
江戸時代からある町屋で営業

日本橋から京都までの東海道に置かれた53の宿場町、東海道五十三次。その47番目にあたる関宿で、江戸時代からある町屋で営業している駄菓子屋を見つけたので訪ねてみました。現在、日本最古の駄菓子屋といわれているのは、東京の池袋に1700年代からある「上川口屋」。関に宿場が置かれたのは1600年代ということなので、これは駄菓子屋史が変わる大発見なのでは?と期待が高まります。

宿場町だった時代からの建物が立ち並び、重要伝統的建造物群保存地区となっている亀山市関町の東海道沿い。歴史を感じずにはいられない美しい景観は、参勤交代やお伊勢参りでにぎわっていた当時の雰囲気のまま維持されているそうです。

東西に伸びる保存地区のちょうど中央に「小平屋(おびらや)」がありました。店内は、濃い色の木材と漆喰の壁でできた和の空間。土間が売り場になっていて、壁際の棚と島型の棚にたくさんの駄菓子が並んでいます。棚はそれぞれ背が低く、子どもたちが買い物しやすい形になっていました。

宿屋から形を変えて駄菓子屋に

小平屋は、身分の高くない人でも気軽に泊まれる宿屋として、江戸時代からここにあったそうです。宿屋のあとは着物屋になり、化粧道具屋になりと、時代とともに商売を変えていったとのこと。結婚して実家を出ていた店主が、両親の身の回りの世話をするために戻ってきたのは昭和55年(1980年)ごろ。その時点では、釣り道具やおもちゃを販売していたそうです。

お店を引き継いだ平成2年(1990年)以降も玩具店として運営していたところ、おもちゃを仕入れていた問屋が菓子問屋に業態転換。それに伴って駄菓子屋になったそうです。奥の居住スペースには着物屋時代の箪笥や提灯が残っており、売り場の真上は宿屋時代、薪置場だったとのこと。日本最古の駄菓子屋というわけではありませんでしたが、たくさんの物語を経て現在に残る、歴史あるお店でした。

商売って、やってみないとわからない

「ここに住む子どもたちにとっては普通の駄菓子屋で、観光で来た方はこの雰囲気を懐かしんだり貴重に思ってくれる、そんな店です。問屋さんがおもちゃから菓子卸になったときに、店を閉めようかなんて話をしたこともあったんですよ。けど問屋さんに『なんとかお願いします』と頼まれたので、とりあえず駄菓子屋にしてみたら、これがけっこう流行って(笑)。商売って、やってみないとわからないものですね。私はもうすぐ90歳になっちゃうので、そんなに長くは続けられないと思っていますが、愛知に住んでいる娘が土日だけでも開けようかと言ってくれているので、小平屋は今後もきっと続いていきますよ」

ひな祭りに祇園夏まつり、11月には街道まつりがあるなど、イベントも盛んだという関宿。小平屋もひな祭りの時期には、明治期から伝わる紙のひな人形を飾るんだそうです。訪ねて来た者を受け入れるどころか、生活スペースや物置までをも見せながら歴史を伝えてくださった店主。何百年も前からさまざまな人が出入りする宿場町の、遺伝子に刻まれたおもてなし精神のようなものを感じたお店でした。

小平屋(おびらや)
住所:三重県亀山市関町中町398
営業時間:10:00~17:00
定休日:不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]

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Atsushi Miyanaga
駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。
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