揚げたてのエビセンが食べられる
駄菓子を扱う問屋が廃業し、売り物を仕入れる場所が絶たれると、その地域の駄菓子屋(小売店)は減少していきます。逆もまた然りで、駄菓子屋が減った地域の問屋は、卸す先がなくなるので商売が難しくなってしまいます。宮城県仙台市は、この因果関係がうまく保たれ、問屋と駄菓子屋が充実している地域。「山口商店」という問屋さんで複数のお店を紹介していただいたので、それぞれを訪ねてみることにしました。
仙台市の中心部から北東方面に車で15分ほど。宮城野区幸町にある「ちゃんぷるー」は、水色の生地に虹が描かれたかわいいテントが特徴的なお店でした。入口の扉を開けると、揚げ物屋さんの店先に似た、おいしそうな香りがします。店内は右側に駄菓子の棚、左側がイートインスペースで、奥がレジカウンターと調理場になっていました。とりわけ目を引いたのは、揚げ物を中心とした調理品。「揚げたてエビセン30円」「ハムカツ60円」など、付け間違いみたいな値段の数々に、つい欲張って、ほとんどのメニューを注文してしまいました。
「居酒屋で出してるようなやつだから、値段は安いけど子どもだましじゃないよ!」と店主が話してくれたとおり、どれもお惣菜としても十分なおいしさ。なにより「揚げたて」という、揚げ物における最高の付加価値もあります。カウンターで食券を購入し、できあがったら食券と品物を交換、という間違いが起こりにくい注文方法にも、子どもたちへの愛情やこだわりが感じられました。お店の特徴はこれだけにとどまらず、帽子や制服といった学用品を販売しており、なんと試着室まで備えてあります。試着室のある駄菓子屋は、全国的に見てもかなり稀なのではないでしょうか!?
沖縄商品の店から、学校指定用品まで扱う駄菓子屋に
ちゃんぷるーは、平成13年(2001年)に、沖縄の食品や雑貨を扱うお店として創業したそうです。後に、店名はそのままで駄菓子と揚げ物を扱う業態にしたため、沖縄的な響きのある名称だけが残ったとのこと。近隣の小学校と中学校の購買所が廃止になった際に、学校指定用品の販売を依頼され、試着室を設置し、現在の形になったそうです。
「駄菓子屋でもうけを出そうと思ったら大変だと思うんだけど、うちは学用品の販売があるからね。この地域は小学校が2つと中学校が1つあるんだけど、年度末の繁忙期なんかは駄菓子より、よっぽどそっちのほうが大変(笑)。けど、そういうののおかげで揚げ物を安く出せるから。必需品と嗜好品をもちつもたれつ、ちょうどいいバランスで売ってて、みんなにとって良い場所になれてるんじゃないかな」
駄菓子屋として学校と上手に関わっているどころか、学校側から頼りにされ、地域にとってなくてはならない存在となっているちゃんぷるー。この日は男女混合の小学生グループが揚げ物を食べてくつろぐ中、保護者と一緒に名札や駄菓子を買いに来た子がいたり、学校指定用品を求める中学生の姿もありました。さまざまなものを取り扱い、さまざまな人が集まる。「混ぜこぜになった」という意味の沖縄の方言「ちゃんぷるー」は、現在のお店の様子そのものを表していました。
住所:宮城県仙台市宮城野区幸町2-21-3
営業時間:平日14:00~18:00、土日祝11:30~18:00
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]