いながきの駄菓子屋探訪26宮城県仙台市「ちゃんぷるー」揚げ物と試着室のある駄菓子屋

Posted by: 駄菓子屋いながき 宮永篤史

掲載日: Dec 26th, 2020

全国約250軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は宮城県仙台市の「ちゃんぷるー」です。

いながきの駄菓子屋探訪26宮城県仙台市ちゃんぷるー

揚げたてのエビセンが食べられる

駄菓子を扱う問屋が廃業し、売り物を仕入れる場所が絶たれると、その地域の駄菓子屋(小売店)は減少していきます。逆もまた然りで、駄菓子屋が減った地域の問屋は、卸す先がなくなるので商売が難しくなってしまいます。宮城県仙台市は、この因果関係がうまく保たれ、問屋と駄菓子屋が充実している地域。「山口商店」という問屋さんで複数のお店を紹介していただいたので、それぞれを訪ねてみることにしました。
いながきの駄菓子屋探訪26宮城県仙台市ちゃんぷるー
仙台市の中心部から北東方面に車で15分ほど。宮城野区幸町にある「ちゃんぷるー」は、水色の生地に虹が描かれたかわいいテントが特徴的なお店でした。入口の扉を開けると、揚げ物屋さんの店先に似た、おいしそうな香りがします。店内は右側に駄菓子の棚、左側がイートインスペースで、奥がレジカウンターと調理場になっていました。とりわけ目を引いたのは、揚げ物を中心とした調理品。「揚げたてエビセン30円」「ハムカツ60円」など、付け間違いみたいな値段の数々に、つい欲張って、ほとんどのメニューを注文してしまいました。
いながきの駄菓子屋探訪26宮城県仙台市ちゃんぷるー
「居酒屋で出してるようなやつだから、値段は安いけど子どもだましじゃないよ!」と店主が話してくれたとおり、どれもお惣菜としても十分なおいしさ。なにより「揚げたて」という、揚げ物における最高の付加価値もあります。カウンターで食券を購入し、できあがったら食券と品物を交換、という間違いが起こりにくい注文方法にも、子どもたちへの愛情やこだわりが感じられました。お店の特徴はこれだけにとどまらず、帽子や制服といった学用品を販売しており、なんと試着室まで備えてあります。試着室のある駄菓子屋は、全国的に見てもかなり稀なのではないでしょうか!?

いながきの駄菓子屋探訪26宮城県仙台市ちゃんぷるー

沖縄商品の店から、学校指定用品まで扱う駄菓子屋に

いながきの駄菓子屋探訪26宮城県仙台市ちゃんぷるー
ちゃんぷるーは、平成13年(2001年)に、沖縄の食品や雑貨を扱うお店として創業したそうです。後に、店名はそのままで駄菓子と揚げ物を扱う業態にしたため、沖縄的な響きのある名称だけが残ったとのこと。近隣の小学校と中学校の購買所が廃止になった際に、学校指定用品の販売を依頼され、試着室を設置し、現在の形になったそうです。
いながきの駄菓子屋探訪26宮城県仙台市ちゃんぷるー
「駄菓子屋でもうけを出そうと思ったら大変だと思うんだけど、うちは学用品の販売があるからね。この地域は小学校が2つと中学校が1つあるんだけど、年度末の繁忙期なんかは駄菓子より、よっぽどそっちのほうが大変(笑)。けど、そういうののおかげで揚げ物を安く出せるから。必需品と嗜好品をもちつもたれつ、ちょうどいいバランスで売ってて、みんなにとって良い場所になれてるんじゃないかな」
いながきの駄菓子屋探訪26宮城県仙台市ちゃんぷるー
駄菓子屋として学校と上手に関わっているどころか、学校側から頼りにされ、地域にとってなくてはならない存在となっているちゃんぷるー。この日は男女混合の小学生グループが揚げ物を食べてくつろぐ中、保護者と一緒に名札や駄菓子を買いに来た子がいたり、学校指定用品を求める中学生の姿もありました。さまざまなものを取り扱い、さまざまな人が集まる。「混ぜこぜになった」という意味の沖縄の方言「ちゃんぷるー」は、現在のお店の様子そのものを表していました。
いながきの駄菓子屋探訪26宮城県仙台市ちゃんぷるー

ちゃんぷるー
住所:宮城県仙台市宮城野区幸町2-21-3
営業時間:平日14:00~18:00、土日祝11:30~18:00
定休日:不定休

[All photos by Atsushi Miyanaga]

PROFILE

駄菓子屋いながき 宮永篤史

Atsushi Miyanaga

駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。

駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。

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