
昭和後期の個人商店といった趣

宮城県塩竈市の高台にある住宅街。たまたま話し込んだ小学生のグループに「この近所に駄菓子屋ってある?」と尋ねたところ、行きつけだというお店へ案内してくれました。そこへの道のりは、自転車では登れなさそうな長い急坂。子どもたちは、勾配のない道で勢いをつけてから斜面にアタックしていきます。みんな途中で力尽き、自転車を降りて歩き出していましたが、この一連の流れが地域の日常風景なのでしょうか。自然と脚力が鍛えられそうです。

案内してもらったお店は、昭和後期の個人商店といった趣の外観。店内は中央の棚が低いので見通しが良く、広く感じます。入り口を背にすると右側が駄菓子、左側がその他の食料品と飲料の売り場なのですが、飲み物を選んでいてふと後ろを向くと、衝撃的なものが陳列されていました。

駄菓子屋で売っていたものとは・・・?

ウーパールーパーです。それも大量に。おもちゃではなくすべて本物で、1ケースに1匹、愛嬌を振りまきつつ収まっています。よく見れば、お酒売り場の下にもウーパールーパーがいる棚があり、店外にはウーパールーパーを販売している旨の張り紙が。子どもたちに案内されるままに入店したので、それにまったく気が付かず、これまでの駄菓子屋探訪の中でも最大級の衝撃を受けました!!

勝商店はお酒やタバコも取り扱う食料品店で、昭和35年(1960年)ごろに創業したそうです。現在は代替わりし、この日応対してくださったのは、創業者の孫である勝真一さん。商店部門は基本的には真一さんのお母さんが担当し、真一さんはウーパールーパーを含む淡水魚の養殖・販売をしながら、商店部門のサポートもしているとのこと。

「地域社会にどう寄与できるか」

「時代とともに客層が変わったので、それに合わせてお店に置くものも変わっていきました。昔は近くの高校に購買部がなかったんですよ。なので、そのときは高校生に必要な物をそろえていました。購買部ができてからは近所に住んでいる人たちの来店が増えたので、それに合わせ、小学生が多くなってきてからは駄菓子の取り扱いが増えました。ウーパールーパーは客層に合わせたんじゃなくて、置いとく場所がなかったから並べただけなんだけど、まさかそこが面白がられるとは(笑)。今は周辺はお年寄りが多くなったし、駄菓子も問屋が減ってしまって、商売としていろいろ検討しなくちゃいけない部分がまた出てきている。これからも『地域社会にどう寄与できるか』を考えながら店を続けていきます」

「ウーパールーパーを売っている駄菓子屋」。あまりのインパクトの強さに、過去には珍スポットを紹介する全国放送のテレビ番組でも取り上げられたとのこと。それ以来イロモノ的に見られてしまって困ることもあるそうなのですが、地域のために真面目にご商売をされているというのが、お話を伺っての印象です。近くには幼稚園、小学校、高校がある勝商店。ここでは、子どもたちの淡水魚への好奇心も育まれているかもしれません。

[All photos by Atsushi Miyanaga]

Atsushi Miyanaga
駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。
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