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旅とは場所を感じること、そして自分を見失うこと

Jun 8th, 2015

場所と自分

旅とはある場所に赴くということです。ではなぜその場所に赴くのでしょうか。

初めて訪れた場所にあなたは何を感じますか。それとも何も感じませんか。未知に対する恐怖と期待が入り混じった感情ですか。それともただそこに来たこと、そしてそこに居ることを実感するだけですか。

馴染むということ

場所がまだ自分に馴染んでいないとき、あるいは自分がまだ場所に馴染んでいないとき、どのような行動を取りますか。

その場を早速写真に収めて自分のものにしてしまいますか。地面に仰向けになってその場所を背中で感じますか。それとも社会的動物の人間にとっては場所に馴染むなどということはあり得ず、その場所で生活する人間たちに馴染むということしかありえないのでしょうか。

実は自分などというものは存在せず、場所が自分というものを通じて場所自身を表現する。そう感じたことはありませんか。見慣れた風景は自分の輪郭をかたどる外枠なのだと。

自分が自分にとっての不審者となる瞬間

遠く旅して見慣れた風景を失った自分を想像してみてください。

意識は自分の輪郭を維持しようとその土地の風景に寄り添い、心の内側には空洞が生じます。旅路ではしばしば自分が誰だかわからなくなるのは、そういうことなのかもしれません。実は旅とは自分を探すものではなく、自分が自分にとって不審者となる瞬間のために旅に出るのです。

場所と自分

自分がいる場所を強く感じるにはどうすれば良いのでしょうか。逆説的ですが、その場所から遠く離れること、つまり望郷の念に依ることなのでしょうか。

離陸した機上から足下に彼の地が小さくなっていくのを見ていると、そこで過ごした時間がパッケージ化され、脳裏にさまざまな場面が去来します。

それも数時間を経て自国の空港に着き、見慣れた風景の安心に身を包まれると、何事も起らなかったかのように忘れてしまいます。それでも場所を感じるために自分を失い、自分を失うことで得た経験の残留物が新たな成分となって、自分という人間を新しく思い出すのです。マキネッタ(直火式エスプレッソメーカー)に付着した油脂成分が珈琲の風味を増していくように。


[All Photo by Shutterstock.com]

公界公

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