2年連続ミシュラン“ビブグルマン”に選ばれてます
天母は外国人も多く住む高級住宅地。新しく整備された街並みに日系のデパートもあって、上品ながら活気がある街です。だんだん日が暮れてきた頃、お店を探して歩いていると、なんだかお祭りみたいな一角がありました。提灯に「女娘的店」と書かれています。ここがお目当ての一戸建てレストラン。木造の2階建てで、店名は「お母さんの店」と訳せるようです。
門をくぐって敷地にを入ると、右側には小さな小屋のような建物があります。昔の駄菓子屋さんが復元されていました。ここだけでなく、お店全体が台湾の1950年代頃のイメージを再現しているんです。
このお店、2019年、2020年と2年続けてミシュランの“ビブグルマン”に選ばれています。ビブグルマンは3000円程度でおいしくいただけるお店のジャンルです。
インテリアの懐かしさがしっくりくる
店内は、どこもかしこも台湾の農村の雰囲気で飾られています。古いタイプの家具や電化製品も並んでいて、日本人の筆者でも、なんだか懐かしく感じられてきます。
レトロなラジオに黒電話。蒸籠(せいろ)に電球むき出しのライト、シンプルな花の絵画が壁を飾り、その真ん中の黒板にはおすすめ料理のメニューが書かれています。それに、テーブルには中国語・英語・日本語のレギュラーメニューがあるので安心です。
2階のフロアに案内されました。くるくる回る台が乗っている中華料理店の定番のラウンドテーブルが並びます。ですが、どれも家族で座る程度の大きさだし、レトロなカラーなので、なんだかかわいいんです。
台湾ビールと前菜2品!A菜って?
さて、まずは台湾ビールを。すっきりした飲み口です。案内されたテーブルは今ではめったに見ないタイプのミシン台を再利用したもの。ほっこりしてきました。
台湾で食べる青菜の炒め物なら空心菜を好む人も多いかと思います。現地なら「A菜」もおすすめです。「B菜もあるの?」と聞いてみると、そんなことはないそうで、畑で育つ姿がアルファベットの「A」に見えることから、この名前になったそう。くせがなくってシャキッとした食感が楽しい一品です。80台湾元(約300円)です。
こちらはえびとたまごの炒め物。たまごは今まで食べたことがないほど、ふわっふわで海老がぷりぷり。口の中に幸せが広がります。うっすらとした塩味ベースで、とってもシンプル。いくらでも食べられそうです。260台湾元(約960円)。
いずれも素材の味がよくわかる控えめの味付けでまろやか。それぞれ食感も楽しめて、ビールも進みます。
土鍋で牛肉、蒸した白身魚で幸せ全開に!
これが、牛肉と野菜を土鍋で蒸し焼きにしたもの。醤油ベースのちょっと甘めのソースはやっぱり控えめの塩味で、素材それぞれが持つおいしさが楽しめます。
オン・ザ・ライスにすれば、ご飯にソースがちょっと浸みてよく合います。入っている野菜の種類も多くバランスがいい。320台湾元(約1,200円)でした。
そして、さらに調子に乗っていただいたのが、すずきの葱油かけです。ふんわりと蒸したすずきは上品な味で、そこにねぎ油がかけられて、旨味を強調してくれます。こちらも、さらにうっすらとしたシンプルな味付け。幸せ全開になりました。420台湾元(約1,680円)。
台湾家庭料理のおいしさを満喫できてうれしい
すっかり食べつくして、2階から1階へと降りていくと、下ももう人でいっぱい。地元の人が多いようで、家族連れや友達どうしで、ワイワイと盛り上がっています。
こってり目の北京料理や、辛みが強い四川料理、材料と調理法のバランスが豪華な広州料理と比べると、台湾の料理は素材のおいしさをシンプルに味わえるという特徴があります。使う油の量も少なくて、とっても食べやすい。優しくてほっこりさせられる料理ばかりでした。
[All photos by Atsushi Ishiguro]
Atsushi Ishiguro ライター&フォトグラファー
旅するフードフォトグラファーです。そして、食生活について考えて、レシピを開発して料理もします。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現し、みなさんと一緒に食べたいというのが、私のビジョンです。
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