爽やかなカフェっぽい外観
仙台城があった青葉山公園から北東に5kmほど。徳川家康を祭る仙台東照宮の近くに、駄菓子屋があるという情報があったので訪ねてみることにしました。北東といえば、鬼門。「もしかしたら、伊達家は家康にこの街を守ってもらいたかったのかな?」など歴史を感じつつ、東照宮という名前がそのまま地名になっている地区へ向かいます。
店先に「だがし」と書かれたノボリが立っているものの、水色の壁に白いドア枠が爽やかな、カフェっぽい外観のお店。「もしただのカフェだったら、コーヒーを飲んで帰ろう」など、いろんなことを考えたのですが、店内に入ると、ちゃんと駄菓子も販売されていて安心しました(笑)。入って左側の棚がすべて駄菓子売り場で、飲み物や駄玩具もある充実した品ぞろえ。コーヒーや軽食を出すカフェでもあり、駄菓子屋でもある、異業種兼業スタイルの店舗でした。
障害者就労支援の事業所として運営
はぴcafeは、障害者支援を主業とする「一般社団法人はぴかむ」が2018年に開業したお店で、この日応対してくださったのは責任者の村上さん。元々この場所には「駄菓子屋くまちゃん」という専業の駄菓子屋があったそうです(店先にあったノボリにその名残りがありました)。ある時、閉店を決意したくまちゃんの店主が、付き合いのあった村上さんに「店を引き継いでもらえないか」と打診してきたとのこと。「このまま駄菓子屋がなくなってしまうのは惜しい」と思った村上さんが会社にその旨を相談すると、「障害者の就労支援を組み込んだ事業にしよう」という話に発展し、引き継ぎが決定。駄菓子だけでは収益的に難しいのではないか、という意見からカフェと組み合わせることになり、現在の形になったそうです。
「ここは『就労継続支援B型事業所』として運営しています。障害を持った方に調理の補助や接客などの仕事を経験してもらって、今後の就労に役立ててもらうというものです。物を作る作業と違って接客がメインになるので、コミュニケーション面などで我々のサポートが必要な状況になってしまうこともあるんですが、幸いにもお客様も許容してくださいますし、本人たちもここで働くことを楽しんでくれています。保護者の方たちも喜んでくださっているみたいで、お客様としてよく来店してくれています(笑)。駄菓子屋くまちゃんを引き継いだことで、くまちゃんに通っていた子どもたちの居場所を守ることができましたし、駄菓子があることで、カフェ単体で運営するよりも接客や会計の機会が増え、みんなの訓練にもなります。さまざまな要素が良い循環をしているという手応えがありますので、長く事業を続けられるように、これからもがんばります」
駄菓子屋サイドの目線で見ると、まったくの他人が駄菓子屋を引き継ぐこともかなり珍しいですが、それを障害者福祉と組み合わせることでさらに発展させたのは、「発明品を作り出した」に近い印象です。駄菓子屋文化が未来に残っていくためのひとつの形を示してくれたはぴcafe。ついつい手法のことばかりに注目してしまいましたが、手作りお菓子もコーヒーも、もちろん駄菓子もなんでもおいしい、居心地の良いお店でした!
住所:宮城県仙台市青葉区東照宮1-7-32
営業時間:11:00~17:00
定休日:日・月・祝日
[All photos by Atsushi Miyanaga]