いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区「やました商店」おでんと鉄板焼きもある二代目の店

Posted by: 駄菓子屋いながき 宮永篤史

掲載日: Mar 27th, 2021

全国約250軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は静岡県静岡市葵区「やました商店」です。

いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店

おでんと鉄板焼きもある駄菓子屋

いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店
静岡市の昔ながらの駄菓子屋の特徴といえば、おでんが置いてあること。以前訪ねた「かどや滝波商店」に続いて、同じ葵区内にある、おでんのある駄菓子屋へ行ってみることにしました。駿府城の西側、一番町の住吉公園のそばにある「やました商店」は、看板や自動販売機がなく、目印は営業中と書かれたのぼりだけ。事前におおよその場所を聞いていても、車移動だとうっかり通り過ぎてしまいそうな外観です。
いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店
お店は入口が2カ所あり、向かって右側の扉から入ると鉄板焼きの調理場とカウンター、左側から入ると駄菓子売り場になっていました。アイスケースの中身は、静岡市周辺でしか流通していない飯塚製菓のものが中心。店内中央にはおでんの鍋があり、真っ黒の汁の中で具材が煮えています。早速おでんを取り、焼きそばを注文すると、常連さんや子どもたちがやってきて、店主はとても忙しそう。この場所のいつもの風景なのかもしれませんが、皆が訛りのある言葉で会話する中、静岡おでんとご当地アイスをいただくのは、旅人にはかなり贅沢な時間でした!
いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店

鉄板焼きメニューを導入して万引きがなくなった

いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店
やました商店は、店主・山下さんのお母さんが昭和45年(1970年)ごろに創業。駄菓子屋を営んでいた人から引き継いだのが始まりだったそうで、その時点ですでにおでんも販売していたとのこと。現在の形になったのは平成22年(2010年)ごろ。万引き被害が続出し、ショックを受けて廃業しようとした先代店主に、「せっかく長い間やってきたんだし、自分も手伝うからもうちょっとやってみようよ」と山下さんが提案。内装や什器の配置を変え、焼きそばやたこ焼きなどの鉄板焼きメニューを導入して2人で店に立つようになると、特に問題も起こらなくなったそうです。
いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店
「日本中どこでもそうだと思うんだけど、『悪さするやつが多い学年』というのがあるんですよ(笑)。母親も、ちょうど衰えてきたころにそういう連中に当たっちゃって。ここは自分にとっても、もちろん母親にとっても大切な場所だから、そんなことで失くしたくないと思って引き継ぎました。今はもう平和そのものです!」
いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店

子どもの数が減っても駄菓子屋のお客さんは増えている

いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店
「公園を挟んだ向かいにある『番町市民活動センター』は、元々は私の通ってた小学校だったんですよ。子どもの数が減って学校の統廃合が起きたりして、環境はどんどん変わっていくんですけど、近所に駄菓子屋がぜんぜんないから、子どものお客さんは逆に増えてる感じがします。みんなのためにも、元気に続けていきたいですね」
いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店
店内の壁には、昨年(2020年)98歳で亡くなられたという先代店主の写真が飾られています。その顔立ちは、山下さんにそっくり。「お母さんとすごく似てますね」と言うと、「それ、いろんな人によく言われます」と照れくさそうに返してくれました。静岡の伝統的な駄菓子屋文化を持つやました商店。ここまでの道のりに、そして、お2人の顔立ちに、親子の絆を強く感じたお店でした。
いながきの駄菓子屋探訪38静岡県静岡市葵区やました商店

やました商店
住所:静岡県静岡市葵区一番町32
営業時間:11:00~17:00
定休日:不定休

[All photos by Atsushi Miyanaga]

PROFILE

駄菓子屋いながき 宮永篤史

Atsushi Miyanaga

駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。

駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。

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