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【インタビュー】旅の余韻から生まれる音楽/オレンジペコー ギター藤本一馬

Aug 29th, 2014

【インタビュー】旅の余韻から音楽が生まれる/オレンジペコ ギター藤本一馬

確固たるオリジナリティで同世代を中心に大きな支持を得ているorange pekoe。そのギタリストで作曲家でもある藤本氏が、ソロとしての3rdアルバム『My Native Land』をリリースした。自身のルーツを旅するように、音をたぐり寄せたという今回のアルバムは、澄んだ水のように心にすっと染み渡り、旅先の朝のように五感が研ぎ澄まされる感覚になる。旅の余韻の中で作曲をするという藤本氏に、旅と音楽への想いを伺った。

旅で感じたことが心に溜まって、熟成して、曲になる


—今回のアルバムは「旅する楽曲の記録」だそうですね。

「そうなんです。いわば、旅する自分の心のスケッチのようなもの。近年、自分のルーツについてよく考えるようになったんです。自分は、小さくみたら関西人、大きくみたらいろいろな国を旅する地球人だという想いがあって。

いろんな国の音楽が当たり前に自分の中に存在しているけれど、同時にやっぱり自分は日本人なんだ、と。その感覚を音楽で表現したのが、冒頭の曲『My Native Land Ⅱ』です。」

—『My Native Land Ⅱ』がこのアルバムの方向性を決めたとお聞きしました。

「東京にいると、いろんな国の文化や音楽が当たり前に混在している。こんなに世界中のものが簡単に手に入るところってないですよね。それがある意味、東京的でもあり、日本的でもあるミクスチャー文化。この曲は日本的な旋律を感じながらも、そんないろいろな国の音楽に影響受けたものが混じっていて、それが僕にとってやはり自然なことなんです。そして客観的に自分で聴いていても面白かったんです。」

—音楽における混血、ミックスの魅力とは?

「ひとつは、人や文化の交流です。いくら自然が好きでも、僕の場合人里離れてたった一人で、というのは違うと思っていて。自然があって、人もたくさんいて、それがつながっていて、ミックスされて。そういうのがいい。

あとは、ミックスされることによって新しい感覚が生まれて、みんなの考えがフラットになっていくこと。違いを尊重しながら掛け合わさって、どんどん前向きなものが生まれていく、そういう感覚がある。

奴隷のように悲しい歴史があってミックスされるのではなく、ネットなどでより広がった異文化交流を通じての前向きなミックス、というのがこれからの時代の感覚なのでは、と僕は勝手に思っているんですよね。」


—今回のアルバムにこめられたメッセージとは?

「自分自身が演奏のときも、聴いた方々も、少しでも瞑想的な体験になればと考えていました。実際の瞑想ってものすごく崇高な体験だし、そうそう簡単にたどりつけるものではないと思うんですが・・・でも音楽でそういった集中する感覚を得れるものであればと目指しています。

大自然の風景に出会ったときって、ものすごくいい演奏を聴いたときと同じような感覚を得るんです。でも、人間が作り出す瞑想感は自然とは違って、人間だからこそのものがある。涙の琴線が違うんですよね。心がふるえる場所が違う。人間の演奏がもたらす瞑想感って、心を鷲掴みにされるような感じがする。そういうものが目指すところです。」


—楽曲に直接影響を与えた国や都市はありますか?

「南米の中でも特にブラジルの音楽が好きです。ブラジルは1ヶ月くらい旅をしたこともあるので、強く影響を受けていると思います。後はここ最近、中東とか、北アフリカとか、いわゆるジプシーの旋律のある音楽も好きです。orange pekoeで去年リリースした『Oriental Jazz Mode』はそれがテーマ。実際に現地に行ったわけではなくても、その国で生まれた音楽、音から喚起されるものには常に影響を受けていますね。」

—ある風景から生まれた曲、というものはあるのでしょうか?

「視覚的なものは、僕の中であまり大きくないんです。ある風景を思い描いて曲を作るというよりも、旅で感じたことが心に溜まって、熟成して、曲になる、みたいな。

すごく不思議なんですが、どちらかというと心の動きに近いんですよね。言葉にできない気持ちが生まれて、『これって一体どういうことなんだろう』ってひもとくようにメロディとかハーモニーを考えるんです。それを聴いた人が、『こういう風景が見えた』とか言ってくれることはあるんですけど。」


—心の動きを言葉にせずそのまま音にしていくんですね。

「言葉ってある種限定的なので、単純にうれしいとか楽しいとか、そんなことでは表せないっていう気持ちがあるんだと思います。もちろん言葉にするのがうまい人は言葉で表現するし、絵にする人もいる。僕の場合は、旅の中で言葉にできないたくさんのことが心に刻まれて、それがまた言葉にできない感覚で音楽になります。」

—音楽と旅の共通点は感じますか?

「旅って、やっぱりリアリティ、体験だと思うんです。僕にとっての体験って視覚ではなくて、現地に降り立ったときに感じる空気とか、食べたもの、出会った人なんです。感じたことがすべて。その“感じる”っていうところが音楽と似ているように思います。」

—絶景写真を見て行った気分になる、というようなことはない?

「ないですね(笑)。例えば、ある絶景写真を100回見ていろいろなことを感じたとしても、実際行ってみて感じることって、全然違うと思うんです。それは人生の宝物みたいなもので。みんなそれぞれ感じ方は違うし、同じ風景を見て印象に残るものも違う。そして自分の心の中にひだみたいなものができていく。それが旅の醍醐味です。」

山口彩

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