店主が畑で育てた野菜を販売
千葉市の東側にある東金市。街の中心部から東へ行き、もうすぐ九十九里町になるというところに、駄菓子屋を見つけました。畑と住宅が混在し、郊外という表現がしっくりくる地区。看板のないお店なので、大きな病院と関連施設が立ち並ぶ周辺の中、自動販売機が目印になっています。
店内は、これまで訪ねた駄菓子屋の中でも最小サイズで、人が動ける場所は畳2畳分ほど。木製の棚と鉄製の棚がコの字型に置かれ、品数は少なめながらも、現代の小学生にとっての定番駄菓子が並んでいます。店主のいるカウンターの隣には椅子が置かれ、常連さんと談笑中。そこへ小学生が買い物に来たので満員状態となり、自分は一度退出することに(笑)。お店の外には店主が畑で育てた野菜を販売する場所があり、昔ながらの代金箱システムになっていました(販売価格以下のお金を入れて持っていくのは絶対にやめましょう!)。
薬局から駄菓子屋へ
齊藤商店は、元々は昭和35年(1960年)に創業した薬局だったそうです。地域に1軒だけあった駄菓子屋がなくなってしまった昭和47年(1972年)、行き場をなくした子どもたちのことを思い、「それならうちで駄菓子屋をやろう」と店舗を改装。駄菓子屋兼文房具店となり、現在は駄菓子とタバコを扱っているとのこと。近隣にある正気小学校は元々中学校として使われており、中学校が移転したあとに小学校として使われるようになった特殊な経緯があるそう。なので、中学校だった頃は中学生が、小学校になってからは小学生がメインのお客さんだそうです。
「店と畑が人生の楽しみ」
「自分で店のことを振り返ることなんてないから、あなたと話をしてたら、いつのまにかずいぶん長いこと商売やってたんだなと気付きました(笑)。子どもたちの相手をするのが楽しいから、ずっと続けてます。計算しやすいだろうと思って消費税も取ってないから、まあ儲けはないですね。駄菓子屋を続けてるのは、趣味に近いかもしれないね。うちの地域は、配達してくれる問屋さんがあるから成り立っていると思います。もう80歳だし、自転車でたくさん仕入れに行くのも難しいでしょう?そこ(問屋)がなくなったら、もう仕入れができないから、うちも閉めるしかない。昔は花火も菓子も問屋がたくさんあったから、ちょっと寂しいね。店と畑が人生の楽しみだから、そういう日が来ないことを願ってます」
「野菜売り場に書いてあった、高菜の漬物が欲しいんですが」と尋ねると、この日は完売してしまったとのこと。すると、居合わせた常連さんが「私はいつでも買えるから、あなたが持っていきなさい」と、購入済みのものを譲ってくださいました。お店の前は通学路になっており、下校中の小学生はみんな店主に、そして宮永にも「こんにちは!」と声をかけていきます。新聞配達中に立ち寄ったお客さんも、向かいに住んでいるという店主の親戚も、みんなフレンドリー。齊藤商店は、「人と人との間にまったく壁がないのがこの街なのかな」と感じさせてくれた、小さな小さな駄菓子屋でした。
住所:千葉県東金市家徳36
営業時間:7:00~9:00 畑仕事を挟んで 12:00~18:00(夏季は19:00)
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]