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日本列島ゆるゆる古墳ハント(31)世界一周してわかった、世界の遺跡に負けない「古墳の魅力」

Posted by: 水谷さるころ
掲載日: Sep 15th, 2021. 更新日: Sep 16th, 2021

「旅チャンネル」の企画で世界一周を2回経験した、古墳を愛するイラストレーター・マンガ家の水谷さるころが、これまで訪れた日本各地の古墳の魅力を紹介します。今回は、世界一周してわかった、世界の遺跡に負けない「古墳の魅力」です。

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日本列島ゆるゆる古墳ハント31エジプト
エジプトのピラミッド


古墳の魅力

日本列島ゆるゆる古墳ハント31マンガ

箸墓古墳で受けた衝撃

「古墳のどこがいいのですか?」と聞かれます。

私が「古墳ってかっこいい!」と思ったのは奈良の箸墓古墳へ行ったときでした。そのときは古墳を見に行ったわけではなくて、そのすぐ近くにある「大神神社」へ行ったのです。

日本列島ゆるゆる古墳ハント31奈良県大神神社
大神神社

「大神神社」は、日本最古といわれる歴史をもつ神社のひとつで、「日本書紀」や「古事記」にも出てきます。三輪山という山そのものがご神体という神社です。この三輪山には大神神社の摂社である狭井神社の社務所に申し込みをして、登ることができます。

ここは決して標高の高い山ではないのですが、古代から続く聖域。入山は午前9時から下山は午後4時までです。中で拾ったものを持ち帰ることは一切禁止、それどころか写真を撮ることも禁止です。中の登山道は厳しいところもありますので、スニーカー、リュックなど山登りの準備をして行ったほうがいいというところです。

社務所で申し込みをして、携帯電話を届け出ます。入口も出口も一つだけ。道も一本しかありません。そして、下山したことを必ず社務所に届けないといけません。その厳重さから「聖域に入れる」という感じにワクワクしました。そして実際に山中の雰囲気は「聖域」そのもの。山は2000年間信仰の対象とされてきた「すごみ」みたいなものがありました。
日本列島ゆるゆる古墳ハント31狭井神社入山口
狭井神社入山口

その大神神社を上り、周囲の神社を散策したあと、すぐ近くに「箸墓古墳」があることに気がついたのです。あ、あの教科書に載ってた有名な古墳だ。卑弥呼の墓とも言われてるやつ・・・。聖地の山登りでテンションがアップしていたので、歩いてそのまま箸墓古墳へ行きました。

すると、箸墓古墳もの大神神社に負けず劣らずの「聖地のすごみ」があったんですよね・・・。えっ。これって3世紀後半ごろからずっとここにあるの・・・?!す・・・すごい!と、なんともいえない感動に包まれました。
日本列島ゆるゆる古墳ハント31箸墓古墳1
箸墓古墳

世界一周の旅で世界の遺跡&聖地をめぐる

そしてその後、私は旅番組の企画で世界一周の旅へ行くことになりました。行きたい場所、コースを選べたので「世界の聖地・パワースポット」をめぐりました。その旅を2回したので、インドのガンジス川、イギリスのストーンヘンジ、エジプトのギザのピラミッド、メキシコのチチェン・イッツァ、イースター島のモアイ、オーストラリアのエアーズロック、タイのアユタヤ、ヨルダンのペトラ遺跡、ペルーのマチュピチュ・・・などなど、有名な世界の遺跡&聖地をめぐりました。

日本列島ゆるゆる古墳ハント31インド
インドのガンジス川

日本列島ゆるゆる古墳ハント31
メキシコのチチェン・イツア

日本列島ゆるゆる古墳ハント31モアイ
イースター島のモアイ

日本列島ゆるゆる古墳ハント31マチュピチュ
ペルーのマチュピチュ

いろんな聖地や遺跡見て思ったのは「聖地のすごみ」をすごく感じられるところと、実はそうでもないところがある・・・。ということです。もちろん個人の趣味も大きくあると思うのですが、商業化・観光地化されすぎていたり、日本人的な価値観との相違で「聖地」を感じられないなどの理由もあるのだと思います。

私にとっては、世界の三大宗教、キリスト教・イスラム教・仏教の聖地より、もっとプリミティブな五感に訴えかける「自然崇拝」的な要素のある場所のほうが「神聖な場所」と感じられるようでした。世界の「聖地」をみて、ふと振り返ると日本の古墳と神社の「聖地感」は、全然負けてなかったんじゃない?!と思いました。
日本列島ゆるゆる古墳ハント31箸墓古墳2
箸墓古墳

それから古墳を調べると、どんどんと古墳の奥深さを知ることになります。

前方後円墳の独自性

日本列島ゆるゆる古墳ハント31さきたま古墳群
さきたま古墳群

私はまず「前方後円墳」というあの形に惹かれました。なぜなら、あれは本当に「日本オリジナル」のお墓の形だからです。円墳や方墳っぽいお墓や塚というのは他の国にもありますが「前方後円墳」は日本にしかありません。

朝鮮半島に前方後円墳はありますが、全て「倭人の墓」ということで、あの形は古墳文化が廃れるまで「日本の象徴」の形だったのです。だからなのでしょうか?前方後円墳を見るとグッと来てしまうのですが、古代の日本人が権力の象徴として「かっこいい」と王も庶民も共に感じられるように作り、極めた形なのですから、グッときて当然だ・・・と思うようになりました。ちなみに、英語では「large keyhole-shaped tomb mound」というらしいです。やっぱり鍵穴に見えるんですね。

「有名人のお墓」としての古墳

そして古事記や日本書紀を読むと「天皇陵古墳」は「有名人のお墓」になります。私のお気に入りの天皇陵は奈良の「垂仁天皇陵/宝来山古墳」なのですが、古事記によると垂仁天皇は出雲大社を建て直したり、娘の倭姫命に伊勢神宮で天照大神を祀らせたりと私の中では「日本の聖地の立役者」です。そして、古墳に従者たちを一緒に埋める殉死を廃止して埴輪を置くようにしたといわれています。古事記の中では色々とドラマチックに描かれている、この古代天皇の陵だといわれると、有名人に会いに来たような気持ちになれるのです。
日本列島ゆるゆる古墳ハント31宝来山古墳
宝来山古墳

・・・とはいえ、実際には古墳の中に誰が埋葬されているのかは「考古学」的には全く証明されていません。古事記も日本書紀も「日本の歴史書」ということになっていますが、歴史的・考古学的には検証は難しく基本的には「神話」です。「天皇陵の治定」は江戸時代後期から明治時代にかけて行われていて、実際の考古学的な証拠とは合わない古墳ばかりです。

でも、これも世界の聖地や遺跡とは違う「日本の古墳の特殊性」だと思っています。日本の古墳は、現役の祭祀の場所なんですよね。世界の遺跡や聖地は、すでにその文明や民族がいなくなってしまい忘れさられてしまった場所も多くあります。

「世界的に見ても変わった国」としての日本

古代の日本が「天皇を中心とした国家」と作ってきて以来、天皇をとりまくシステムを変えながらも現在に至るまで126代続いているということ教科書では習いましたが、世界の遺跡をを見て古墳に行くと「それって、すごい特殊なんだな・・・!」と実感できます。

トルコのアヤソフィアは、元々は東ローマ帝国のキリスト教正教会の大聖堂が起源で、ローマ・カトリックの教徒大聖堂を経てオスマン帝国によりイスラム教のモスクとして長年使用され、現代ではその歴史背景を見せる博物館となっていました。しかし2020年にトルコ政府がまたアヤソフィアをモスクにするとして、欧米諸国から反感買っている・・・とニュースになっていました。

日本列島ゆるゆる古墳ハント31トルコのアヤフソフィア
トルコのアヤフソフィア

アヤソフィアを見たときに「日本って、こういう文化の侵略や全然違う文化に塗り替えられる体験を、全然経験してない国なのだなあ」と思いました。これは、ペルーのクスコで元々インカ帝国の街だったものがスペインに侵略されて、キリスト教の教会を建てられているのを見ても感じました。

日本列島ゆるゆる古墳ハント31ペルー・クスコ
ペルーのクスコ

世界を見ればみるほどに、「天皇を中心とした国家」を126代続けてて、初期のころのことは神話と史実が混じり合って確認できないものを根拠として国家が現在も成立している、この日本という国は「世界的に見ても変わった国」じゃないかと思うようになりました。

自分が生まれ育った家庭が「当たり前」と思ってしまうのと同じように、自分の国のこともほかと比べないと「変わってるところ」がわからないものなんだなと思います。古墳は私にとっては「生まれたときからある庭の石」みたいなもので、他所のお宅の庭の石をたくさん見てきたら「あっ、うちの石ってかっこいいんじゃない?!」とわかった・・・といった感じです。

でも、それをそのまま「だから日本は素晴らしい」と私が思いすぎて、ナショナリズムになってしまうのは気をつけたいところです。訪れた国をよく調べたりするうちに、国民性というのは、国家の成り立ちによるところも大きく影響されるものなのだなと感じました。自国の成り立ちを知ることで、より自分自身のことを知る機会にもなると思います。他国と自国を知り世界を、より理解できるようになれるといいなと思っています。

親しみやすい登れる古墳

そして古墳に興味を持って色々な古墳を見るうちに、天皇陵は現役の祭祀の場として入れませんが、史跡として整備されている古墳や登れる古墳など「触れ合える古墳」がたくさんあることを知ります。聖地に入っていいかどうかという問題は世界でもあり、私も登ったことのあるオーストラリアのエアーズロック(ウルル)はアボリジニの聖地です。アボリジニとオーストラリア政府の長年の交渉により、2019年に観光客向けの登山が禁止されました。
日本列島ゆるゆる古墳ハント31オーストラリア・エアーズロック
オーストラリアのエアーズロック(ウルル)

しかし、日本には、まだまだたくさん「登れる古墳」があります。「有名人のお墓」としての天皇陵もいいですが、史跡としての古墳も地方や年代で、それぞれの形が違ったりと、個性的な魅力が満載で今ではすっかり「登れる古墳」も大好きになりました。その古墳たちも、同じ民族、文化、歴史で今の自分と繋がっていると思うと、より親しみを感じます。

「古墳ツーリズム」の可能性

ちなみに我が家には息子の英語の先生に来てもらっていたのですが、彼女はイギリス人でした。イギリスも歴史の古い島国で、ストーンヘンジは紀元前2500年から紀元前2000年の間に建てられたといわれています。
日本列島ゆるゆる古墳ハント31イギリスのストーンヘンジ
イギリスのストーンヘンジ

我が家のリビングには「古墳クッション」がおいてあるのですが、彼女に「これは何?」と聞かれたので「日本の古いお墓です。3世紀〜6世紀に作られました」と説明すると、「Really?」と驚かれました。歴史の深いイギリス人にびっくりされるとは・・・と思ったのですが、古代の日本についてはあまり知られてないのだなと思いました。
日本列島ゆるゆる古墳ハント31古墳グッズ
古墳グッズ

古墳が日本に16万基もあること、日本各地に素晴らしい復元整備された古墳があること、その歴史背景などがもっと知られたら、世界からみても「古墳ツーリズム」はもっと盛んになるんじゃないかなと思っています。世界を知り、より日本を知れば知るほど、古墳は面白い場所だと思います。
日本列島ゆるゆる古墳ハント31古保渡田八幡塚古墳
保渡田八幡塚古墳

水谷さるころ

Mizutani salucoro
イラストレーター/マンガ家
1976年千葉県生まれ。女子美術短期大学卒業。現在は事実婚で一児の母。旅行記エッセイ、自身の結婚・離婚・事実婚にまつわるエッセイの著作が多い。旅行エッセイは『30日間世界一周!(全3巻)』『35日間世界一周!!(全5巻)』など。結婚にまつわるエッセイは『結婚さえできればいいと思っていたけど』『目指せ! 夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している』など。自著では装丁も全て手がけている。趣味の空手は弐段。古墳好き。

夫婦で2年連続ドナーになるという激レアな体験をマンガにした新刊「骨髄ドナーやりました!」(少年画報社刊)が発売中。


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