レトロで不思議な名前のお店
小倉駅のあたりから、国道199号線を車で15分ほど西へ進むと、赤い大きな吊り橋「若戸大橋」を渡って若松区に入ります。この周辺は、筑豊炭田で取れた石炭を運搬する港として栄えた街だそうで、当時の資料を集めた博物館的な施設が複数ありました。街の散策をしつつインターネットの地図で駄菓子屋を探していると、3kmほど離れた場所に不思議な名前のお店を発見。気になったので早速訪ねてみることにしました。
店名やイラストが壁に直接描かれている、レトロな外観の「菊地ガンモ店」。色の褪せ方にも趣があります。店内は棚で売り場が3つに仕切られており、それぞれおもちゃ・文房具・駄菓子が置かれていました。中でも文房具コーナーは、いつからか時間が止まったままになっているような独特の雰囲気。「昔の在庫品をほったらかしてるだけ」とのことでしたが、お店の歴史が垣間見える、特別な場所に感じました。
菊地ガンモ店は昭和35年(1960年)ごろに、在宅でできる仕事をしようと自宅を改装し、創業したそうです。特徴のある店名は玩具の「ガン」と模型の「モ」を合わせた造語で、最初はその名の通り、おもちゃや模型を扱うお店としてスタートしたとのこと。その後、量販店が出てきたこともあって、ガンモの取り扱いを減らし、徐々に文房具や駄菓子を中心とした品ぞろえに変更。現在は駄菓子屋として、小学生からお年寄りまで、幅広い年齢層に利用されているそうです。
「もうからないけど、ボケ防止のために続けてます」
「最初はもっと狭い店だったんですけど、順調に商売が大きくなって売り場が広くなっていきました。もうおもちゃはほとんど置いてないんだけど、ガンダムやミニ四駆、ファミコンがよく売れたなあと思い返すことはありますね。文房具ももう仕入れてないので、今は基本的には駄菓子だけです。駄菓子はもうからないけど、ボケ防止のために続けてます(笑)。朝から開けたってもちろん子どもたちは来ないんだけど、開けることで規則正しい生活が続けられるし、お客さんが来れば話もするし、買う物の計算もする。歳をとったからって、じっとしててもしょうがない。頭の体操にちょうどいいでしょう?ちょっと前までそろばんで計算してたんだけど、消費税があるし税率もコロコロ変わるから、間違っちゃ悪いので最近は電卓を使ってます(笑)」
主婦業のついでではなく、生活をしていくための事業として店を始めた、と語ってくださった店主。今でも毎日開け続けているのは、ご自身の生活リズムのためでもあり、そしてきっと、経営者として頑張ってきた誇りも関係しているんだと思います。昔の文房具を求めて、遠方からお客さんが来ることもあるという菊地ガンモ店。昭和の雰囲気をそのまま現在に持ち越した、港町にある昔ながらの駄菓子屋でした。
住所:福岡県北九州市若松区宮丸1-8-1
営業時間:7:30~18:00
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]