎県文化観光国際部観光振興課
アーチ型の高い天井にステンドグラスから柔らかな光が注ぐ、ゴシック建築の大浦天主堂。内部は厳かな空気に包まれ、祈りをささげる人たちが絶え間なく訪れます。
天主堂内の大祭壇の右側には、イエス・キリストを腕に抱く聖母マリア像があります。この像は大浦天主堂創建当時にフランスから持ち込まれたもの。長崎の隠れキリシタンが信仰を打ち明けた「信徒発見」の奇跡の瞬間を見守ったマリア像で、現在もその姿を間近に見ることができます。
そして、もう1体、入り口に白亜のマリア像が置かれています。こちらの像は「信徒発見」の奇跡を受けて、1867年(慶応3年)にフランスから記念として贈られたものです。
隠れキリシタンをあたたかく迎え入れた2体のマリア像。大浦天主堂を見学の際は、ぜひ注目してみてくださいね。
[Photos by Shutterstock.com]

内野 チエ ライター
Webコンテンツ制作会社を経て、フリーに。20歳で第1子を出産後、母・妻・会社員・学生の4役をこなしながら大学を卒業、子どもが好きすぎて保育士と幼稚園教諭の資格を取得、など、いろいろ同時進行するのが得意。教育、子育て、ライフスタイル、ビジネス、旅行など、ジャンルを問わず執筆中。特技はワラビ料理と燻製作り。
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